想いが勝利につながった。楽天が延長12回に勝ち越しを決め、開幕戦を白星で飾った。試合を決めたのは35歳のベテラン。延長12回2死1,2塁、藤田選手が益田選手から決勝の右前打。「自分が打たないと勝ちがないと思って打席に立ちました」。フラフラっと上がった打球は右翼手の前にポトリと落ちた。
藤田選手はこの日、ベンチスタート。成長著しい内田選手がオープン戦でアピールに成功し、開幕戦一塁手の座をつかむなど、若手の台頭があった。だがベテランは少ないチャンスをモノにする。逆転直後、8回裏の守備から出場。今季初打席の11回無死ではヘッドスライディングでの一塁への内野安打を放ち、2打数2安打と結果を残した。
試合は両エースが引っ張る投手戦。涌井投手が7回無失点とすれば、則本投手も7回1失点。千葉ロッテも逆転を許した後に楽天の守護神・松井投手を攻めて同点とするなど、ホームチームの意地を見せたが、最後は力尽きた。
1月4日、元監督で、球団副会長の星野仙一さんがこの世を去った。2013年にチームを日本一に導いた男の突然の死。「選手みんな、星野さんを亡くして悔しい思いでキャンプインをしました」。2016年夏に膵臓がんが発覚し、自身が病であることを隠し続けながら、球団首脳としてチーム作りに尽力。決して弱みを見せることなく、そしてほとんどの関係者に知られることなく、最後はひっそりと旅立った。3月19日、東京都内でお別れの会が開かれ、チーム関係者はほぼ全員が参加。遺影と向き合い、各々の気持ちを込めた。
振り返ってみれば、勝利を手繰り寄せたのも星野チルドレンだった。先発し150球の力投を見せた則本投手、8回に逆転打を放った銀次選手、そして藤田選手。則本投手はルーキーの2013年に開幕投手として抜擢されると、15勝を挙げて新人王を獲得。銀次選手は守備が不安視されていた2012年、「守備に目をつぶってでもアイツの打撃を使いたい」と星野監督が我慢して起用し続け、大きく飛躍。藤田選手は、出場機会に恵まれなかった横浜DeNAから2012年にトレードで加入。「トレードは常にウィンウィンでなきゃいかん。取ったからには、オレは使う」とこちらもすぐにレギュラーとして使われた。それぞれが2013年のリーグ優勝、日本一に大きく貢献。その後もチームをけん引している。
昨年の優勝チーム・福岡ソフトバンク、2位の埼玉西武が順当に勝利。3位だった楽天も苦しみながら勝ち、昨年のAクラスチームすべてが白星発進を飾った。「勝利でスタートできてよかったし、最後は良い報告ができるように戦いたいと思います」とヒーローインタビューで藤田選手は言った。衝撃と混乱から始まった2018年、それぞれの気持ちに整理をつけ、ひとつとなって頂点を目指す。
記事提供: