初スタメンで3安打4打点の大活躍 開幕一軍から漏れた鷹・上林誠知が抱えていた思いとは…

Full-Count 福谷佑介

2021.5.6(木) 07:30

福岡ソフトバンク・上林誠知※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・上林誠知※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

5日の楽天戦で「1番・中堅」でスタメン出場し、土壇場の9回には同点打を放つ

■福岡ソフトバンク 5-5 楽天(5日・PayPayドーム)

 福岡ソフトバンクは5日、本拠地PayPayドームで行われた楽天戦で9回に追いつき、5-5の引き分けに持ち込んだ。1点ビハインドの9回に同点打を放つなど上林誠知外野手が3安打4打点と大活躍。今季初スタメンで“上林ここにあり”を強烈に印象づけた。

 デスパイネの登録抹消に伴い、3日に今季初めて一軍に昇格した上林。2日間はベンチスタートとなり、この日ようやく今季初スタメンのチャンスが巡ってきた。「自分にとっての開幕戦だったので印象付けられるようにと、ずっと集中できていた」。1か月半遅れでの“開幕戦“で燃えないはずがなかった。

 初回の第1打席こそ三邪飛に倒れたものの、そこからは“バヤシ劇場”だった。4点ビハインドで迎えた3回1死一塁で左中間を破る適時打を放ち、今季初安打初打点をマーク。再び4点差に広げられていた5回無死二塁で迎えた第2打席は則本昂の真っ直ぐを右翼ホームランテラス席に運び、今季初アーチとなる1号2ラン。2点差に詰め寄る一発で反撃の狼煙を上げた。

 極め付けは1点差で迎えた9回だ。松田、代打の川島が四球を選び、2死一、二塁でこの日の5打席目へ。1ボール2ストライクと追い込まれてからの4球目。「真っ直ぐ、スライダー半々での対応だった」。松井が投じた外角低めへのスライダーを弾き返すと、打球は遊撃手の頭上を超えて左前へ。土壇場で試合を振り出しに戻す同点の適時打。一塁ベース上では気持ちが溢れ出るかのようなガッツポーズも飛び出した。

 続く柳田が空振り三振に倒れてサヨナラ勝ちとはいかなかったものの、上林は今季初先発で5打数3安打1本塁打4打点と気を吐いた。自身の誕生日で黒星を免れた工藤公康監督は「大したもんですね。彼の意地であったり、プライドがヒットやホームランに繋がったと思う。よく打ってくれたし、絶体絶命だっただけによく打ってくれたと思います」と手放しで称えていた。

「気持ちが切れていたら今日こうやって結果は出ていなかったと思う」

 キャンプ、オープン戦とスタメン争いを繰り広げてきた上林だが、蓋を開けてみれば、開幕2軍スタート。レギュラーとして試合に出られないのであれば、2軍で実戦を積んだ方がいい。ベンチを温めるための選手ではない。そんな工藤公康監督、小久保裕紀ヘッドコーチの思惑から、ファームで声がかかるまでの日々を過ごしてきた。

「大人の事情もありますし、そこはいろんな思いありましたけど、気持ちが切れていたら今日こうやって結果は出ていなかったと思う。自分を信じてやっていて良かったなと感じですね」

 ファームでも淡々と己の打撃を磨き、状態を上げるように取り組んできた。とはいえ、いざ昇格してみると、その役割は代走や守備固めがメイン。そこのギャップは感じていたかもしれないが、「自分が感じていることは自分だけで収めればいいし、周りの人に思ってもらわなくてもいいので、周りを気にせず、とにかく自分の結果をと。自分の結果がチームのためになるので、そういう意識でこれからもやりたい」との思いで、この日の試合に臨んでいた。

 1か月半のファーム生活で上林の顔は見るからに日焼けしている。「まだ5月なんですけどね、こんなに焼けるかと。日焼けしやすいんでしょうがないですね」と笑うが、その表情からはファームで苦闘してきたことが窺い知れる。

 現状、デスパイネが不在で上林にとっては大きなチャンスでもある。レギュラーへの思いを問われた上林は「もちろんずっとそのつもりでやってますし、誰にも負けない気持ちで最後までやりたい」と力強い。ファンも待ち侘びていた上林のプレー。一気にレギュラーを奪還するくらいの活躍を期待したい。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

記事提供:Full-Count

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