9月27日、札幌ドームで行われた北海道日本ハムとオリックスの一戦。今季限りでの引退を表明している田中賢介選手が「2番・指名打者」でスタメン出場、最終回は慣れ親しんだ二塁の守備に就き、最後の雄姿をファンに届けた。試合終了後には引退セレモニーが行われ、感謝の気持ちを述べた。
以下、引退セレモニーでの田中賢選手のコメント全文。
「私にとってファイターズは家族です。
その家族には、移転当初ガラガラだったこの札幌ドームを満員にして、その中で選手にプレーしてもらいたいと、寝る間も惜しんで努力し、今日も私の最後を良い形で送り出しであげたいと、心からそう思ってくれる本当に優しい球団職員の方がいます。また、いつも裏方に徹し、チームを支え続けてくれるチームスタッフがいます。
雨の日も風の日も、雪の日も、どんな時も、いつも応援してくれるファイターズ応援団。そして全国のファイターズファンの皆さん。その皆の期待に応えようとともに頑張ってきた、ここにいる仲間たち。
他にも言い切れないほどの感謝したい人たちがたくさんいます。そのすべての人たちが僕にとっては家族です。その家族とともに過ごせた20年間は最高に幸せな時間でした。
また、僕を生み、育ててくれた両親、小学校2年生から野球を始め31年間、2人はずっと僕の1番のファンでいてくれましたね。
僕が壁にぶち当たり苦しくなった時、父は、“賢介逃げるな正直に真っ直ぐ生きろ。こつこつ努力すれば必ず乗り越えられる”そうメッセージをくれました。母はそっと寄り添い、あえて何も聞かず、何も言わず、いつも笑顔で見守ってくれました。
そんな2人が居たからこそ、ここまでやってこれたと思っています。自分も親となり、改めて2人の偉大さに気付かされる日々です。2人は私たちの目標です。どうかこれからも2人仲良く元気でいてください。
そして妻の千芳。結婚してすぐにアメリカに連れて行ってしまい、僕の何倍も辛い日々だったと思います。だけど、そんな姿は微塵も見せず、気丈に振る舞う姿に何度助けられたことか分かりません。
今は、子どもたちの子育てに大変だと思いますが、あなたのおかげで子どもたちは大きく元気に育っています。今日でプロ野球選手としての田中賢介は終わりますが、なんせこんな性格なので、これからも自分が信じる道に向かってどんどん突っ走っていくと思います。どうか、これからもよろしくお願いします。
そして息子たち。また、北海道、全国の子どもたち。家族はどんな時も君たちの味方です。いつも暖かく見守っています。
だから失敗を恐れずどんどんチャレンジしてほしい。私もたくさん失敗をしてきました。そしてこれからもたくさん失敗すると思います。アメリカで上手くいかず帰ってきた僕にファイターズという家族は暖かく迎えてくれました。あの時のおかえりという声援は本当にうれしかったです。
これまでたくさんの声援、そしてたくさんの愛を頂きました。これからは私が恩返しをする番だと思っています。北海道、そしてファイターズの少しでも力になれるように、これからもここ北海道でみんなと一緒に生きていきます。
最後になりますが、最後の打席の賢介コール。色んな思い出がよみがえって涙が止まりませんでした。みんなありがとう。心から感謝しています。20年間ありがとうございました」
1999年ドラフト2位で北海道日本ハムに入団。2006年から5年連続でゴールデングラブ賞を受賞、ベストナインにも6度選出された名手が、20年のプロ生活に終止符を打った。
NPB通算:1619試合、1499安打、48本塁打、486打点、打率.282
文・東海林諒平
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