打はデスパイネ、投は千賀と鷹コンビ躍動…セイバー目線で選ぶ5月月間MVP【パ編】

Full-Count

2019.6.10(月) 21:18

福岡ソフトバンク・千賀滉大※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・千賀滉大※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

埼玉西武秋山が完全に復調、公式の月間MVPで最有力候補も…

 5月末時点で1位から4位までが1差、1位と5位でも3.5差という混戦状態のパ・リーグ。5月のチーム成績は以下の通りです。(OPSは出塁率+長打率)

埼玉西武 14勝11敗 打率.255 OPS.757 本塁打35 防御率4.53
楽天 14勝12敗 打率.262 OPS.754 本塁打33 防御率4.73
北海道日本ハム 14勝12敗 打率.276 OPS.771 本塁打19 防御率3.39
福岡ソフトバンク 12勝13敗 打率.265 OPS.765 本塁打31 防御率4.25
千葉ロッテ 12勝13敗 打率.242 OPS.731 本塁打30 防御率3.30
オリックス 10勝15敗 打率.213 OPS.582 本塁打14 防御率3.68

 月間OPSが.765と先月以上に打撃陣が好調だった福岡ソフトバンクですが、防御率が3、4月の2.59に対し5月は4.25。特に救援防御率が1.59から4.02と悪化しています。先発投手陣も防御率が3.10から4.40に、QS率も59.3%から48%と苦戦していますが、打線の援護もあって負け越し1つで終えているのはさすがといったところでしょうか。

 それ以上に5月の打撃が好調だったのが北海道日本ハム。月間OPSが1.011の近藤健介をはじめ、西川遥輝、大田泰示、中田翔がすべて月間OPS0.8を超えています。彼らで1~4番の上位打線を組むことでチーム全体のOPSを上昇させているのです。

 それでは、セイバーメトリクスの指標による5月のパ・リーグ月間MVPを選出していきましょう。

○5月月間MVP パ・リーグ打者部門
デスパイネ(福岡ソフトバンクホークス)

OPS1.285 wOBA.530 RC27 13.75 出塁率0.480 長打率0.805
(すべてリーグ1位)

 候補選手は8名ですが、有力候補はこの2人に絞られることでしょう。

デスパイネ
打率.366 30安打 本塁打11 打点25 得点圏打率.455 四球19 三振19
秋山翔吾
打率.402 41安打 本塁打9 打点13 得点圏打率.286 四球15 三振17

 2人とも4月の不調から抜け出し、令和になって本来の力を発揮し出しました。特に秋山は今まで慣れ親しんできたであろう1番に定着すると、安打を量産。自身3度目の月間40安打に到達。これはイチローと並ぶパ・リーグ最多タイ記録です。また、1試合3安打以上の猛打賞が5回、4安打以上が2回と固め打ちも披露しました(デスパイネの5月の猛打賞は22日那覇での埼玉西武戦の1回)。月間首位の埼玉西武所属の選手であること、そしてこれらの記録を残したことが評価され、公式の月間MVPの最有力候補は秋山翔吾であると予想します。

 では、セイバーメトリクスの指標による評価を見てみましょう。

デスパイネ
OPS1.285 出塁率.480 長打率.805 wOBA.530 RC27 13.75
秋山翔吾
OPS1.204 出塁率.479 長打率.725 wOBA.511 RC27 13.59

 2人ともOPS1.2以上、各プレーの特典価値を累積して算出するwOBA0.5以上、選手の得点創出能力を測るRC27も13点以上というハイレベルな争いになりましたが、ここではデスパイネを今月のMVPに推挙いたします。

千賀のシーズン奪三振率11.96は1995年の石井一久の11.05を上回るハイペース

○5月月間MVP パ・リーグ投手部門

千賀滉大(福岡ソフトバンクホークス)
登板5 3勝1敗
FIP2.34 QS率100% RSAA 6.79 奪三振43 奪三振率10.75(リーグ1位)
防御率1.35 WHIP 0.70

 有力候補の成績を振り返ってみましょう。

千賀滉大
登板5 3勝1敗 防御率1.75 奪三振43 奪三振率10.75 被打率.195

山本由伸
登板4 2勝1敗 防御率1.30 奪三振22 奪三振率7.16 被打率.225

榊原翼
登板5 1勝2敗 防御率2.38 奪三振29 奪三振率7.68 被打率.164

増井浩俊
登板11 1敗8S 防御率 2.61 奪三振10 奪三振率8.71 被打率.162

秋吉亮
登板10 7S 防御率0.84 奪三振7 奪三振率5.91 被打率.135

 月間無敗の先発投手がいないため、どこを基準にするかによって評価は分かれるところでしょう。勝利数、奪三振に重きをおけば千賀、防御率に重きをおけば山本由伸が選出されることになると予想されます。

 山本は4月も防御率1.45、奪三振率8.13、WHIP0.65とかなり優秀な成績を収めていたのですが、それ以上に有原航平の成績が優れていたこと、自チームの攻撃陣からの援護率が0.55と勝ち運に恵まれなかったことがあって月間MVPを逃しています。5月もそれに匹敵する活躍を見せたことによって公式の月間MVP最有力候補に推すメディアも少なくありません。

 ちなみに候補の中にオリックスの投手が3人いることからわかるように、オリックスの投手陣は頑張りを見せています。5月の月間防御率は先月より改善し3.68でリーグ3位の成績なのですが、月間援護率はたったの2.61。3、4月の3.23よりも減少しています。これでは投手陣も浮かばれません。

 それでは、セイバーメトリクスによる評価をみてみましょう。

千賀滉大
FIP2.31 WHIP1.06 QS率 100% HQS率60% K/BB 3.07 RSAA 7.94

山本由伸
FIP3.45 WHIP1.05 QS率 75% HQS率75% K/BB 3.67 RSAA 2.71

榊原翼
FIP3.88 WHIP1.00 QS率 100% HQS率60% K/BB 1.93 RSAA 1.67

増井浩俊
FIP2.06 WHIP0.77 K/BB 5.00 RSAA 2.61

秋吉亮
FIP3.87 WHIP0.75 K/BB 2.33 RSAA 0.54

 被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、6回以上登板で自責点3以内に抑えた割合を示すQS率において千賀が他に抜きん出ています。千賀は5月のみならず、開幕からの先発登板19試合すべてでQSを達成しています。

 さらにRSAA(Runs Saved Above Average)という、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標

(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9

 による評価でも千賀はリーグ1位の成績を残しています。よってパ・リーグの月間MVPとして千賀を推挙いたします。

 なお、千賀と山本の投球の類似点は、フォークとカットボールによって多くの空振りを奪うスタイルだということです。千賀はさらに今季ストレートに磨きをかけ、160キロを超えるストレートを連発しています。そのためストレートでも空振り率が10%を超えているのです。

 千賀は4月に4試合連続2桁奪三振を記録し、5月も5試合の奪三振が9、8、9、9、8と2桁まではいかずとも大量の三振を奪っています。ここまでのシーズン奪三振率11.96は、1995年に石井一久(当時東京ヤクルト)が記録した11.05を上回るハイペースです。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
6月26日(水)誕生日イベント「セイバー語リクスナイト3.5」
7月14日(日)プロ野球トークイベント「セイバー語リクスナイト4」開催決定

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