球団創設9年目に成し遂げた悲願の初優勝&日本一。【東北楽天ゴールデンイーグルス 犬鷲の軌跡 Vol.3】

パ・リーグ インサイト

2020.12.23(水) 20:30

写真提供:(C)Rakuten Eagles
写真提供:(C)Rakuten Eagles

 2019年に球団創設15周年を経た東北楽天ゴールデンイーグルス。スタートの分配ドラフト、東日本大震災などさまざまな苦難を乗り越え、2013年には日本一を成し遂げるなど、ファンに愛される球団へと着実に成長を続けている。

 そこで、その苦楽を振り返りつつ、15年の歩みをたどっていく。第3回は「球団創設9年目に成し遂げた悲願の初優勝&日本一」。初優勝、そして日本一に輝いた2013シーズンを振り返る。

過去の連載はこちら
【Vol.1】東北にプロ野球がやってきた。
【Vol.2】東日本大震災を乗り越えて。見せた、野球の底力。

主力が抜けるも新戦力が躍動した2013年

 長年チームの成長を支えた岩隈久志投手はマリナーズへ、山崎武司選手は中日へ移籍するなど、主力が抜けた2012年は、勝率.500をマークするもリーグ4位に終わる。すると、オフにメジャーリーグからアンドリュー・ジョーンズ選手、ケーシー・マギー選手、そして斎藤隆投手を獲得するなど、大型補強に成功。

 迎えた開幕戦は、WBCに出場した田中将大投手が先発登板を回避。ルーキー・則本昂大投手が先発を任されるも1対7で惨敗を喫するなど、やや不安なスタートとなったが、5月に入ると6連勝を飾り、交流戦では15勝9敗で2位と好成績をマーク。ここから勢いに乗り7月4日に首位に立つと、大きく調子を落とすことなく、8月28日についにマジック点灯。

 順調に勝利を積み重ね、マジック「2」で迎えた9月26日の埼玉西武戦。幸先よく先制するも、中盤に逆転を許し、2点ビハインドで迎えた7回表、4番・ジョーンズ選手の走者一掃の適時打で逆転に成功。そして1点差で迎えた最終9回裏、マウンドにはここまで無敗の田中将大投手が上がった。

 この時点でマジック対象チームの千葉ロッテが敗れていたため、マジックは「1」となっており、楽天が勝利を収めればリーグ優勝が決まるという状況になっていた。大事な最終回を任された田中投手は、得点圏に走者を背負いながらも、最後は三振を奪って試合終了。悲願のリーグ王者に輝いた。

 2013シーズンの最終的な結果は82勝59敗3分、勝率.582。2位の埼玉西武に7.5ゲーム差をつけてのリーグ優勝となった。そしてクライマックスシリーズでは4勝1敗で千葉ロッテを下し、初の日本シリーズ進出を決めた。

日本シリーズで繰り広げた球史に残る熱戦

 日本シリーズではセ・リーグの覇者・巨人を相手に球史に残る熱戦を展開。3勝2敗と日本一に大手をかけて臨んだ第6戦はレギュラーシーズン無敗の田中投手が先発登板。しかしここで田中投手は160球の力投を見せるも、巨人打線に打ちこまれ、勝負は第7戦までもつれることに。

 そして迎えた最終第7戦。先発・美馬学投手が上々の立ち上がりを披露すると、打線は牧田明久選手の本塁打などで3点のリードを得る。そして最終9回表、星野監督がマウンドに送り出したのは前日9回160球の熱投を見せた田中投手だった。

 登場曲「あとひとつ」の大合唱を背に、マウンドに上がったシーンは、今でも鮮明に脳裏に焼きついている方も多いだろう。田中投手は走者を背負うも、最後は武器であるスプリットで矢野謙次選手を三振に抑え、見事日本一に輝いた。この瞬間、仙台の夜空には勝利の象徴である白のジェット風船が舞った。

 優勝監督インタビューで星野仙一監督は「あの大震災で苦労なさっている皆さんを見ると、日本一になってみんなを癒してあげたい、それしかないと信じてこの3年間戦ってきました」と東日本大震災で傷ついた方々に向けて力強い言葉を残した。この優勝は東北を、そして日本中を勇気付けるものになったに違いない。

 2013シーズン、エースとして大活躍した田中将大投手は開幕から負けなしの24連勝をマークし、日本記録を樹立。満票で『最優秀選手(MVP)』を獲得すると、『最優秀防御率』『最多勝』『最高勝率』に加え、『沢村賞』にも輝いた。そしてルーキー・則本昂大投手は球団新人記録の15勝をマークし、『新人王』を獲得。銀次選手も無冠ながら打率.317をマークするなど大きな存在感を示した。

球団創設9年目で成し遂げた快挙

 創設当初の苦しいチーム状況から9年。悲願の初優勝、日本一を成し遂げ、地元の人々から愛されるチームへと成長した楽天。東北に大きな夢と感動を与えてくれた闘将・星野仙一さんが2018年1月4日に亡くなった際には、楽天生命パーク宮城に設けられた献花台に多くのファンが花を手向けた。

 第4回では、日本一達成後の戦績や、本拠地・楽天生命パーク宮城の象徴ともいえる観覧車を筆頭に展開されるボールパークについて触れていく。

文・後藤万結子

☆【Vol.4】地域に愛される球団を目指して。は12月25日(金)に更新予定!

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