お正月明け早々の今年1月14日、台北で行われた合同記者会見にて、パ・リーグ6球団とパシフィックリーグマーケティング(PLM)が、FOXスポーツ台湾と2016年からの3年にわたる放映権契約を締結したことを発表した。昨年までは台湾でパ・リーグの試合は1週間あたり7試合程度の放送だったものが、今年から1週間あたり10試合以上放送されることになる。北海道日本ハム・陽岱鋼選手を筆頭に台湾出身選手たちの活躍もあり、彼らの母国・台湾でも年々、日本プロ野球への人気・注目度は高まっている。
日本球界で活躍する台湾人選手の動向を中心に、台湾各メディアの記者も日本プロ野球をインターネットや現地取材などで逐一チェックしている。2月13・14日に石垣島で行われた千葉ロッテ対Lamigoモンキーズの親善試合でも、台湾から多くの記者が駆け付け、その動向を記事、写真、動画などで伝えていた。来日したLamigoの選手、そして台湾出身である千葉ロッテのチェン・グァンユウ投手への取材だけでなく、日本人選手への取材も行われたのだが、その質問内容には球団スタッフも「よく勉強している」と舌を巻いていたほどだった。
そんな彼ら彼女らに、今年のパ・リーグで注目している選手を台湾人選手、日本人選手双方で挙げてもらった。一記者、そして同時に海外在住ながらも一日本プロ野球ファンでもある彼ら彼女の目線から、日本プロ野球を見てみよう。
台湾の記者注目の台湾人選手は?
まずは注目の台湾人選手から。「台湾の英雄」とされる陽岱鋼選手が多数占める…と思いきや、様相は異なるようだ。
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<中国時報 / 呉政紘記者>
チェン投手です。日本語も「チェンチェン大丈夫」。すっかりチームの輪に溶け込んでいて、結婚しましたし、大学も卒業しました。チェン投手の球は昨年よりも速くなっており、今の時期でもう143キロが出ていて、制球力も進化しました。得意の変化球は今年もチェンジアップ。かなり強化されたので、左打者にとっても要注意だと思います。チェン選手は昨年対外国人選手の成績が苦しかったのですが、もしこの課題を克服したのならば、大きな飛躍が期待できると思います。
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<蘋果日報 / 王翊亘記者>
昨年の「プレミア12」でも好投した郭俊麟投手です。昨年は「プロ」として初めての年でしたので、環境に慣れた今年は、ブレイクスルーの年になるのではないかと思います。本当の意味で彼が「プロ」の選手になることを期待しています。
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<自由時報 / 林宥辰記者>
チェン投手です。彼は昨年、NPBのレベルにあることを証明することができました。しかし外国人選手としては、さらなる挑戦が必要ではないかと思います。一軍の外国人選手枠を争う必要がありますが、もしその競争をクリアできれば、よりよい選手になれると思います。
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<東森新聞雲 / 王真魚記者>
チェン投手です。とても努力し、簡単にあきらめない選手です。2011年に台湾からNPB挑戦を目指し、昨年2015年にようやく真価を見せるチャンスを得ることができました。彼は本当の「ファイター」であり、野球に対する態度・取り組みは本当に尊敬しています。今年の春季キャンプでコーチからの信頼も得られたので、今年は先発ローテーション入りのチャンスが大きくなるのではないでしょうか。チェン投手がよりよいシーズンを送れることを楽しみにしています。
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さらなる飛躍を目指すチェン投手への期待が表れる結果となった。そしてプロ2年目を迎え、こちらも飛躍を狙う郭俊麟投手への期待も含まれていた。すでに日本プロ野球の中で地位を確立している陽岱鋼選手よりも、さらなる成長が期待される選手たちへの票が集まった形と言えるだろう。
もちろん、陽岱鋼選手も不本意な結果となった昨年からの復活を目指しており、MLBクリーブランド・インディアンスからはC.C.リー投手も埼玉西武へ加入した。その埼玉西武には新人選手として呉念庭選手が入団し、育成契約ながら楽天にもソン・チャーホウ投手が加入。プロ10年目を迎える福岡ソフトバンク・李杜軒選手も育成契約から支配下登録への返り咲きを狙うなど、パ・リーグに在籍する7人の台湾出身選手それぞれに、追いたくなるストーリーがある。台湾のファン、メディアにとって、今年のパ・リーグは今まで以上に、さまざまな視点から楽しめることを意味していると言えるだろう。母国からの熱い期待に、選手たちが応えられるか注目だ。
思わぬ選手も… 注目の日本人選手は?
続いて日本人選手。やはり海の向こうでの注目度の高さを見せつける結果となったが、その一方で思わぬ選手たちの名前も挙がった。
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<中国時報 / 呉政紘記者>
大谷翔平選手(北海道日本ハム)です。また「二刀流」で成功できるのでしょうか?大谷選手は昨年、投手を中心に出場しましたが、打撃の方があまり良くありませんでした。今年、大谷選手の打撃が、再びよくなるのかが一番楽しみです。
台湾の野球ファンも大谷選手のことをよく知っていて、その豪速球にも注目しています。果たして大谷選手が日本プロ野球の最高球速を記録できるのかということも楽しみです。今年北海道日本ハムはアメリカでキャンプを行ったので、そこで積んだ経験を力にして、さらなる進化見てほしいですね。
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<蘋果日報 / 王翊亘記者>
松坂大輔投手(福岡ソフトバンク)です。私は昔から松坂投手のことが好きです。どんなに年齢を重ねて、肩とヒジの手術をしても、以前見せていたような彼の真価を見せ続けてほしいと思っています。私は日本には多くのいい投手がいることは知っていますが、それでも私の中では「松坂大輔」は特別な選手です。
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<自由時報 / 林宥辰記者>
石川歩投手(千葉ロッテ)ですね。石川投手はチェン投手と仲が良く、少しだけ年上です。石垣島で行われたインタビューでも、2人の掛け合いはとても面白いものでした。石川投手は良い投手ですが、さらによい投手になれると思っています。
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<東森新聞雲 / 王真魚記者>
大谷翔平選手です。大谷選手はまだ若いですが、すでにNPBのスーパースターですね。昨年11月の「プレミア12」でも韓国を相手に好投し、世界に対してハイレベルに試合を「支配」できることを証明しました。
もし大谷選手がMLBに行っても、エースになれるのではないでしょうか。海外FA権取得まであと6年あり、ポスティングで移籍をする場合でもチームにお願いする必要がありますが…。投手としてだけでなく、野手としてもよい選手だと思います。
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先日のアリゾナキャンプでも改めてアメリカでの注目の高さを見せつけた大谷選手が、台湾でもやはり注目を集めていることが分かった。もはや国境を超えた日本野球のアイコンとなりつつあるのかもしれない。
そして、ケガからの復活を目指す松坂投手と、チェン投手と仲の良い石川投手の名前も挙がった。アマチュア時代から輝かしい実績を残してきた投手と、これからチーム、そしてリーグをけん引することが期待される投手。台湾からの注目は、決して大谷選手のようなごくごく一部の選手だけではないことが分かる。
このように、台湾からもますますの注目を集めているパ・リーグ。日本のファンはもちろんだが、国境を越えて注目をしてくれるファン、メディアをも沸かせるような熱狂を、これからも生み出していきたいところだ。
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