シーズン後半はリリーフとしてプルペンを支える
1974年以来の勝率1位でのリーグ優勝へ突き進んでいる千葉ロッテ。今季の飛躍は、救援陣の活躍なしに語れない。大卒3年目の中村稔弥投手も、ブルペンを支える1人だ。今季は先発のほか、ロングリリーフもこなす。
「先発、中継ぎにはこだわりはないです。1軍で投げさせてもらうことが自分の中でプラスになると思います」
まだまだ成長途上の左腕は、プロの世界で活躍する先輩たちから技術を吸収する日々だ。「成功している人に聞きに行くというのは大事にしています」。チームを支える頼もしい先輩たちに、積極的に教えを乞うた。
決め球は一塁側に沈んでいくツーシームだが、左打者にも有効なボールがほしいと、五輪でのシーズン中断中にはフランク・ハーマン投手にナックルカーブの投げ方を聞きにいった。
習得にはさほど苦労しなかった。「元々カーブは投げていたので、感覚は意外と似ていました。それをより具体的に、動画を見せてもらったりしてイメージを掴んだという感じです」。後輩からの問いかけに、ハーバード大卒で、“先生”の愛称で親しまれる右腕は、快く答えてくれた。「これまで三振を取れていなかった人からも三振を奪えるようになりました」。後半戦で早速投げ始め、手応えをのぞかせる。
今季セットアッパーとして大車輪の活躍を見せる佐々木千隼投手からは、リリースの感覚を学んだ。「フォームの中で、力みをなくして、リリースでしっかりと100%の力を出すというのを千隼さんに教わりました」。シーズン中にも、さまざまな知識を吸収。恐れることなく試し、成長に繋げていく。
「落ち込むことはありました」 昨季は11試合に登板も、プロのレベルを実感
長崎・清峰高では1年からベンチ入りし、3年夏の県大会で大会タイ記録の1試合18奪三振を記録。上の舞台でプレーすることを目標に亜細亜大に進学し、戦国東都で最優秀防御率などのタイトルも獲得。そこで身につけた“亜大ツーシーム”は大きな武器となった。
2年時には侍ジャパン大学代表候補の選考合宿にも招集された。同い年の伊藤将司(現阪神)とは同じ部屋だった。「真っすぐのキレ、球速は同じくらいだったんですけど、真っすぐで空振りが取れて凄いなと思いました」。その他にも柳裕也(現中日)、浜口遥大(現横浜DeNA)、栗林良吏(現広島)ら20人の投手の内、15人が後にNPB入りするという豪華メンバーに囲まれ、自然とプロへの意識が高まった。
2018年ドラフト5位で入団。2年目の昨季は一時先発ローテにも加わったが、2勝2敗、防御率4.78に終わった。「5回持たずに降板とかたくさんしてしまったので、挫折までとはいかないですけど、落ち込むことはありました」。プロのレベルを身に染みて感じた1年を過ごし、オフにはシーズン終盤まで投げ抜くための体力強化やウエートトレーニングにも取り組んだ。
今季はリードされている場面での登板が多いが、地道にアピールを続ける。「納得いくというまではいかないんですけど、昨シーズンに比べて、防御率は低く投げられているので、そこはいいかなと思います」。投げるたびに反省を繰り返し、浮かび上がった課題に取り組む日々だ。
リリーフとしては、もちろん勝ちパターンでのを登板を目指す。「自分が投げた試合はしっかりと抑えて、逆転を呼び込めるようなピッチングをしていきたいなと思います」。15日に出場選手登録を抹消されたが、千葉ロッテは優勝争いの真っ只中。昨年はCSで投げられなかった悔しさもある。次の出番がやってきた時は、チームにとっても自分にとっても重要な場面となるのは間違いない。奮起を誓い、最後まで腕を振っていく。
○中村稔弥(なかむら・としや)1996年7月8日生まれ、長崎県佐世保市出身。25歳。清峰高から亜細亜大に進学し、2年春には最優秀投手とベストナインに選ばれる。4年秋には最優秀防御率を獲得し、2度目のベストナインを受賞。大学の同級生に頓宮裕真(オリックス)、正隨優弥(広島)がいる。2018年のドラフト会議で千葉ロッテから5位指名を受け入団。178センチ、84キロ。左投げ左打ち。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)
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