野手はブラッシュ、投手は岸と楽天勢の働き光る…セイバー目線で選ぶ6月月間MVP【パ編】

Full-Count

2019.7.9(火) 11:28

楽天・岸孝之※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
楽天・岸孝之※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

野手の候補はブラッシュ、オリックス中川、千葉ロッテ鈴木の3人か

 今年も58勝46敗4分と交流戦でセ・リーグに勝ち越したパ・リーグ。交流戦での成績が中心となる6月のパ・リーグ順位表はこちらです。

福岡ソフトバンク 14勝7敗 打率.232 OPS.716 本塁打39 防御率3.39
オリックス 12勝9敗 打率.255 OPS.697 本塁打13 防御率3.92
楽天 12勝9敗 打率.252 OPS.705 本塁打17 防御率3.76
埼玉西武 12勝11敗 打率.274 OPS.765 本塁打23 防御率4.16
千葉ロッテ 11勝10敗 打率.268 OPS.796 本塁打29 防御率4.58
北海道日本ハム 9勝12敗 打率.253 OPS.708 本塁打19 防御率4.39

 交流戦6カード全てで負け越しがなかった福岡ソフトバンクが交流戦優勝を飾り、月間首位となりました。5月に4.25と悪化したチーム防御率は3.39に回復。特に救援防御率が5月の4.02から2.39と良化しました。ただ先発のQS率が5月の48%から35%と悪化。ここが回復するようなことになれば、福岡ソフトバンクの独走に拍車がかかりそうです。

 4月、5月と低迷していたオリックスでしたが、交流戦で2位に入る健闘を見せました。長打力のなさは相変わらずですが、投手陣の踏ん張りで接戦をものにしてきました。7月7日時点で5位まで2.5ゲーム差ですし、中日からトレードで長打が期待できるモヤを獲得しました。移籍初戦初打席でいきなりホームランを放つなど存在感を見せましたが、今後のオリックスの攻撃陣に良い影響をもたらすことができるでしょうか。

 それでは、セイバーメトリクスの指標による6月のパ・リーグ月間MVPを選出していきましょう。

○6月月間MVP パ・リーグ打者部門
ブラッシュ(楽天)
OPS1.126 wOBA0.478 RC27 11.87 出塁率0.481(全てリーグ1位)

公式の月間MVPの有力候補はこの3人です。

○ブラッシュ 
打率.355 22安打 本塁打4 打点16 得点圏打率.438 四球14 三振22
○中川圭太
打率.360 32安打 本塁打0 打点12 得点圏打率.462 四球4 三振9
○鈴木大地
打率.344 32安打 本塁打7 打点21 得点圏打率.333 四球9 三振13

 交流戦の首位打者はルーキーの中川圭太となりました。中川は4月20日に1軍に昇格し、24日の福岡ソフトバンク戦で「7番・三塁」として先発出場し、3打数2安打と結果を残します。その後、三塁手や左翼手、一塁手など内外野どこでもこなすユーティリティ性を発揮し、貧打で苦しんだオリックス打撃陣の一助となります。交流戦では特に広島に対し打率.571、OPS1.314、巨人に対し打率.455、OPS1.045と活躍しました。なお、ルーキーの交流戦首位打者は初の快挙ですが、交流戦本塁打0での首位打者獲得も初の記録です。
 
 鈴木大地は5月6日より2番打者として起用されて以降、打率.323、OPS.944、本塁打10と優秀な成績を残しています。交流戦で印象深いのは6月16日の中日戦でしょう。0-5で迎えた7回裏に反撃の狼煙となる本塁打を放ち、2-7の9回裏、先頭打者としてこの日2本目の本塁打。さらには打者一巡で1点差まで詰め寄り、2死満塁でこの回2度目のバッターボックスに入り、右翼へのサヨナラ適時打と大逆転劇に大きな貢献をしました。公式の6月月間MVPの最有力候補となりそうです。

 では、セイバーメトリクスの指標による評価を見てみましょう。

○ブラッシュ 
OPS1.126 出塁率0.481 長打率0.805 wOBA0.645 RC27 11.87
○中川圭太
OPS.825 出塁率0.387 長打率0.438 wOBA0.825 RC27 6.06
○鈴木大地
OPS1.054 出塁率0.398 長打率0.656 wOBA0.448 RC27 9.68

 6月9日より楽天の4番を任されたブラッシュ。4番として打率.321、OPS.957と貢献しています。また6月の打撃指標もリーグにおいて最も優秀ということで、月間MVPに相応しいと言えるでしょう。

投手は楽天の岸&松井、福岡ソフトバンクの大竹&千賀が候補

○6月月間MVP パ・リーグ投手部門
 
岸孝之(東北楽天ゴールデンイーグルス)
登板4 2勝2敗
FIP2.50 QS率100% RSAA4.04(リーグ1位)
防御率3.12 WHIP1.08 奪三振30 奪三振率10.38

有力候補の成績を振り返ってみましょう。

○大竹耕太郎
登板4 3勝0敗 防御率3.95 奪三振17 奪三振率5.60 被打率.229
○千賀滉大
登板4 3勝1敗 防御率2.88 奪三振31 奪三振率11.16 被打率.217
○岸孝之
登板4 2勝2敗 防御率3.12 奪三振30 奪三振率10.38 被打率.224
○松井裕樹
登板13 2敗10S 防御率2.77 奪三振21 奪三振率14.54 被打率.093

 3、4月が援護率0.56、5月が3.82と援護に恵まれなかった大竹耕太郎ですが、6月は5.59と援護に恵まれたこともあり無傷の3勝をあげました。公式の月間MVPの有力候補となるでしょう。

 それでは、セイバーメトリクスによる評価をみてみましょう。

○大竹耕太郎
FIP2.83 WHIP1.02 QS率25% 与四球6 K/BB2.83 RSAA-1.95
○千賀滉大
FIP2.38 WHIP1.32 QS率75% 与四球13 K/BB2.38 RSAA0.07
岸孝之
FIP2.50 WHIP1.08 QS率100% 与四球6 K/BB5.00 RSAA4.04
松井裕樹
FIP2.27 WHIP0.77 与四球6 K/BB3.50 RSAA2.35

被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、6回以上で自責点3以内に抑えた割合を示すQS率において岸がリーグ1位となりました。大竹は奪三振が少なく、被本塁打が4と多いためFIPが伸びませんでした。またQSも1回のみとセイバーメトリクスでの評価は高くありません。千賀は奪三振は多いものの、与四球が13と多かったため、こちらもFIPの値に影響しています。

さらにRSAA(Runs Saved Above Average)という平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標

RSAA=(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9

による評価でも岸はリーグ1位の成績を残しています。よってパ・リーグの月間MVPとして岸が相応しいのではないでしょうか。

 なお、奪三振率の高い岸、千賀、松井裕樹の空振り三振割合を比較すると、

岸孝之 60%
千賀滉大 83.9%
松井裕樹 81.0%

となり、三振の取り方のスタイルに大きな差があることがわかります。特に岸の見逃し三振率40%は12球団でも指折りの部類に入ります。相手の読みを外す投球術と絶妙なコントロール技術の賜物と言えるでしょう。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
6月26日(水)誕生日イベント「セイバー語リクスナイト3.5」
7月14日(日)プロ野球トークイベント「セイバー語リクスナイト4」開催決定

記事提供:Full-Count

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