5月25日より「日本生命セ・パ交流戦 2021」が開幕する。レギュラーシーズンでは唯一となるセ・リーグ球団との対戦であることに加えて、今季は2年ぶりの開催とのこともあって、普段のカードとは異なる各球団の対戦を楽しみにしていたファンも多くいるだろう。
そんな中で、複数の球団に所属した投手に期待される記録が“12球団勝利”である。2005年に交流戦が開始されてからは、単独リーグ所属で達成できるようになったこともあり達成人数が増えているものの、現在までに両リーグ合わせて18人しか達成していないことを考えると、いかに成し遂げることが難しい記録かがわかる。そこで、交流戦で12球団勝利が期待されるパ・リーグの投手を紹介する。
岸孝之は今季こそ天敵攻略となるか
まずは埼玉西武と楽天で通算134勝を挙げ、パ・リーグを代表する右腕である岸孝之投手。今季は2年ぶりに開幕一軍を掴み取ると、初登板で12球団最速となる完封勝利をマーク。4月6日の古巣・埼玉西武戦では3年越しで史上初となる2球団での2桁連勝を挙げるなど、ビッグネームが集まる楽天先発陣の中でも存在感を示している。
岸投手は、2017年5月7日の古巣・埼玉西武戦でパ・リーグ全6球団からの勝利を達成している。そして、交流戦では歴代7位タイとなる通算21勝をマーク。特に中日に対しては12戦8勝と抜群の相性を誇っている。
一方で、15年間のプロ生活で唯一白星を挙げられていない相手が広島だ。通算11戦で0勝8敗、ビジターの登板では4試合全てで負け投手となるなど、ここまで苦戦を強いられている。2019年の交流戦でも本拠地・楽天生命パーク宮城で登板するも、7回3失点の内容で敗戦投手となった。今季の楽天と広島のカードはマツダスタジアム広島で行われることになっている。登板が実現すれば、岸投手にとって鬼門ともいえる球場で迎えることになるが、今までの雪辱を果たすマウンドとなるだろうか。
2013年日本シリーズMVPの美馬学がレギュラーシーズンで唯一勝てていない球団とは
今季でプロ11年目を迎える美馬学投手。楽天から千葉ロッテに移籍した昨季は、FA移籍1年目で3年ぶりの2桁勝利を達成するなど、チームのAクラス入りに大きく貢献した。今季も開幕ローテーション入りを果たすと、4月10日の埼玉西武戦で7回119球2失点の熱投で初勝利を挙げるなど、経験豊富なベテランとして投手陣を引っ張る活躍を見せている。
美馬投手は昨季、開幕から楽天戦に2試合登板するも勝利を飾れず。3試合目となった8月25日の試合で白星を挙げてパ・リーグ全6球団からの勝利を達成した。一方で交流戦では、2018年までにセ・リーグ5球団から勝利を挙げており、残すは巨人のみ。
美馬投手といえば、楽天時代の2013年日本シリーズにおける快投を思い浮かべる方も多いだろう。2試合に先発すると、セ・リーグ覇者の巨人相手に11回2/3を投げて2勝を挙げる活躍で球団史上初の日本一に大きく貢献し、シリーズMVPにも輝いた。交流戦での巨人戦は2016年を最後に登板機会がなく、対戦成績では3試合に先発して0勝1敗と振るわないが、今季は本拠地・ZOZOマリンスタジアムでのカードが予定されている。昨季6勝をマークして相性抜群ともいえる本拠地のマウンドで、再び巨人打線を抑えこむ投球を披露できるか。
先発再転向の増井浩俊は史上初となる快挙達成へ
北海道日本ハムとオリックスで先発と抑えを任された増井浩俊投手。昨季は中盤から先発に再転向すると、4年ぶりとなる先発勝利を挙げるなど、スターター適性の高さを改めて示すシーズンとなった。今季は3月31日の初登板を白星で飾るなど、移籍後初となる開幕ローテーション入りを果たした。
通算163セーブを誇る増井投手は、2018年に古巣・北海道日本ハムからセーブを記録して、史上4人目となる12球団セーブを達成。さらに昨季10月11日の北海道日本ハム戦で勝利したことで、パ・リーグ全6球団からの勝利も挙げた。
交流戦では2019年6月13日の中日戦で勝利したことで、セ・リーグ5球団からの白星をマークしており、残すは東京ヤクルトのみとなった。東京ヤクルトから勝利すれば、NPBでは史上初めてとなる12球団からの勝利とセーブを記録した投手となる。今季のオリックスは京セラドーム大阪で東京ヤクルトを迎え撃つだけに、本拠地のファンの前での快挙達成となるだろうか。
セ・リーグから移籍のベテラン両左腕は古巣から白星を挙げられるか
近年パ・リーグに活躍の場を移したベテランも大記録達成にリーチがかかっている。埼玉西武の内海哲也投手は巨人から、オリックスの能見篤史投手は阪神から、それぞれ勝ち星を挙げると、12球団勝利の記録を達成する。
昨季、埼玉西武へ移籍した内海投手は後半戦から先発ローテーションに加わると、9月2日の千葉ロッテ戦で743日ぶりに白星を挙げた。今季は二軍での登板が続いているものの、ここまで3勝をマークしており順調な調整具合をアピール。一軍投手陣の状況によっては経験豊富なベテランにマウンドが任されることも考えられる。
また、今季から投手コーチ兼任でオリックスに加わった能見投手は、ベテランらしい熟練の投球術でもブルペンを支えている。確たるストッパー不在となっているチーム状況では抑えも任されており、5月2日の福岡ソフトバンク戦には球団最年長記録で移籍後初セーブを挙げた。試合展開などにより登板機会こそ限られるが、一軍で投げ続けている限りでは12球団勝利達成の可能性は十分にあると言えるだろう。
今季の交流戦は、埼玉西武が東京ドームで巨人とのカードが予定されており、オリックスも甲子園に乗り込んで阪神と対戦。古巣との対決が実現すれば、両投手はかつての本拠地で登板することになる。慣れ親しんだ球場で大記録達成となるか。
2015年からは3連戦6カードの開催となり試合数が削減されたこともあって、直近5年間では両リーグ合わせてもわずか1人しか達成していない12球団勝利の大記録。長く一軍で結果を残し続けるとともに、複数の球団に所属した投手だけが成し遂げられる偉大な記録達成に王手をかけている各投手の登板を注目してみてはいかがだろうか。
文・和田信
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