普段の「6月」と今季の「6月」はどう違った? 開幕好調、14名の直近5年間を分析

2020.7.14(火) 17:30 パ・リーグ インサイト 望月遼太
《THE FEATURE PLAYER》E浅村 強靭な体幹から繰り出す『トルネードスイング』
《THE FEATURE PLAYER》E浅村 強靭な体幹から繰り出す『トルネードスイング』

寒暖差の激しさもあり、気候面でも難しい時期である「日本の6月」

 2020年のペナントレースが開幕してから約1カ月が過ぎ、カレンダーも7月に。今季は開幕が6月19日まで延期されたこともあり、6月に行われた公式戦は各チームともにわずか10試合と、例年に比べてかなり少ない数字となっている。

 この時期に各選手が残した成績は、従来通りに開幕直後の成績として扱って差し支えないものではあるだろう。ただ、例年とは異なり、すでに「球春」とは言い難い時期であるのも確かだ。気候面でも日によっての寒暖差が激しい時期であり、従来のシーズンであれば夏場に差し掛かる前の、各チームにとっても疲れが出てきやすいタイミングでもあるだろう。

 また、今季は短縮日程の影響もありセ・パ交流戦が開催されなかったが、従来であれば6月は交流戦の日程の大半が組み込まれる時期でもある。交流戦では普段は対戦しない投手を相手取るため、各打者にとっても高い対応力が求められる。その交流戦が存在しなかった今季の6月は、対戦カードという面でも、昨季までとはやや趣が異なっていたといえよう。

 さて、疲労、暑さ、他球団の研究の進行といった、本来であれば少なくない数の選手が苦手とする要素の影響が薄かった今年の6月に、各選手が記録していた数字は、昨年までとは具体的にどのような点が異なっていたのだろうか。

 今回は、規定打席到達者の中で6月の成績が優れていた打者の中から、2019年以前にもチームの主力として活躍していた選手たちをピックアップ。2016年以降の各シーズンの6月に記録された成績について確認し、従来より6月を得意としていた通りに今季も活躍した選手や、これまでは6月を苦手としていたものの、今季は趣の異なる成績を残した選手が誰だったのかを見ていきたい。

 まずは、2019年以前から6月を得意としてきた7名の選手について、各年の6月に残した数字とともに紹介していきたい。

西川遥輝選手(北海道日本ハム)

 俊足の持ち主としても知られる西川選手は、打率や出塁率だけでなく、盗塁数の面でも優れた数字を残してきた。とりわけ、2017年は1カ月だけで9盗塁を記録し、打率と出塁率も高水準だった。また、2019年は年間19盗塁とレギュラー定着後では最少の数字に終わったが、この年も6月には月別最多となる6盗塁を記録している。打率.233だった2018年も高出塁率でチャンスメーカーとして機能しており、総じて6月を得意としていると言えそうだ。

浅村栄斗選手(埼玉西武→楽天)

 2016年と2017年は好相性とは言えない数字だったが、2018年以降は3シーズン連続でそれぞれ打率.300、出塁率.400を上回る数字を記録。10試合で15打点という驚異的なペースで打点を量産した今季はその中でも特に優れた打撃内容を見せていたが、2018年にも23試合で24打点と試合数を上回る打点を記録。直近2年間は、6月に入ってから大きく調子を上向かせているようだ。

鈴木大地選手(千葉ロッテ→楽天)

 5年間のうち打率.300を超えたシーズンが4度あり、そのうち3度は打率.325以上とかなり優秀な数字を記録。特筆すべきは打撃3部門の全てにおいて優れた成績を残した2019年で、同年には6月の月間MVPにも輝いている。唯一打率が.300を下回った2017年にも出塁率.367と選球眼の良さを発揮しており、6月という時期とはとりわけ相性の良い選手の一人といえそうだ。

ステフェン・ロメロ選手(オリックス→楽天)

