田澤純一は味全の守護神として奮闘中 台湾プロアマ、最終予選の防疫計画案提出

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2021.4.6(火) 07:00

(C)中華職業棒球大連盟CPBL
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開幕6試合連続無失点も、7試合目で初黒星喫す

 日本プロ野球より一足早く開幕した台湾プロ野球の主要トピックから、今季、味全ドラゴンズに入団した田澤純一のここまでの登板内容についても紹介しよう。田澤は3月17日、開幕2戦目の中信兄弟戦、4対0とリードした9回裏に台湾プロ野球初登板を果たすと、2アウトから内野ゴロをさばいたショートが悪送球、2塁にランナーを進められたものの、後続を中飛に打ち取り、チーム一軍復帰後初勝利となる試合を締めた。

 3試合目の登板となった3月23日の楽天戦では、7対4とセーブがつくシチュエーションで登板、先頭の郭文嚴に2塁打を打たれたものの、林承飛を146km/hの外角直球、藍寅倫を134km/hのスプリットでいずれも空振り三振に切って取った後、梁家榮を力ない左飛に打ち取り、初セーブをマークした。

 田澤は26日の富邦戦でも3対0の場面で登板、内野ゴロ3つに打ち取り、危なげなく2つ目のセーブを記録した。28日の富邦戦もビハインドの展開ながら1回2/3を無安打無失点、30日の楽天戦も三者凡退で3セーブ目をマーク、開幕6試合連続無失点と上々のスタートを切った。 

 開幕から好調さを維持していることについて田澤は、「春季キャンプから日が浅く、一部の打者はまだ試合のリズムに乗り切れていないかもしれない」と分析、今後、自身の球種が研究がされていくなか、他の球種を加えたり、より良いストレートを投げていく必要があるとして、その点について、捕手とコミュニケーションをとっていくと述べた。

 しかし、田澤の好調ぶりが日本メディアで報じられ、「台湾で無双」というキャプションが台湾でも話題となった31日の楽天戦は、一転して苦しい投球となった。田澤は2対1と1点リードの9回裏に登板、スプリットの制球が今ひとつであった中、先頭、元福岡ソフトバンクホークスの陽耀勲にライト前ヒットを打たれ、二死3塁のピンチを招くと、林泓育にカーブを叩かれ、サード強襲の同点打(記録はレフト前ヒット)でセーブ失敗、さらに不運なヒット、敬遠で満塁とされると、147km/hの直球を林承飛に左中間に運ばれサヨナラ負け、初黒星を喫した。田澤は自身を責めたが、葉君璋監督は「制球がいい分、狙い撃ちされやすいという点はあるが、球速も出ており、状態は悪くなかった。(同点打も)サードは捕れたかもしれない」とかばった。田澤純一の現時点(4月3日時点)の成績は、7試合登板、7回1/3を投げ、1敗3セーブ、防御率2.45となっている。

 台湾プロ野球の外国人枠は一軍3人、今季から一軍参入の味全は特例で1人多い4人だが、4人共に投手ないし野手とすることは認められておらず、現状、投手3人、野手1人となっている。味全ではこの4月上旬にも、昨年、KBOのキアで11勝をあげた先発型右腕、ドリュー・ギャグノンの一軍昇格を予定しており、現行3人いる外国人投手のうち一人が二軍降格となるが、中継ぎで規定投球回数以上投げているウッドールが降格となる見込みで、当面、田澤の守護神の座は安泰といえそうだ。

 初黒星の際は田澤をかばった葉監督だが、前述の田澤の「無双」ぶりについて問われた際には、奇しくも田澤と同じく「打者もまだ慣れていない」と述べており、田澤は今後、打者が研究してくるなかで、安定したパフォーマンスを発揮していく必要はある。

 また、現在リーグで外国人クローザーを起用しているのは味全のみだ。味全は今季一軍参入初年度で、成績だけを追い求めてはいないとはいえ、イニングイーターとして計算できる先発投手が少ないチームにおいて、田澤は外国人守護神として存在感をみせていかなければならない。

