角度を変えて見る。その先にあるファンの笑顔のために 千葉ジェッツふなばし マーケティング部 濵 雄介さん【PLMキャリアインタビューVol.5】
パ・リーグ インサイト
2021.3.1(月) 18:00
「スポーツに関わる仕事」と一口に言っても、多種多様だ。今回は、パシフィックリーグマーケティング株式会社が運営するスポーツ業界専門の転職エージェントサービス「PLMキャリア」を通じて転職された方にインタビュー。転職のきっかけや仕事の魅力を紹介していく。
「普通」と違う価値があることを知る
興行面での戦略、ファン獲得などで次々と斬新なアイデアを実現し注目を集める、国内バスケットボールの最高峰Bリーグ。そのトップカテゴリーであるB1で優勝を争う強豪のひとつが千葉ジェッツふなばしだ。ホームタウンを船橋市、フレンドリータウンを千葉市とし、地域に根差しながら魅力的なトップチームとしての存在感を高めている。地域とともに歩む。まずチームとしては地元のアリーナで良い試合を見せ続けることが重要だが、チームがよりモチベーションを高めて戦うために必要なのは、多くのファンに来場していただくこと。濵さんは「マーケティング」という分野からチームをサポートする。
「私の仕事は、さまざまなマーケティング施策を通じてファンのみなさんに来場していただくこと。そしてファンを増やしていくことが役割となります」
チケットの売上、観客数の増加による収入の向上はチーム、クラブ運営の柱であることはもちろんだが、ブースターと呼ばれるファンたちの熱気があふれる満員のアリーナで、選手はより一層その力を発揮し、その魅力を求めてファンとなった観客はまたアリーナに足を運ぶ。そしてまた選手は……。この好循環を作っていくことも目的となる。さて、千葉ジェッツふなばしの試合チケットは席種の分け方、分類が実に細やかだが、これもファンによりよい応援環境で楽しんでいただくための施策。
「まず、ホームとアウェイというような単純な分け方ではなく、どういうファンがどのような見方を求めているのかということを考えています。例えば会場の演出としてプロジェクションマッピングを行っているのですが、それを正面から見たいのか、文字が反転する、しないは気にしないのかということもあります。また、ベンチの横で選手のそばで見たい方、逆にベンチの様子を正面から見たいという方もいらっしゃいます」
ファンのニーズは様々だ。コートエンドで選手が飛び込んでくるような場所がある人にとっては価値があり、全体を俯瞰し戦略をじっくり見ようという方には最後列も価値になるなど、そこにファン一人ひとりの思いがある。濵さんはマーケティング部門の一員として、来場者、そしてファンを増やすための仕事に従事している。その視線からチケットの価値を考えていかなければならない。
「驚いたのは、ここは見づらいだろうと考えていたエリアが、一部のお客様にとってはメリットがあったりすることですね。対戦チームによっても、またその時のニーズによって、人気のある座席、また空いている座席も出てきます。こうしたデータもマーケティングとしては考えていく要素でしょうか」
ビッグデータや人工知能を駆使して効率の良い販売につなげることも大切だが、実際はそう単純なものではない。そのベースにあるのはやはりファンそれぞれの行動、思いの蓄積で、運用にあたっては慎重さが必要だ。チケットは売上そのもので、そのためにマーケティングは必須だが、マーケティングというのは、こうしたファンの思いを得てチケットに反映するためのものでもあるのだろう。そこで担当者としてのセンス、知見、責任感が発揮されるのではないだろうか。
「2020年は、新型コロナウィルス環境下にあって、座席を通常の半分にしました。その状況下でのプライシングについては、クラブとしての収益確保をしつつ、ブースターの納得感を得ることが重要だと感じていて、今季最も気を使っている部分です。同じ席種の中でも例えばベンチ側、ベンチ向かい側でニーズが異なるので、今季の途中からプライシングのグループ分けをより細分化しました」
ファンの納得感がアリーナでの高揚感につながっていく。そのための創意工夫。今後、チームと濵さんには大きなミッションが待っている。
「数年後、1万人収容のアリーナを本拠地にする計画があります。毎試合5000人を埋めていくことに尽力してきて、今度は1万人。ハードルはかなり高いとは思いますが究極の目標はシーズンチケットで1万席完売。もちろん固定客ばかりではなく常に新しいお客様に来場していただくことが大切なので、これはあくまでもひとつの考え方ということになりますが、いずれにしても、クラブが地域の皆様にとって生活の一部になるようにしていきたいです」
夢のために必要な経験値
2020年の経験もバネに、大きな目標に向かっていく濵さん。確かにハードルは高いかもしれないが、それを乗り越えていく力として「スポーツの世界で働きたい」という思いが実現したということもあるのだろう。
「スポーツビジネスの世界で働きたいという気持ちは、学生時代にもありました。ただ、好きなものを仕事にしていいのか?という気持ちもありましたし、チームに入ったところで自分に何ができるかわからないところもあったので、スポーツとは関係ない会社に就職しました。その後も待遇面や労働環境面での不安もありましたし、正直どこでもなんでもいいからスポーツの世界で働きたい、とまでは考えられなかったのが本音です」
学生時代にはスポーツ新聞制作サークルに所属するなど、好きという気持ちは強い。しかし、仕事は別。新卒で不動産管理・運営を行う会社に入社すると、一度目の転職先では商業施設の店舗誘致や施設評価を行うコンサル業務を経験。宅地建物取引士など業務にかかわる資格も取得した。社会人としての経験値を高めてきたところで、以前よりもスポーツの場で働くことのイメージも鮮明になり、まずはスポーツビジネスについての理解を深めようということで転職活動を開始した。
「プロ野球のファンで、『パ・リーグTV』をよく見ていたので、そこでPLMキャリアを知っていました。最初に知った時は転職のタイミングではなかったんですが、それが頭にありました。転職活動開始と同時に登録し、面談で担当のエージェントの方に千葉ジェッツふなばしの求人を紹介してもらいました。Bリーグの盛り上がりや千葉ジェッツふなばしが観客動員数で3年連続(当時)1位であったのは知っていましたし、社風や、会社として今後考えていることなど自分だけでは知りえない情報を教えていただき、不安も払しょくできたので応募を決めました」
その後、縁あって2020年4月に入社。いきなり新型コロナウィルス下でのチケット販売、販促という大きな壁が立ちはだかった。
「入社が決まった際はシーズン中に加わる予定だったのですが、入社直前にシーズンの打ち切りが決まりました。チケットを売るために入社したはずが、初仕事が払戻しとなったのは何とも皮肉でしたね。でもこれからのことを考えればやりがいが大きいです。前職、前々職はいずれも数百人規模の会社でしたが、ここは50人ほどと規模としては小さいですし、平均年齢も若い。その分風通しもよく、自分が任されていること、背負えることも多いです。ただ、シーズンが始まると、日常の業務をこなすだけで時間が過ぎてしまいます。強い意志や、やりたいことが明確でないといけない」
最後に、スポーツ以外の会社、規模の大小といろいろな経験をしてきた濵さんが考える、この仕事に向いている人とはどんな人だろうか。
「まだ入社して1年も経っていない私が偉そうに語れるものではないと思うのですが、一つ挙げるなら、物事をいろんな角度から見られる人でしょうか。ファン目線で、色んな立場に立って、ということももちろんですが、例えば先ほどのシーズンチケットで全席完売、ということに対しては運営側の視点だけでもメリット・デメリットがたくさんあります。それに自分で気づき、整理して判断できる自走可能な人はやりがいを感じられると思います」
♢PLMキャリアの詳細はこちらからご覧いただけます。
文・岩瀬大二
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