 来日以来全てのシーズンで打率.280を上回り、それぞれ出場試合数を考えればハイペースに本塁打と打点を記録。これまでのキャリアにおいて故障に悩まされることも少なくなかったロメロ選手だが、6月には毎年安定した活躍を見せてきたと言える。そんな中でも、打率、出塁率ともに圧倒的な成績を残した今季の活躍ぶりは際立っており、まさに驚異的といえる打撃内容を見せていた。

外崎修汰選手(埼玉西武)

 レギュラー定着1年目の2017年に残した数字は芳しいものではなかったが、2018年以降は3年連続でハイレベルな数字を記録。2018年にはシーズン全体で放った本塁打数(18本)の3分の1を、わずか1カ月で放つという活躍ぶりを披露した。今季は本塁打と打点こそやや少なかったが、出塁率.450とほぼ2打席に1度は出塁するという優れた選球眼を発揮。打率の面でも安定した数字を残し、従来通りの相性の良さを発揮している。

荻野貴司選手(千葉ロッテ)

 荻野貴選手は長年にわたって故障に苦しめられてきたこともあり、2016年からの2年間に関してはさほど目立った数字は残していなかった。しかし、2018年以降に残した打率と出塁率は、今回取り上げた選手の中でもとりわけ優れたものとなっている。その出塁率の高さは盗塁数の多さにもつながっており、2020年には2試合に1回という圧巻のペースで盗塁を記録。チームの切り込み隊長として、申し分のない活躍を見せている。

中村奨吾選手(千葉ロッテ)

 中村選手も外崎選手や荻野貴選手と同様、2017年までの成績はそれほど優れたものとは言えなかった。だが、レギュラーに定着した2018年以降は、先述した浅村選手と同様に、3年連続で打率.300、出塁率.400を上回る数字を記録。シーズン打率.232と年間を通じて打撃不振にあえいだ2019年にも、6月には月別の成績で唯一打率.300を超える数字を記録しており、シーズンを選ばないその相性の良さは、まさに本物といえそうだ。

 続けて、先述した7名の選手に比べれば過去のシーズンにおける6月の成績はやや劣るものの、決して苦手の範疇に入るとも言い切れない5名の選手たちについて紹介していきたい。

茂木栄五郎選手(楽天)

 2016年から2018年の成績は可もなく不可もなくといった数字だが、2019年と2020年にはともに打率.315を超える好成績を記録。ただ、優れた数字を残したのが直近2年間だけということもあり、総合的には先述した7名の選手たちには一歩及ばないか。しかし、今後も同様の活躍を続けることができれば、来年以降は「6月を得意としている選手」の一人として挙げられることは間違いないであろう。

山川穂高選手(埼玉西武)

 山川選手は2017年の6月には一軍出場なしに終わっていたが、同年の後半戦からチームの主砲として台頭。打線の核となって迎えた2018年以降は3年続けて月間5本塁打を記録しており、絶好調とまでは言えないものの、この時期には毎年安定した働きを見せていた。ただ今季の5本塁打はわずか10試合で記録されたもの。2試合に1本という驚異的な量産ペースは、過去のシーズンとは一線を画する活躍ぶりであったことは確かだ。

井上晴哉選手(千葉ロッテ)

 井上選手は2017年までは春先に活躍を見せるもその後失速するというシーズンが多く、2016年と2017年にはともに6月の一軍出場が1試合もなかった。しかし、2018年には扁桃炎による離脱期間こそあったものの、打撃3部門全てで非常にハイレベルな数字を記録。続く2019年は一転して苦しんだが、今季は再び優れた数字を残した。今後の活躍次第では、6月をとりわけ得意とする選手の一人に数えられても決して不思議ではないだろう。

若月健矢選手(オリックス)

 2016年にはかなりの好成績を収めていたものの、2017年と2018年はともに打率、出塁率ともに1割台前半という大苦戦を強いられていた。しかし、2019年には年間打率(.178)を約.100ほど上回る月間打率を記録し、過去2年間とは違う姿を見せた。続く2020年にはさらに数字を伸ばし、6月の月間打率を4年ぶりに.300に乗せている。年によって打撃成績の差が激しいだけに、得意不得意を見極めるためには今後の活躍を見守る必要がありそうだ。

