局面を問わず、飄々とマウンドに立ち続けるタフネス左腕の献身は、とどまるところを知らないようだ。
埼玉西武の武隈祥太投手は現在、これまで主戦場としてきた中継ぎだけでなく、先発としての調整も行っている。抜群の制球力と多彩な変化球を武器に、幅広い起用に応えてきた左腕。実際にまっさらなマウンドに立つ機会がどれほどあるのか分からないが、この経験は確実に、自身の汎用性をさらに高めるものとなるだろう。
中継ぎとして実績があっても「投げてくれと言われたところで投げます」
2007年の高校生ドラフト4巡目で指名された武隈投手は、7年目の2014年に頭角を現すと、翌年から3年連続で50試合以上に登板するブルペン陣の柱に。昨季も58試合に登板して5勝2敗13ホールド、防御率3.14という好成績を残しており、中継ぎ左腕としてフル回転を続けてきた。
実は2007年、埼玉西武は高校生ドラフトにおける上位2選手の指名権を持っていなかった。つまり事実上高校生の最高位となる4巡目で、当時決して全国区の選手ではなかった武隈投手を指名していることになる。
現在の活躍ぶりを思えば、埼玉西武スカウト陣の眼力はさすがといったところだろう。
そんな武隈投手は今季、先発としての登板を視野に入れて調整を行っている。あくまでも、先発が不足したときなどの「有事の備え」だというが、2月27日の韓国・斗山ベアーズとの練習試合では、4回を無失点に抑える好投を見せた。
辻監督は「どこまでコースをきっちり投げられたかわからないけどまずまずでしょ」と評価しつつ、起用法については明言せず。武隈投手自身は「先発でも中継ぎでも、投げてくれと言われたところで投げます」と話していた。
献身的な左腕の存在が、今年も埼玉西武には欠かせない
近年のフル回転から、中継ぎのスペシャリストというイメージが強い武隈投手だが、2012年には先発として福岡ソフトバンク戦に登板し、8回1死まで無安打に抑えるという経験も持っている。先発としての適性を示してくれる可能性は十二分にあるだろう。
野田投手や髙橋朋投手など、埼玉西武の中継ぎ左腕は質、量ともに充実し始めている。ただ武隈投手がさらに汎用性を高められるようであれば、チームとしてもより投手起用の柔軟性が増すことは間違いない。
これまでと同じように、あるいはこれまでとは違う立場で。武隈投手の今シーズンがどのようなものになるかはまだ分からない。確かなのは、堅実にチームに貢献してきたその腕が、今季の埼玉西武にも決して欠かすことができないものだということだ。
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