29年ぶりとなる米国キャンプを、2月1日よりアリゾナ州ピオリアで開催する北海道日本ハムファイターズが、球界初の画期的な取組を行っている。現地で選手たちが行っている様子、例えば打撃練習や選手の対談などの模様を、球団職員が360度カメラで撮影して動画配信する取組である。
360度カメラとは、360度全方位が見えるカメラのことで、通常のカメラとは異なり前後左右上下の全てのアングルで動画を楽しむことができる。
そのことにより、動画を視聴するファンは、あたかもその場で練習の様子を見ている気分になることができるのだ。ファイターズの場合は、日本から遠く離れた米国アリゾナでキャンプをしているだけに、ファン心理としてはできるだけ多くの様子を知りたいと考えるであろう。球団側としては、そのようなニーズを察知して、できるだけ様々な方法で、現地での様子をファンへ伝えようとしている取組の一環である。
北海道日本ハムファイターズ事業統括本部マネージャーの小崎将史氏は、今回の取組への想いをこう語る。「ファイターズというチームを感じてもらうために、最新の技術や面白いと思ったツールの活用に挑戦し、あらゆる角度からファイターズを感じてもらいたいと考えています。たとえプロ野球やファイターズに触れたことがない人でも、新たな体験からファイターズに興味を持つ可能性があると考えています。その中の1つが今回の360度カメラで撮影した動画です。そして、それらをソーシャルメディアなどの様々な手法で伝え、ファンが選んで情報収集できるようにしたいと思います」
ではこのような動画撮影技術をスポーツ観戦に積極的に取り入れている米国では、360度カメラを活用した取組はどのように行われているのだろうか。既に数年前よりスポーツ中継にVR(ヴァーチャルリアリティ、仮想現実)を活用した取組が開始されており、その中の1つとして360度カメラも採用されている。実際にNBAやNFLではあたかも自分がコートサイドで観ているような体験ができる映像を見ることができる。また複数の競技において、VRを活用したスポーツ中継の取組が今まで以上に広がっていく動きがあるようだ。
従来のテレビでのスポーツ観戦は、テレビから流れてきた映像を、ファンが受動的に観て楽しむモデルだった。一方で、今回の360度カメラのように、ファン自らが好きなアングルを選択して楽しむことができ、あたかもその場にいるような体験ができることは、インターネットならではのスポーツ観戦であり、ファンに対して新しい体験価値を生んでいると言える。
今後のビジョンについて小崎氏はこのように語っている。
「今後も我々は挑戦をし続けたいです。現在球団として個別にコンテンツ展開している、映像、試合中継、そしてスタジアム演出を『チーム』として一元化し、ファイターズのエンターテインメントに関わる全ての人がアイディアを出し合い、ファイターズブランドを広めていくことができる環境作りをしたいと考えています」
日本にいながらも、遠く離れた米国アリゾナキャンプにいるような体験ができる。今後もファイターズの取組から目を離すことはできないだろう。
記事提供: