4月20日の埼玉西武戦の第3打席以降、三振していない吉田正
オリックスの吉田正尚外野手が驚異的な打撃成績を記録している。5月15日の楽天戦を終えた段階でリーグダントツの打率.355、リーグ2位タイの8本塁打、リーグ4位タイの25打点と打撃3部門全てで上位につける。3冠王さえも狙えそうな活躍ぶりだ。
ただ、この打撃成績以上に驚異的な数字を残しているものがある。それが、三振数の異常なほどな少なさだ。ここまで43試合を終え、183打席で喫した三振はわずかに4つ。4月20日の埼玉西武戦の第3打席を最後に、約1か月間、三振していない。昨季も120試合でわずか29三振と少なかったが、昨季の三振率(K%)5.9%に対し、今季は2.2%とさらに良くなっている。
さらに、セイバーメトリクスの指標などを用いてデータ分析を行う株式会社DELTAのデータを用いて、吉田正の今季の打撃を詳細に分析してみよう。
ボールをバットに当てるコンタクト率では千葉ロッテ荻野や中日大島が上
もちろん三振が少ないということは、ボールの見極めとともに、バットに当てる能力が高いということだ。それを示すのが、バットに投球を当てる確率を表す「Contact%」「Z-Contact%」「O-Contact%」などの指標だ。「Contact%」は投球全体に対してバットに当てる割合、「Z-Contact%」はストライクゾーン内、「O-Contact%」はゾーン外のボールをコンタクトする割合をそれぞれ示すものになる。
吉田正は実はこの指標で格段に秀でているわけではない。「Contact%」は90.7%は両リーグ通じて2位。千葉ロッテの荻野貴司外野手の91.0%がトップで、中日の大島洋平外野手も90.3%と肉薄している。同様に「Z-Contact%」も吉田正の94.4%に対し、荻野が95.9%でトップ。楽天の小深田大翔が95.3%、大島が95.0%と続く。吉田正も優秀だが、コンタクト率ではより優れた選手がいる。
では、吉田正の三振の異様な少なさはどこに要因があるのだろうか。コンタクト率に秀でる吉田正、荻野、大島のコース別のコンタクト率を表すヒートマップを見てみると、吉田正の異彩ぶり、驚異的な穴の無さが伝わってくる。
各エリアのヒートマップを見ると極端に穴がない吉田正尚
まず「Contact%」トップの荻野を見てみよう。荻野はゾーン内でも内角低めのコンタクト率が77.8%と低い。さらには外角低めが92.3%、真ん中低めが94.4%となっており、ボールゾーンとなると、70%を切るエリアが多くなる。内角高めのゾーンは0.0%だ。大島はゾーン内では内角高めが83.3%、内角低めが85.7%と高くなく、真ん中高め、低め、外角の低めなども100%を切る。
そこで吉田正だ。まず特徴的なのが、コンタクト率100%のエリアの多さだ。ゾーン内ではど真ん中はもちろん、外角高め、内角の真ん中、低めが100%。最も低い外角低めは82.6%だが、これ以外は90%を超えている。そして、恐ろしいのがボールゾーンでのコンタクト率の高さ。外角に外れたボールへのコンタクト率はどの高さでも100%、そして内角高めエリアも100%を誇っている。
これらから推測できる吉田正尚の特徴は、ゾーン内での空振りのしにくさはもちろん、ボールゾーンでもバットに当てることができているということ、さらには、バットに当たるところのボールにしか手を出していない、ということだろう。ヒートマップを見る限り、吉田正に空振りをさせようとすると、内角低めのボールゾーンを振らせるしか無さそうだ。
現在、連続三振無しを92打席まで継続している吉田正。43試合を消化した時点で4三振。このペースでシーズンを戦い抜いたとすると、143試合終了時点では13.3三振となる。NPBのシーズン最少三振記録(300打数以上)は1951年の川上哲治(巨人)、酒沢政夫(大映)の6個。さすがにこの更新は難しいだろうが、どこまで少なくなるか注目だ。
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