防御率と奪三振とホールドの関係 データで見る投手分業制【前編】

2021.3.6(土) 12:00 パ・リーグ インサイト 望月遼太
(C)パーソル パ・リーグTV
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 防御率は、投手の能力を語るうえで最もよく用いられる。留意すべき点はあるものの、一定の信頼が置ける指標であることは間違いない。奪三振数もまた、ただそれだけで投手の実力を測ることはできないながら、頻繫に言及されるポピュラーな指標である。

 そして防御率と奪三振数が、合わせて語られることは多くない。防御率の良い投手が奪三振能力に優れているとは限らず、逆も然り。しかし防御率と奪三振を同時に見ていくと、二つの数字には一定以上の相関関係が見られた。のみならず、近年常識となった投手分業制に関する時代の流れまでも垣間見える結果に。過去10年のパ・リーグから見ていきたい。

 下記は、2010年以降のパ・リーグで、防御率1位のチームを一覧にしたものだ。奪三振数も記載した。()内が同年の奪三振数のリーグ順位。

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防御率と奪三振の相関関係は2011年から顕著に

 これを見ると、2011年以降の10年間においては、全ての「防御率1位のチーム」が「奪三振数でも3位以内」という成績だった。また、2016年の北海道日本ハムと2018年のオリックスを除く8シーズンで、「防御率1位のチーム」がそのまま「奪三振数1位のチーム」となっている。

 奪三振は、すなわち打球が前に飛ばなかったことを意味する。失策ゼロが現実的ではない以上、三振は失点につながらない最も安全な結果だ。セイバーメトリクスの見地において、奪三振数は投手の能力を評価するうえで大きなウエートを占めるが、その理由もそういった考え方に基づく。奪三振数が多いチームが、投手の安定感を示す防御率の面でも優れた数字を残しているのは、当然の帰結ともいえるだろう。

 次に、最多奪三振のタイトルを獲得した投手たちについて見ていく。各投手の奪三振数、所属チームの合計奪三振数、および奪三振リーグ1位のチームは、それぞれ下記の通りだ。

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奪三振王の存在とチーム奪三振数の相関性は……

 当然ながらそうそうたる顔ぶれが揃っているが、このうち「奪三振王を輩出したチーム」と「奪三振数1位のチーム」が同じだったのはわずか四度だった。奪三振王の活躍がチームの奪三振数向上にまで波及することは、意外と少ない傾向にあるようだ。

 中でも、則本昂大投手は2014年から5年連続で奪三振王に輝き、4年連続で200奪三振以上を記録するという圧倒的な実績を残したが、その期間中に所属チームの楽天がリーグトップの奪三振数を記録したのは一度だけ。その一度というのが、唯一200奪三振に届かなかった2018年というのも興味深いが、チームの奪三振数を伸ばすためには、傑出した個人よりも投手陣全体のバランスが重要なのかもしれない。

 しかし、2019年以降はその傾向も変化した。「奪三振王を輩出したチーム」と「奪三振数1位のチーム」が同じという状態が、2020年まで3シーズン続いている。ともに日本一となった2019年と2020年の福岡ソフトバンクを支えたのは投手陣だったということが、ここからも改めて見えてくる。

2020年のリーグ順位にも防御率と奪三振数が影響

 2020年のパ・リーグのチーム防御率ランキングと、各球団の防御率、奪三振数は下記の通りだ。

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 これを見ると、防御率リーグトップの福岡ソフトバンクが、唯一の4桁奪三振を記録して奪三振数でもリーグトップに。チーム防御率2点台という数字は、球界全体を見ても抜きん出ている。また、千葉ロッテを除く5球団は「防御率の順位」と「奪三振数の順位」が同じという結果。こういった数字からも、奪三振と防御率の間にある相関性が見えてくる。

防御率とホールド、ホールドポイントの相関性

 奪三振数のほかにも、防御率と結びつけて語られることは少ないものの、一定の相関性がある意外な数字は存在する。そのうちのひとつが、最優秀中継ぎを決定する際の指標であるホールド・ホールドポイントだ。

 2010年以降のパ・リーグにおいて、防御率リーグトップだったチームと、ホールド・ホールドポイント数はそれぞれ下記の通り。()内がその指標のリーグ順位だ。

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 見ての通り、2010年から2014年までは「防御率1位のチーム」が「ホールド・ホールドポイントでも優れている」とは言い難く、二つの数字にはさほど関係がないように見えた。ところが、2015年以降は、2019年の福岡ソフトバンクを除き「防御率1位のチーム」がそのまま「ホールド・ホールドポイント1位のチーム」になっている。

 もちろん、ホールド・ホールドポイントを稼いだということは、チームの勝利またはその可能性をつなぐために貢献した、致命的な失点を避けたということを意味している。そう考えると、優れた防御率(平均的な自責点の少なさ)と、ホールド・ホールドポイントの多さに関係があるのは、むしろ当然といえるかもしれない。ポイントは、ごく最近になってからその傾向が顕著になってきた、という点だ。

リリーフの成績がチームに及ぼす影響の大きさ

 なぜ2015年から、防御率とホールド・ホールドポイントに見られる相関性がここまでわかりやすくなっていったのか。ホールド・ホールドポイントがリリーフの指標であることを考えれば、その理由としてはまず、投手分業制が進み、先発・中継ぎ、抑えの役割分担が明確になったこと、つまりリリーフの担う役割が大きくなっていることが挙げられるだろう。

 パ・リーグでは、シーズンの規定投球回に到達する先発が減少傾向にあり、その人数が2桁に達したのは2017年が最後。200投球回到達は2014年の楽天・則本投手が、10完投達成は2013年(当時)オリックスの金子千尋投手が最後となっている。

 そしてこのように、完投する、長いイニングを投げる先発の数が減るということは、その分、リリーフが消化するイニングは増加しているということだ。必然的に、彼らの登板数やその投球内容は、チームの投手陣全体の成績により大きな影響を及ぼすようになる。その結果、投手陣全体の指標である「防御率」と、リリーフの指標である「ホールド・ホールドポイント」の相関性が高まっていったことが考えられる。

 後編では、先発とリリーフの成績を比較し、リリーフの能力と防御率、奪三振の相関性も掘り下げた。数字から見えてくる現代野球の姿、興味深い変化について、より深く迫っていきたい。

文・望月遼太

後編はこちらから

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