指名漏れからの逆襲。千葉ロッテドラ4・菅野剛士選手、運命の日に得ていた確かな自信

Full-Count 篠崎有理枝

2018.3.28(水) 12:56

千葉ロッテマリーンズ・菅野剛士選手(C)Full-Count
千葉ロッテマリーンズ・菅野剛士選手(C)Full-Count

明大時代に味わった指名漏れ、念願のプロ入りを引き寄せた千葉ロッテ・菅野選手

開幕スタメンに向けアピールを続けている千葉ロッテのドラフト4位ルーキー、菅野剛士外野手。2015年のドラフト会議では、明大の同級生、高山俊外野手が阪神1位、坂本誠志郎捕手が阪神2位、上原健太投手が北海道日本ハム1位指名を受けたが、唯一指名漏れを味わった。

「自分だけ指名がなかったのはショックだった」

当時の心境をそう振り返る。それでもすぐに気持ちを切り替え、中軸を任された社会人の日立製作所では入社1年目の都市対抗野球大会でチームの準優勝に貢献。新人賞に当たる若獅子賞、さらにこの年のベストナインも受賞した。

昨年行われたアジア選手権では、侍ジャパン社会人代表として優勝にも貢献。社会人野球の舞台で着実に経験を積んだ。

そして再び迎えた運命の日。菅野選手は2年前の出来事が脳裏をよぎることはなかったという。それは、確かな自信を得ていたからだ。

「1年目の都市対抗では準優勝でしたが、日立では初となる決勝に進みました。社会人の日本代表にも選ばれて、アジア選手権でも優勝しましたし、大学の時より結果を出していました。すべてが思い通りではないけれど、手応えはありました」

トーナメントの大会で1打席、1球の大切さを学び、国を背負う重圧の中でのプレーも経験。自身の長所でもあるバッティングだけでなく、守備や走塁にも力を入れて取り組み、2年の歳月を経て指名を勝ち取った。

同じ指名漏れの悔しさ味わった2選手、交錯する運命

千葉ロッテのルーキーには、菅野選手と同じく2015年のドラフトで涙をのんだ選手がいる。ドラフト2位指名を受け入団した藤岡裕大内野手だ。

亜大では1年春からリーグ戦に出場。6度のリーグ優勝に貢献し、上位指名が予想されていたものの、まさかの指名漏れ。その後、社会人のトヨタ自動車を経て、念願のプロ入りを果たした。

リーグは異なるが、菅野選手は藤岡裕選手に学生時代から注目していたという。

「『とにかく肩が強いな』という印象を持っていました。学生時代は話をすることはなかったですが、同級生ですし、下の学年の時から試合に出ていましたから、一目置いていました」

その藤岡裕選手が指名漏れしたことを「当時は自分のことで精いっぱいで、何も考えられなかった」と振り返る。しかし、やがて2人の運命は交錯していく。

ともに社会人に進み、1年目の都市対抗野球大会の決勝で対戦。昨年は侍ジャパン社会人代表にも揃って選出された。そして、ドラフトで千葉ロッテから指名を受けて入団。しかし、指名漏れの過去については2人の間で一度も話題に上ったことはないという。

「代表でもずっと一緒でしたが、ドラフトのことについて話をしたことはありません。自分は社会人に行って経験できたことがすごく大きい。お互い、指名漏れがマイナスだとは思っていないから、話をすることもないんだと思います」

菅野選手のサインボールに笑みを浮かべる子供たち

菅野選手は悔しい経験をしたからこそ、プロの舞台でプレーできる喜びを人一倍感じ、声援を送ってくれるファンに対しても感謝の言葉を口にする。

「ファンの方の応援が自分の力になっています。チームが勝てば、ファンの方も喜んでくれる。1試合でも多くチームの勝利に貢献したい。そのために今、準備しています」

ある日のオープン戦の終了後、人もまばらになったスタジアムに、サインをもらうためずっと選手を待っている小学生の姿があった。すでに日は沈み、気温もかなり下がっていたが、子供たちは菅野選手からボールにサインをもらったようで、嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

その時を振り返り、「寒い中待ってたんで」と菅野選手も笑みをこぼした。悔しさをバネに成長を遂げた24歳は、2年間の経験が無駄ではなかったことを証明するため、ファンの声援を力に変えて、プロの世界を生き抜いていく。

記事提供:

Full-Count 篠崎有理枝

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