
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
記者生活は20年を超える。プロ野球、サッカーなど勝負の世界からお裾分けをいただき、刺激ある毎日を過ごしてきた。最近で心に残っているのは2023年9月の出来事だ。担当しているオリックスが3連覇し、当時エースの山本由伸投手(現ドジャース)に次ぐ存在だった宮城大弥投手を取材。彼はとにかく堂々と、すべての質問に答えていった。
こちらが慎重に振ったのは、決して裕福ではなかった少年時代の話。掘り返されたくなかったはずだが、明るく振る舞った。電気、水道、ガスのどれかが止まった状態で、日常生活に不便があったこと。学校給食でおなかをいっぱいにし、身長を伸ばすために女子生徒から牛乳をもらっていたこと。想像もできないような苦労話を聞いた。
4歳で野球を始めた。困難な状況でプロ野球選手になる夢をつかんだ。「経済的な問題で、夢を諦めてほしくない」と22年に一般社団法人「宮城大弥基金」を設立。少年少女のスポーツ活動を支援するのも自身の経験があるからだ。順調にキャリアを積み、推定年俸は2億円に到達。超一流の仲間入りをしても、謙虚、堅実に歩みを進めている。
「多少、欲しいものは買うようにはなりましたけど…」。靴下は消耗品とし、ネット通販から10足単位で安くまとめ買い。先日は鶏のむね肉を求めて総合スーパーに出かけ、そこでまた靴下を買い足したらしい。左腕一本で成功したい野望を持ちながら、金銭感覚もしっかりしている。23年のWBCでは世界一の記念として、栗山英樹日本代表監督からオシャレな高級スニーカーをプレゼントされた。ちなみに、履いたのは2回だけ。物の価値が分かり、常に感謝を忘れていないからだろう。(オリックス担当・長田 亨)
◆長田 亨(ながた・とおる) 2004年入社 プロ野球、サッカーを担当。アンチエイジングにハマっています。
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