福岡ソフトバンクのハニーズのオーディションが7日、8日に福岡市内で開催
福岡ソフトバンクは7日、8日の2日間、福岡市内でオフィシャルダンス&パフォーマンスチーム「ハニーズ」の2020年度のメンバーオーディションを開催した。最終審査を終えて決まった2020年度の新メンバーは来年1月に正式に発表される。
試合前のオープニングパフォーマンスやラッキー7での「いざゆけ若鷹軍団」などでファンとスタジアムを盛り上げるだけでなく、ファンとの交流や地域イベントに参加して球団とファンを繋ぐ存在となっている「ハニーズ」。その役割は多岐に渡る。
球団の“チアチーム”はどう活動し、どういった日々を送っているのか。あまり表には出ない、その知られざる世界を元ハニーズメンバーで現在、福岡ソフトバンクの事業統括本部マーケティング本部営業戦略部エンターテインメント推進課の関まどかさんに語ってもらった。
関東、関西、そして福岡で3度のメンバーオーディションをへて決まった新メンバー。ダンスや特技、そして面接などが行われる審査は「1番大切なのはハニーズとして1年間活動していくにあたって、お客様と一緒に球場を盛り上げたいという気持ちだと思うので、そこの気持ちが強い子を見極めています」と厳しい目でメンバーを選考した。
華やかな世界に見える球団の“チアチーム”ではあるが、実際はかなり「大変です。過酷ですね」と見た目以上に厳しい世界だという。関さん自身も2012年に初めてハニーズのメンバーになった際に「全然違うなという印象を受けました」と、見た印象とは異なる世界に衝撃を受けたという。
合格者が決定すると、1月には新たな体制が始動する。「1月の上旬くらいから始動して練習が始まります。月曜から金曜までの週5回、1日だいたい5、6時間は練習します」。まずは徹底的に練習しダンスのスキルなどを鍛え上げる。週5日の練習は約2か月、オープン戦の始まるまでの2月いっぱい続く。その間でも前年度からの継続メンバーは週末に宮崎での春季キャンプに赴き、パフォーマンスやイベントなどを行う。
イベント出演や練習合わせ、年間で200日以上の活動も…
オープン戦が始まると、そこからは試合と練習の繰り返しになる。関さんによれば、平日のナイトゲーム時はメンバーは13時までにはスタジアムに入り、ミーティングや練習に励んでいる。
土日祝日のデーゲームなどでは試合開始2時間前に場外ステージでのパフォーマンスがあるため、試合開始の5時間前、例えば14時試合開始であれば9時頃にメンバーはスタジアムへ。そこから練習やミーティングを行い、場外ステージに臨むという。
試合前のオープニングパフォーマンスを披露すると、そこからも慌ただしい1日を送る。「試合が始まるとすぐ撮影会があります。3回終了時にはホットドックレースがあり、この他にもイニング間の演出に出ます。5回にはウーハーダンス、7回にはラッキー7のダンスを行い、9回にはスタンドで一緒にファンを盛り上げます。ホークスが勝てば、試合後には勝利の花火の時にダンスを披露させてもらいます。3人はこっち、3人はあっち、みたいな感じですが、基本的にメンバーはずっと動きっぱなしで休む時間はありません」と関さんは言う。
チームが遠征に出ている時でも休んでいるわけではない。「もちろんオフもありますが、そういう時こそ練習するか、地域のイベントに出演したりもします。球場外でもお仕事があったりして、チームが遠征に出ていても忙しいですね」。オープン戦からシーズン、そしてポストシーズンと年間90試合から100試合ほどのホームゲームがあり、それ以外にも練習やイベント出演などがある。多いメンバーでは年間200日以上は活動しており、関さんは「普通の会社員の方たちと働いている日数は同じくらいだと思います」と語る。
では、彼女たちは一体どう生計を立てているのか。「もちろん、ちゃんとお給料はあります」と関さん。オーディションの概要にも記載されているが、1試合の出演につき2万円が支給される。練習日にも手当は支給され、額はまちまちだが、イベント出演時にもギャラが支給される。
メンバー内でもオーディション、多いメンバーで月の収入は30万円を超えることも…
ただ、メンバー内でも給与の額には差が生じるという。それはメンバー内でも出演を争うオーディションが実施されるからだ。「ダンスやMC、ビジュアルなどハニーズにその時必要な子を選んで決めています。全試合出られる子もいれば、2回に1回しか出られない子、3回に1回しか出られない子もいます」。メンバーとなってからも、厳しい競争が待ち受けている。
メンバー内オーディションは年に3回。年3曲行われるオープニングパフォーマンスが新たに制作される毎に実施される。「曲によってレギュラーがいます。3曲ともレギュラーを取らないと、全試合に出ることはできなくなります。1曲目を取れても、2曲目取れるとは限りません」と関さん。レギュラーの人数は曲によって異なるが、決まったレギュラーが数人、残るメンバーの出演はローテ制になる。
では、全試合にレギュラーとして出演できると、どれくらいの収入になるのか。月によって変動はあるが、多くて1か月でホームゲームは10試合から12試合ほど。試合に出演して得られる“試合給”は20万円から24万円ほどになる。そこに練習日に支給される手当、イベント出演でのギャラを加えると「月で30万円前後になる子もいると思います。同世代の会社勤めの女性と同程度の収入にはなると思います」(関さん)。
球団の“チアチーム”と言うと、ボランティアだったり薄給で働いているようなイメージを持たれがちだが、こと福岡ソフトバンクの場合は違う。「実際には違いますね。エンターテインメントの部分もメディアさんに取り上げていただけるようになってきて、会社自体がハニーズを含めてエンターテインメントを盛り上げようという方向性になってきていました」。以前は現在よりも待遇も低かったようだが、「待遇面にも目を向けてくれるようになってきました。球団によって異なりますが、ホークスが待遇面は1番いいと思います」という。
「私もダンスを仕事にしたい、パフォーマンスでお客様に笑顔を届ける、そういうことを仕事にできたら幸せだなと思っていたけど、そういう仕事ってなかなかないんですね。こういう環境があるっていいな、と今でも思います。同じ思いを持っている人たちにハニーズという存在を知ってもらって、目指してもらえるような場所にしたいなと思っています。そういう人たちにちょっとでも興味を持ってもらえたら嬉しいですね」と関さん。今後、同じ道を目指す後輩達の夢を応援していた。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)
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