T-岡田選手(オリックス)

チームの主砲として活躍した2016年と2017年には、総じて及第点以上の成績を収めていた。だが、打率.225、13本塁打と成績を落とした2018年は、6月の成績も本塁打こそ4本放ったものの、打率、出塁率ともに今一つ。それを下回る年間成績だった2019年は、ついに一軍出場なしに終わっていた。月毎の相性というより年間成績に即した結果が残っているだけに、久々に快音を響かせた今季は、シーズン全体の成績にも期待したいところだ。


 最後に、従来は6月を苦手としている傾向にあった、2名の選手についても見ていきたい。

栗山巧選手(埼玉西武)

 通算安打の球団記録を持つなど、長きにわたってライオンズの主力として着実に実績を積み上げてきた栗山選手。しかし、直近5年間に関しては、6月を少なからず苦手としていたようだ。それでも2016年(年間打率.279)と2017年(同.252)はシーズン打率を上回る数字を残していたが、2018年と2019年は極度の不振といえる結果に。絶好調で6月を終えた今季の活躍が、経験豊富なベテランにとっても一つのきっかけとなるだろうか。

ブランドン・レアード選手(北海道日本ハム→千葉ロッテ)

 北海道日本ハム在籍時のレアード選手は、春先に打撃不振に苦しみながらも、シーズンが深まるにつれて調子を上げる傾向が強い打者だった。だが、本塁打王を獲得した2016年は素晴らしい打撃成績を収めながらも、そこから2年間の6月には低調な成績が続いていた。新天地で開幕から猛打を振るった2019年も同様の傾向となっており、今季の活躍が6月への適応か、それとも前年同様の「開幕ダッシュ」の意味合いが強いかは興味深いところだ。

元々6月を得意としていた選手たちは、今季の環境にも適応できていた

 このように、以前から6月を得意としている打者が7名、得意とは言い切れないものの決して苦手でもない打者が5名、近年は明確に6月を苦手としていた打者が2名と、各選手ごとにやや傾向が分かれる結果となった。

 ただ、先述した数字を見てもわかる通り、元々6月が得意だった打者のほうが、今回取り上げた選手の中の割合としては大きく上回っていると言えそうだ。これらの選手は、開幕直後という従来とは異なる状況にきっちりと対応できたことに加え、寒暖差が激しい日本において、季節の変わり目に近い6月の気候に適応する能力がより高いと言う傾向が強いのかもしれない。

 一方、栗山選手やレアード選手のように従来は6月を苦手としていた打者にとっては、開幕が延期されたことによる影響がより強かったと言えるか。このように、従来の同時期に残してきた成績を見ていくことで、各選手ごとに今季の6月に好調だった理由の一端が垣間見えるところも、興味深い点の一つといえそうだ。

変則的な日程で行われる今シーズン、今後も調子の波に変化は生じるか

 その一方で、2017年の6月に月間MVPを受賞した柳田悠岐選手や、同じく2018年6月の月間MVPに輝いた角中勝也選手といった、従来の年の6月に出色の活躍を見せた経験のある選手たちの中にも、今季の6月には芳しい成績を残せなかった面々も存在していた。

 シーズン開幕直後で疲れや故障が比較的少ない状態であるという、例年とは異なるポイントと、徐々に暑さが増してくる6月特有の気候という例年通りの事象が混在した2020年の6月は、やはり特殊な環境であったことは間違いないだろう。選手一人一人にとってはどちらの要素がより大きな影響を及ぼしていたのかを、今回のように過去の成績を確認してみることで、あらためてうかがい知ることができたのではなかろうか。

 変則的かつ過密な日程で行われる今季においては、今後も従来は夏場をやや苦手としていた選手が一転して好成績を収めたり、逆に中盤戦から調子を上げてくる傾向が強い選手が、夏場以降に苦しむといったケースも出てくるだろう。これまでとは趣の異なるシーズンにおいて、選手の調子の波にもどのような変化が生じてくるかを、今後も注視してみる価値は大いにあるはずだ。

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