「嫌われて当然と思って…」 北海道日本ハム栗山監督、選手と接した10年間の厳しさと愛情

Full-Count 石川加奈子

2021.11.2(火) 16:20

会見を行った北海道日本ハム・栗山英樹監督※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)
会見を行った北海道日本ハム・栗山英樹監督※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)

「給料が上がって、なかなか言いづらい人たちに文句を言うのは僕の責任」

 北海道日本ハムの栗山英樹監督が1日、札幌ドームで退任会見を行った。球団最長の10年間指揮を執り、日本シリーズ制覇と2度のリーグ優勝に導いた名将は「選手たちのことをよろしくお願いします」と何度も頭を下げた。ユニホームを脱いだ後も「文句を言うのは僕の責任」と選手を叱咤激励し続ける。

 選手とはマネジャーを通して連絡することが多かったが、退任にあたり、中心選手とLINEでつなげてもらったという。「メッセージ、めっちゃ入れました。“ずっと文句言い続けるからな”って。だんだん試合に出て、給料が上がって、なかなか言いづらい人たちに文句を言うのは僕の責任。そのことだけは、どこにいようと、自分の使命としてやり続けます」とニヤリと笑った。

 これまでも期待している選手ほど厳しい態度を取ってきた。エンゼルスの大谷翔平投手が北海道日本ハム在籍時には、活躍を問われると、頬を緩めることはあっても、褒めることはしない“ツンデレ”対応が定番だった。選手の潜在能力を信じているからこそ「まだまだこんなもんじゃない」とハッパをかけ続けてきた。

 選手との対応で最も意識したのは「とにかく片想いを続けること」だと言う。「相手がどう思うかは一切関係ない。人は本能として嫌われる怖さを持っていると思うんですけど、嫌われて当然と思ってやったつもり」と選手のために心を鬼にすることもあった。

 今季は3年連続Bクラスに終わり、来季は札幌ドーム最終年を迎え、2023年には北広島市に新球場「エスコンフィールド北海道」のオープンが控えている。「本当に大事な時期」と認識しているからこそ、今の選手たちにはしっかりと自覚を持ってほしいと願っている。

杉谷の乱入に「頼むよ! 後輩たちを!」

 北海道に移転した2004年からの歴史を振り返り「本物のプロフェッショナルでなければ、長い間応援してもらえないんだということを選手たちは分かったと思う。喜んでもらえるような勝利だったり、姿だったり。そういったものがなければダメだというのは今の状況を見て、本当に分かっているはずなんだよね」と語る。

「満員の球場で野球をやることがどれだけ力にるかということも分かっているはず。そのためには、今いる選手たち、中心になっていく選手たちが、その責任を果たさなければいけない。そのことはしっかり伝えたつもりだし、ずっと言い続ける」と栗山監督は力を込めた。

 40分間の会見を終えて球団職員から花束を受けると「ちょっと待った! 監督! 元気出してくださいよ!」と杉谷拳士内野手のサプライズ乱入があった。会見の中で就任2年目に9連敗した時、エレベーターで一緒になった杉谷から「監督、元気出してくださいよ」と気を遣われたことを思い出の一つに挙げていた栗山監督は、思わず相好を崩した。

 ここから即席の掛け合いがスタート。「今度から栗山さんって言えばいいですか?」と杉谷が言えば、栗山監督は「クリは止めた方がいいな。ムッとするから」と返す。「花束を見ると拳士を思い出す。(試合前の花束贈呈を受けるのは)9割方、拳士だった」と栗山監督が言えば、杉谷は「(出場)試合数より、花束の回数の方が……」とボケてみせた。花束と感謝の言葉を贈る杉谷に「頼むよ! 後輩たちを!」と思いを託し、監督しての最後の仕事を終えた。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

記事提供:Full-Count

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