【MLB】先発5人制定着は1976年ドジャース エンゼルスの6人制採用に見る“奇縁”

Full-Count 樋口浩一

2018.3.27(火) 15:02

エンゼルスのソーシア監督と大谷翔平選手が先発6人制でメジャーに新しい息吹を吹き込むのか
エンゼルスのソーシア監督と大谷翔平選手が先発6人制でメジャーに新しい息吹を吹き込むのか

先発5人制、FA制度、トミー・ジョン手術…後世を変えた1976年

エンゼルスが今季、先発投手6人制を打ち出した。大谷翔平選手の投打二刀流のための方策ではあるが、マイク・ソーシア監督は「他の投手たちにとっても、登板間隔に余裕ができるのはいいことだと思う」と話していた。実際に可能かどうか分からないが、実現するとメジャーリーグ史の転換点になるかもしれない。

現在メジャーではどの球団も基本的に先発5人制を採っている。そもそもいつ頃から始まったのだろうか。古い時代にも期間限定ではあったようだが、今につながる流れが確立したのは1970年代半ば、もっと細かく言うと1976年のドジャースだという。

この年は34試合に先発したドン・サットン投手、32試合に先発したダグ・ラウ投手、33試合に先発したバート・フートン投手、31試合に先発したトミー・ジョン投手、26試合に先発したリック・ローデン投手の5人で回している。前年の1975年にはアンディ・メッサースミス投手が40試合に先発し、38試合のラウ投手、35試合のサットン投手、30試合のフートン投手の4人で先発陣を形成していた。エースのメッサースミス投手を失って5人制にシフトしたのだった。

ちなみに、1975年のメッサースミス投手はメジャーの歴史上、大きな存在である。この年、メッサースミス投手は球団と揉め、契約に至らないままシーズンを過ごした。閉幕後、メッサースミス投手は「1年間、未契約でプレーしたのだから、もはや球団に保留権はない。私はフリーだ」と宣言した。裁定の結果、メッサースミス投手の言い分が認められ、ブレーブスに移籍していった。この一件が、FA(フリーエージェント)制度誕生につながることになる。

近年最も印象に残っている先発陣は…

1976年のドジャース先発陣にはもう1つ、後の野球界に大きな影響を与えることがあった。ジョン投手の復帰である。肘の靱帯修復手術を受けて前年1975年のシーズンを棒に振り、この1976年に鮮やかに復活したのだった。トミー・ジョン手術に、その名を残したのである。

先発5人制はFA制度とトミー・ジョン手術、メジャーの歴史を変える大きな出来事と関連があるのだった。ドジャースといえばメジャーで初めて黒人選手を採用したり、西海岸に本拠地を移転したりと革新的な新機軸を打ち出してきた球団であるが、1976年のドジャースも、後のトレンドを作っていたわけだ。

さて、5人制だと先発の間隔は最短中4日。投手が投げると肘付近の毛細血管が切れ、修復するには4日ほどかかるという。医学的には理に叶っているということになる。

先発5人制はすっかり常識になった。近年最も印象に残っている先発陣は、2012年のジャイアンツである。ティム・リンスカム投手とマット・ケイン投手、マディソン・バムガーナー投手、ライアン・ボーグルソン投手、バリー・ジト投手の5人で162試合中160試合に先発した。他に先発したのはエリック・ハッカー投手とユスメイロ・ペティット投手が1試合ずつだけ。まさに5人のローテーションであった。安定した投手力で、この年は2年ぶりのワールドシリーズ制覇を遂げている。

先発5人制がいいか、6人制がいいか…尽きることない賛否の声

ただ先発投手たちに故障が相次ぐと、先発6人制が話題に上るようになる。ただ、6人制には反対意見もある。メジャー12年間で30試合以上に先発したことが9年もあり、通算147勝を挙げているレンジャーズのコール・ハメルズ投手は地元メディアに「ずっとやってきた先発5人制がいい」と発言していたという。

2015年いっぱいで引退するまでホワイトソックスなどでメジャー通算214勝を挙げ、2年目から引退するまで15年連続で30試合以上に先発したマーク・バーリー氏に話を聞いたことがある。故障なく毎年中4試合で投げてきた彼は「登板間隔が中5試合になったら体は楽かもしれない。だが、自分はずっと中4試合で投げてきたから、それが心地いいな」と言っていた。

ファンのために、できる限りエースの登板機会が多い方がいいだろうから、5人制の方がいいとの意見もある。また、シーズン途中に6人制のチームから5人制のチームにトレードされたら、適応するのに時間がかかるのではないかとの懸念も出てくる。

さてそんな中、エンゼルスはメジャー史に新たなページを加えることになるのだろうか? 何の気なしに1976年のドジャースのドラフト指名を見てみた。1巡目指名にペンシルベニア州出身の捕手、マイク・ソーシアという名があった。現在のエンゼルスの監督である。奇縁と言うべきか。1976年のドジャースに関係のある人物が、先発6人制でメジャーに新しい息吹を吹き込むのか。興味深いシーズンになるかもしれない。

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Full-Count 樋口浩一

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