鈴木翔天は11日の千葉ロッテ戦で7回から登板し1イニングを3者連続三振
■楽天 8-5 千葉ロッテ(オープン戦・11日・静岡)
イケメンで清々しい名前を持つ24歳が、楽天の左腕不足を解消する救世主となるかもしれない。プロ3年目の鈴木翔天(そら)投手。今季オープン戦初登板となった11日の千葉ロッテ戦(静岡)では7回から1イニングを投げ左打者3人を全員三振に仕留めた。開幕1軍へ一気に視界が開けた。
9日に1軍に合流したばかりの鈴木翔は、7回先頭の平沢をいきなり3球で料理した。初球の134キロ直球、2球目の127キロのスライダー、3球目の129キロのスライダーを全て外角いっぱいに決め、平沢は1度もバットを振ることができないまま見逃し三振に倒れた。続く藤原を真ん中低めのスライダー、高部も外角低めのスライダーで空振り三振に切って取った。
この日は東日本大震災発生からちょうど10年の節目。「僕は神奈川出身ですが、大学は岩手に行った(富士大)ので、(被災者に)勇気を与えられたらと思います」と感慨深げに語った。
石井一久監督は「左打者が嫌がるスライダーも持っている」と指摘。小山伸一郎投手コーチも「もともと能力の高い投手。これまで結果が出なかったのは、ストライクとボールがはっきりしていたからだった。ストレートには力があり、ストライクさえ入れば勝負になる」と評し、「彼が今日くらいの投球をしてくれれば中継ぎの厚みが増す」と相好を崩した。
鈴木翔は2年目の昨季、1軍で2試合登板。プロ初登板の9月15日・オリックス戦(ほっと神戸)は1回無失点に抑えた。ところが2戦目の同18日・福岡ソフトバンク戦(PayPayドーム)では一転。8回途中から登板すると、最初の打者の柳田に外角を狙った球が内角へ入ったところを右翼席上段まで運ばれた。「左打者を抑えないといけない所で、柳田さんに逆球を打たれた」と今も悔やみ切れない。今年は「丁寧に投げることを心掛け、引っかけたとしても外へはずれるように練習してきました」と屈辱を教訓にしている。
当面は“左殺し”が使命となるが、それだけで満足するつもりはない。「新球を練習しています」とニヤリ。小山コーチは「スクリューボールですね。ファームから『使える』と報告があった。今日は対戦相手が左打者だけだったので使う機会がなかったが、右打者に対して有効な球で、次の試合で見てみたい」と明かした。
田中将大の8年ぶりの復帰などで楽天投手陣は大幅に厚みを増したが課題は“左腕不足”。先発にはドラフト1位の早川隆久、抑えには松井裕樹がいるものの、中継ぎ左腕となると、今月1日に支配下に復帰したばかりの渡邊佑樹1人が開幕1軍争いに残っているに過ぎなかった。「そら」が付け入る隙は十分ある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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