 日本選手が海外でプレーする際、しばしばリーグのレベルの違いが話題となるが、こうした外国人枠争いのプレッシャー、5球団ならではの同じ打者との対戦回数の多さ、高温多湿の気候など、台湾特有の過酷さもあり、元メジャーリーガーだから活躍して当然というほど楽なリーグではない。ただ、田澤純一には、これらを乗り越え、シーズンを通じて、味全の守護神として活躍する姿をみせてもらいたいと思う。

台湾プロアマ、世界最終予選の防疫計画案を提出、管轄部署が最終決定へ

CPBL蔡其昌コミッショナー(左)、CTBA辜仲諒理事長(右)(C)中華職業棒球大連盟CPBL
CPBL蔡其昌コミッショナー(左)、CTBA辜仲諒理事長(右)(C)中華職業棒球大連盟CPBL

 国際大会開催に向けた取り組みも紹介しよう。6月16日から20日にかけて、台湾の台中インターコンチネンタル球場(台中市)及び斗六球場(雲林県)では、台湾代表はじめ6チームが五輪出場枠残り1枠をかけて争う東京五輪の世界最終予選が開催される。

 以前の記事で紹介したように、3月上旬のプロ・アマ会議で、世界最終予選に向けたナショナルチームの選手選考及び合宿、そして大会への出場、大会の運営などについて、プロ側のCPBL(中華職業棒球大連盟)が全面的に請け負うことが決定した。

 CPBLにとっては、五輪出場権の獲得を目指したプロ・アマ団結による「最強の代表チーム」の結成と共に、コロナ禍における世界最終予選のスムーズな運営も、重要なミッションとなる。

 CPBLとCTBA(中華民國棒球協會)は3月18日、世界最終予選に向けた初の定例会議を開催、それぞれの防疫計画案を提出した。両者の防疫計画の最大の違いは、海外チームの台湾入境後の隔離日数で、CTBA案が「搭乗前3日以内に受検した陰性証明及び来台後7日間の隔離」であったのに対し、CPBL案は「14日間の隔離」を求める、というものであった。

 CPBLの蔡其昌・コミッショナーは、「14日間の隔離」という案を提出したことについて、昨年8月に来台したチェコの上院議員らの大規模な訪問団を比較例として挙げ、この時は「バブルシステム」を採用したが、併せて全員、全行程マスクの着用を求めたと説明、野球ではそれを求めることはできない上、その総人数も、出場チームの選手・コーチにWBSCの技術委員を加えると、チェコ訪問団の5倍以上に上ると説明した。

 なお、CPBL案では、海外チームは台湾入境後、まず隔離用の防疫ホテルで14日間過ごしてから、一般のホテルに移るという。また、仮に来台した選手の陽性が確認された場合の大会の開催については、中央感染症指揮センターの専門的な判断に従うとしている。

 なお、CPBLとCTBAはいずれも、一部のチームから希望が出ていた大会前の壮行試合について、隔離に伴うスケジュール面を考慮した場合、開催は困難として、見送る事で一致した。両者の防疫計画案は、いずれも中央感染症指揮センターに送られ、同センターによって最終的な防疫対策が決定することになる。

 世界最終予選には、6月初旬に開催が予定されているアメリカ大陸予選の2位、3位チームが出場する。仮に「14日間の隔離」で最終決定した場合、アメリカ大陸予選の閉幕から世界最終予選の開幕まで、14日間の間隔期間が取れない可能性がある。
 
コロナ禍において、国際大会の開催には高いハードルがある。台湾球界が打ち出した慎重な防疫対策については、参加チームの反発を呼ぶ可能性もあるが、逆に言えば台湾はその慎重さによって、これまで新型コロナウイルスの封じ込めに成功してきたともいえる。WBSC及び参加チームが、中央感染症指揮センターの防疫計画に合意し、世界最終予選が滞りなく開催されることを期待したい。

文・駒田 英

記事提供:

駒田英(パ・リーグ インサイト)

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