埼玉西武で8年プレーした“163センチ”水口大地さん、長打に求めた生きる道
身長163センチと小柄ながら埼玉西武で8年間プレーし、2020年を最後に現役引退した水口大地さん。独立リーグからNPBの世界に。小さな身体でどうすれば安打を増やすことができるか、試行錯誤を続けてきた。【篠崎有理枝】
小学生の時から野球をやっていたが、中学校卒業時の身長は143センチ。そのため、子どものころからプロの舞台で活躍する選手の身長に注目していた。
「ずっと気にして見ているので、大体の選手の身長はわかります。子どもの時に好きだったのは、巨人にいた仁志(敏久)さん。小柄なのにすごいなと思っていました。でも、選手名鑑を見たら171センチあるんです。ショックを受けました」
長崎の大村工高から2008年に独立リーグの長崎セインツに入団したが、チームの経営難によりに2011年に香川オリーブガイナーズに移籍した。2012年にはレギュラーに定着し、シーズン37盗塁を記録して最多盗塁のタイトルを獲得。その年のドラフト会議で埼玉西武から育成1位指名された。念願のNPB入りを果たし、俊足を生かしたプレーが期待されたが、意外にも意識していたのは長打を打つことだった。
「小さいから打球が飛ばないと思われていて、外野手が前に来る。それでヒットになる打球も捕られてしまいました。今はデータ野球の時代。ヒットを1本打っておけば、外野手が下がってくれる。そうすると、外野手の前に落ちるヒットが増えるんです。『体形に合っていない』と何度も言われましたが『違うんじゃないかな』と思っていました。ヒットを打つために飛距離を伸ばすことも必要だと考えていました」
「身長はあった方がいい」が「自分の努力不足だったかな…」
1年目はイースタン・リーグで本塁打0本、23安打にとどまった。しかし、オフに飛距離を意識してトレーニングに力を入れたところ、2年目の7月に本塁打が生まれ、安打は53本に伸びた。長打が出たことで、ヒットゾーンが広がったと感じた。
それから、飛距離を伸ばすためにトレーニングだけは誰にも負けないように取り組んできた。3年目の2015年7月に支配下登録を勝ち取り、2016年には開幕を1軍で迎えたが、2018年、2019年は2年連続無安打に終わった。そして、2020年に戦力外通告を受けた。「どれだけトレーニングをしてもメヒア(埼玉西武)には勝てない」と笑いながら話すが、現役生活を振り返り「もっとできたのではないか……」と後悔の気持ちをにじませた。
「自分がジャンプして届かないものに届くのですから、身長はあったほうがいいです。でも、190センチを超えた人が内野にたくさんいるわけではない。森友哉(埼玉西武)や、アルトゥーベ(アストロズ)みたいな、身長が低くても活躍する選手が出てきた。そういうのを見ていると、自分の努力不足だったのかなと思うところはあります」
水口さんは今年からライオンズアカデミーのコーチに就任し、第二の人生をスタートさせた。いつか指導者として、自らが身をもって知った「小兵選手が生きる道」を伝えたいという、新たな夢を追いかける毎日だ。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)
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