同点で迎えた8回に左翼の頭を越す勝ち越し2点適時二塁打を放った松田
■福岡ソフトバンク 4ー2 千葉ロッテ(22日・PayPayドーム)
福岡ソフトバンクは22日、本拠地PayPayドームでの千葉ロッテ戦に4対2で勝利した。同点で迎えた8回に代打の松田が勝ち越しの2点適時二塁打を放ち、これが決勝打に。連敗を2で止め、首位オリックスとの差を再び4.5ゲームに縮めた。
ベテランのバットが試合を決めた。同点で迎えた8回。先頭のデスパイネが四球で出塁すると、ベンチはすかさず前日、走塁ミスを犯していた周東を代走で起用。盗塁を決めて二塁へ進み、勝ち越しのチャンスを作った。中村晃が右飛、今宮が遊飛に倒れ、代打・長谷川は申告敬遠。2死一、二塁となり、甲斐のところで、松田が代打に起用された。
ハーマンが投じた初球、外角へのカットボールを捉えた打球は左翼の頭上を越える一打に。2人の走者が生還、松田も二塁に達し、勝ち越しの2点適時二塁打となった。「自分の打球を前に飛ばそうと思った。いい打球を打てて良かった」。チームを勝利に導く決勝打に、38歳のベテランが安堵の表情を浮かべた。
「ユニホームを着ている以上、悔しいし、試合に出続けたいと思うのがプロ野球選手」
苦しい戦いの末の1勝となった。前日は5点差をひっくり返されての逆転負け。この日も波に乗れない展開が続いた。初回1死一、三塁で栗原が併殺。3回1死一、三塁では川島、柳田が相次いで凡退した。4回に栗原がソロを放ったものの、その後の満塁機は得点ならず。5回も無死一、三塁から柳田の犠飛による1点止まり。再三チャンスを作ったものの、リードするまでには至らず。グラウンド上に漂っていた閉塞感を打ち破ったのが、松田のバットだった。
この試合前までの成績は287打数67安打の打率.233、11本塁打34打点と苦しんできていた松田。後半戦に入ると栗原が三塁を守り、スタメンから外れることも増えてきている。長年、チームを支えてきた主力だけに、ベンチを温める試合での悔しさは想像に難くない。それでも、ベンチの前面に出て声を出し、若手に声をかける。代わって三塁を守る栗原には助言を送る。その姿勢は試合に出ていようと、いなかろうと変わらない。
「ユニホームを着ている以上、悔しいし、試合に出続けたいと思うのがプロ野球選手だし人間。ただ、前半戦じゃなく、後半戦なので、チームの勝ちが1番上にくる。そういう中で与えられたところ、打席で自分の打球を飛ばしていったらいいかな、と」
松田の一打にベンチは大盛り上がり、ドームに響き渡る絶叫「やったよー!!」
悔しさは胸にしまい込み、チームのためにできることをやる。練習では常に全力。やるべきことを変わらずにやり、準備を怠らない。「練習はしっかりやって、試合10分前のルーティンも出る時も、出ない時もやって、そのあとは出番に備える感じでやっている。与えられたところでやるだけなので、それ以外に何も変わりない」。
試合になれば、全力で声を出してベンチの雰囲気を作る。「それがなくなったら僕、終わりなんでね。スタメンじゃない時も、スタメンの時も、毒舌というか、若手には真似できないことばっかり言いますけど、それは16年やってきた中で経験したことなので。チームにとってプラスになることかなと思いますし、同じ方向を向く中での声というのは大事かなと思っています」。簡単そうに見えて、誰もができることではない。
松田の一打が飛び出すと、ベンチの前に仲間たちが飛び出して歓喜した。回が終わりベンチへ戻ると、松田はドーム中に響く声で「やったよー!!」と絶叫。それをまた仲間たちがハイタッチで出迎えていた。「みんなで勝っているんだなと改めて感じましたし、これだけ盛り上がって良かった」と振り返った光景に、風当たりが強くとも、チームが松田宣浩を必要とする理由が表れていた。
連敗を2で止め、チームの嫌な雰囲気を振り払った松田の一振り。「今日勝つか負けるかで、内容が全然変わってくる試合だったと思う。一昨日、昨日と負けていましたので、なんとかという感じ。まだ諦めている人はいないんで」。試合に出ていようとも、出ていなくとも、この男はチームの先頭に立ち引っ張っていく。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)
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