2016年シーズンをもって、NPB最年長選手であった横浜DeNAの三浦投手が現役を引退。12月4日に42歳の誕生日を迎えた千葉ロッテの井口選手が中日の岩瀬投手と並んで日本球界最年長選手となった。
年齢を重ねるにつれて徐々に自身の考えていたパフォーマンスの維持が困難になり、引退の二文字が常に付きまとうことは避けられないものである。しかし、ここでは現在も一軍で活躍中のチームにとって必要不可欠なパ・リーグの「大ベテラン」選手たちにスポットライトを当て、今季の成績などを振り返ってみたい。
【北海道日本ハム・田中賢選手】
143試合541打数147安打2本塁打53打点 打率.272
プロ入り17年目の田中賢選手は、今年で35歳を迎えた。2006年から5年連続でゴールデングラブ賞を受賞し、パ・リーグベストナインの二塁手部門にも6度選出されるなど、守備の名手として名高い。しかし、守備だけでなく勝負強い打撃と3割近い打率を安定して残すバッティングも魅力の一つで、今年もあと少しでシーズン150安打という成績を残した。
今季も守備での負担の大きい二塁を守りながら堅実なプレーでチームのピンチを幾度も救い、福岡ソフトバンクとのゲーム差を一気に詰めた15連勝中にも値千金のアーチを放つなど、チームの10年ぶりの日本一に攻守で貢献。2009年以来7年ぶりとなる全試合出場も果たした。
【楽天・松井稼選手】
56試合160打数34安打2本塁打13打点 打率.213
松井稼選手は、最多安打2回、盗塁王3回、ゴールデングラブ賞4回のまさに走攻守の三拍子が揃った選手だが、そんな松井稼選手も今年で41歳。今季の出場試合は例年の半分ほどに留まる結果となった。
しかし昨季は慣れない外野手として奮闘し、日本通算2000本安打達成と2年ぶりの2桁本塁打を記録している。復活を期する来季は再び打撃面でも健在ぶりをアピールしていきたいところ。経験豊富なその頼もしい背中で、来季もチームをけん引していってほしい。
【埼玉西武・上本選手】
67試合88打数27安打1本塁打12打点 打率.307
上本選手は今季、貴重な左の代打として自身の立場を確立し、その役に徹した。規定打席未満ながら、今年は自身初の打率3割をマークし、出場試合数も昨季の6試合から67試合と大幅に増やした。
おなじみのテーマソングが流れる中、「代打・上本」がコールされると、球場内は大きな盛り上がりを見せる。来季もムードメーカーとして、そして最年長選手としてチームを引っ張り、2008年から遠ざかっている頂点奪取を目指したい。
【千葉ロッテ・井口選手】
79試合152打数39安打5本塁打34打点 打率.257
井口選手は球界最年長の42歳。来季、千葉ロッテ在籍9年目を迎え、古巣である福岡ダイエーの8年を抜くことになる。生え抜き選手ではないが、今やなくてはならない存在となり、チームの精神的支柱と呼ぶべき選手である。若手選手の指導にも積極的で、チームにおけるその存在は大きく代え難い。
未だ自慢の長打力は健在で、井口選手が打ったことでチームの雰囲気がガラリと変わったというシーンが今年も数多く見られた。43歳を迎える来季も、プレーにおいても指導の面においてもチームの柱となり、2010年以来の日本一を目指していく。
【千葉ロッテ・福浦選手】
36試合82打数20安打0本塁打7打点 打率.244
千葉ロッテ一筋23年の福浦選手は12月14日で41歳となる。今季の10月4日の楽天戦では、地面スレスレまで落ちた球を、右手一本ですくい上げて適時打を放つなど、「幕張の安打製造機」はさすがのバットコントロールを見せつけた。
今季終了時点で通算安打数は1932本となり、2000本安打達成まであと68本に迫った。「俺達の福浦」が大記録を達成する日を、ファンは心待ちにしている。
【オリックス・中島選手】
96試合314打数91安打8本塁打47打点 打率.290
中島選手は今季、日本球界復帰2年目。登録名を「裕之」から「宏之」に変更して臨んだシーズンだった。一般的に、渡米した野手が再度日本球界に適応するにはある程度の時間を要すると言われるが、2年目の今季は後半戦から打撃が絶好調。交流戦終了時に.234だった打率を最終的には.290まで上昇させる活躍を見せた。
糸井選手がFAで移籍し、中島選手にかかる期待はさらに大きくなる。35歳となる来季、中島選手らしい華のある活躍が多く見られることを期待したい。
【福岡ソフトバンク・和田投手】
24試合15勝5敗 163回 157奪三振 防御率3.04
和田投手は、言わずと知れた球の出所が見づらいフォームから繰り出される「実際のスピードより速い」ストレートを武器に、並み居る強打者を翻弄するベテラン左腕。今季から日本球界に復帰し、4月12日の埼玉西武戦で復帰後初勝利を飾ると、そのまま勢いに乗って15勝を挙げ、いきなりパ・リーグ最多勝のタイトルを獲得した。
日本球界でのブランクを感じさせない輝かしい復帰1年目のシーズンとなったが、チームはリーグ優勝を逃し、悔しい思いは残ったはず。今季の投球を見る限り、未だ球界屈指の投球術に陰りは見えない。来季もきっと、芸術的な奪三振ショーを披露してくれることだろう。
今回紹介した、パ・リーグの大ベテラン選手の中には、メジャーリーグに挑戦し、近年日本球界への復帰を果たした選手が少なくない。そもそも、渡米の機会に恵まれるということ自体が超一流選手の証であり、彼らがすでに球史に名を残す名選手であるということには、異論を差し挟む余地はないだろう。
年齢を重ねることでプロの選手としての高いパフォーマンスを維持することが困難になっていくのは避けられないことであるにも関わらず、現在も一軍で活躍しているそのパフォーマンスには本当に驚かされる。
年齢を重ねているということは、その分、経験を積んでいるということにもなる。一軍の戦力にならなければ現役を続けられないプロの世界で、何年にもわたる熾烈な戦いを勝ち抜いてきたという証拠でもある。若さや勢いだけでは乗り切れない場面で落ち着いて仕事を果たし、チームの雰囲気を引き締める役割は、ある程度の年齢に達した選手でなければ務まらない。日々変わっていく身体や感覚と向き合い、この厳しいプロ野球界を生き抜く円熟期の選手たちの、今後のさらなる活躍を楽しみにしたい。
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