3回2死で打球が右膝付近を直撃するも、その後も投げ続けて6回3失点と力投
■福岡ソフトバンク 4-3 オリックス(19日・ヤフオクドーム)
“エース”としての意地が滲んだ。右足に打球が直撃し痛みを抱えながらも役割を果たした。福岡ソフトバンクの千賀滉大投手が19日、本拠地ヤフオクドームで行われたオリックス戦に先発して6回3失点。執念の力投で同点のままリリーフ陣にバトンを繋ぎ、負けられない一戦での勝利をチームに呼び込んだ。
アクシデントは3回2死に起きた。そこまでオリックス打線を無安打に抑え、快調にアウトを積み重ねていたが、それが暗転した。西村が放った痛烈なゴロが右膝付近を直撃。ボールは大きく三塁側に跳ね、千賀は痛みに顔をゆがめた。治療のために一度ベンチへ下がる。騒めくスタンド。しばらくして治療を終えて再び姿を見せた千賀は足をやや引きずりながら、マウンドへ戻った。そのまま続投。宗を空振り三振に切って取り、この回を無失点で切り抜けた。
だが、影響はあった。「足に力が入らなかった」。試合後、千賀はこう明かした。4回。先頭の吉田正に左前安打を浴びると、1死一塁から小島、中川、モヤ、代打の福田とまさかの4連続四球。2つが押し出しとなり、2点を許した。「1本足で立てなかった」。この間、千賀はどうにかして怪我の影響が少なくなるように、フォームを模索していた。若月を右飛、西村を空振り三振に仕留めて、窮地を脱した。そして、1つのアイデアに行き着いた。
それがクイックだった。足を大きく上げずに投げることで、力が入らなくなった右足にかかる負担を減らした。5回は無失点。6回にモヤに同点のソロ本塁打を被弾したものの、同点で踏みとどまった。6回5安打8奪三振5四死球で3失点。「試合を壊さないでよかった。壊さず6回までいけたことは良かったと思います」。足は痛むはずなのに、試合後、千賀はそのことに安堵していた。
自らマウンドを降りるつもりはなかった。首脳陣に問われても「いきます」と答えた。志願の6回までの続投だった。「中継ぎの人たちが最近ずっと投げていた。甲斐野もメンタルが弱っていなくなっちゃったので、1イニングでも長くと思っていた」。逆転Vへ負けられない戦いが続く。ここ数試合、リリーフ陣には負担がかかっていた。体調不良で欠場となったルーキーの甲斐野を全力で“イジり”つつ、チームの大黒柱としての意地を滲ませた。
結果的にはアクシデントにより、6回で降板にはなった。それでも、負傷をおして投げ続けたエースの“魂”はチームに伝わったはず。そして、それがこの日の勝利に繋がった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)
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