「eBASEBALL プロリーグ」は、一般社団法人日本野球機構(以下、NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の共催という形で発足した「実況パワフルプロ野球」(以下、パワプロ)のプロ野球 eスポーツリーグだ。そのリーグのこれまでの軌跡とこの先の展望について、主催のNPB、KONAMIを代表して谷渕弘氏(KONAMI/eBASEBALL プロリーグ 統括プロデューサー)にインタビューを行った。
第3回は「“バーチャル” の開幕戦」。3月29日から4月5日にかけて行われた「プロ野球 “バーチャル”開幕戦 2020 powered by eBASEBALL」を取り上げる。
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【Vol.1】「eBASEBALL プロリーグ」誕生秘話
【Vol.2】1年目、2年目を終えて
新型コロナウイルス の影響で “リアル” 開幕戦が延期。ファンに野球を
2020年1月に読売ジャイアンツが日本一に輝き「eBASEBALL プロリーグ」は2年目のシーズンを終えた。「eBASEBALL プロリーグ」が終われば次は “リアル” のプロ野球が2月にキャンプインとシーズンの始まりを告げた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3月20日に予定されていたプロ野球の開幕は延期。先の見通しも立たない状況へと一変した。
そのなかで、3月24日に「プロ野球 “バーチャル”開幕戦 2020 powered by eBASEBALL」の開催が発表された。実際に予定されていた開幕戦と、その次のカードの試合を各球団を代表するプロプレイヤーがパワプロで対戦する。球場で行われるはずだった熱戦をゲームという仮想空間上で行う、特別企画だった。その開催の経緯を谷渕氏はこう語る。
「新型コロナウイルスの影響でプロ野球の開幕が延期されたなか、eスポーツであれば、開幕を待つプロ野球ファンの皆さまへ野球をお届けできるのではないかということでNPB、プロ野球12球団からお話をいただき、実施の検討に入りました。このような時期であり、何かしら世の中を明るくしたいという考えはみなさん同じで、すぐに合意に至りました」
プロ野球の開幕延期が決まったのが3月9日のこと。すなわち、企画の始まりは早くともそれ以降だ。「3月上旬の企画提案から下旬の配信まで、これまでにありえないぐらいのスピードで進みました」と振り返るように、下地はありながらも1カ月も経たないうちに開催するスピード感には驚かされる。
「関わっていただいた方々が、それぞれの役割を素早く実施していただいた賜物だと思います。時間のない中、監督やプロ野球選手などにも動画出演等でご協力いただき、大変感謝しております」
万全を期しての開催。その裏で今までになかった取り組みも
収録日は当然無観客、そして検温や定期的な消毒・換気など念入りな感染対策が取られた。
「予防の部分はどこまでやっても満点とは言えませんが、国や自治体の判断基準を参考に、その範囲内で実施可能な計画に落とし込んで、実施にこぎつけました。自分たちができることで少しでも世の中を明るくしたいという思いが、すべての関係者を動かしたと思います」
準備期間も短く、今までと同じように開催できない状況で、難しい面もあっただろう。しかし、谷渕氏は「このような状況だからこそ、『eBASEBALL プロリーグ』ではできなかった、新たなことにも取り組めたのも大きかった」と言う。それが「疑似生配信」と「平日の配信」だ。
「これまでは生配信でしたが、バーチャル開幕戦では新型コロナ対策のため、少人数、短時間での実施をするために初めて疑似生配信(事前に収録するが生のように配信)をしました。また、疑似生配信ということもあり、平日に配信(各2試合)を初めて行いました」
「eBASEBALL プロリーグ」はすべて生配信で行われていたが、今回は事前に収録したものをライブ動画として配信し、配信日数、イニング数も変更。eペナントレースでは土日に1日あたり1試合最大5イニング、3カード、9試合のところ、 1日あたり1試合最大9イニング、2カード、2試合という形に変え、全6日間に分けて配信された。谷渕氏は「結果として平日でも多くの方に視聴していただけることがわかりました」と手ごたえを口にした。
実際に当日は、動画を配信した3チャンネル「YouTube(NPBeスポーツ公式、KONAMI公式)OPENREC.tv」に多くのファンが訪れた。各チャンネル合計の配信視聴回数は約140万回、視聴者数(ユニークユーザー)は55人万以上 (4/23時点)。平日にも関わらずライブ配信は盛況を見せた。
試合では当時開発中の「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」の特別バージョンが使用され、新入団選手も “バーチャル” に登場。千葉ロッテマリーンズの注目ルーキー・佐々木朗希投手がまさかの開幕投手に起用されるなど、「eBASEBALL プロリーグ」ならではの場面も。現役選手らのコメント動画も届き、「eBASEBALL プロリーグ」としても、 “リアル” のプロ野球としても楽しめるものになった。
取材・文 丹羽海凪
◆次回は「“もう一つのプロ野球”のこれから」。「eBASEBALL プロリーグ」が目指すビジネス化への取り組みや今後の競技の広がりについてお送りします。
関連リンク
・「eBASEBALL プロリーグ」公式サイト
・NPB eスポーツ公式 YouTube チャンネル
・KONAMI 公式チャンネル
・「日本生命 “バーチャル”セ・パ交流戦 powered by eBASEBALL」公式サイト
・【プロ野球とeSports Vol.1】「eBASEBALL プロリーグ」誕生
・【プロ野球とeSports Vol.2】1年目、2年目を終えて
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