背水の陣・斎藤佑樹に“トレンディエース”西崎氏が助言「ストレートを磨け」

Full-Count 佐藤直子

2019.5.13(月) 20:17

北海道日本ハム・斎藤佑樹※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
北海道日本ハム・斎藤佑樹※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

37歳まで現役だった自身の経験を基に「結果が出なかったら…」

 2016年以来3年ぶりの日本一を目指し、好位置につける北海道日本ハム。昨季は1軍登板が3試合にとどまりながら、開幕1軍を果たした今季は救援として再起を期すのが、9年目右腕の斎藤佑樹投手だ。早稲田実業から早稲田大を経て、2010年ドラフト1位入団を果たした斎藤は、右肩痛で出遅れた2013年以降、思うような成績を残せず。30歳で迎えた今季を背水の陣で迎えている。

 そんな斎藤について「3~5年の間で結果が出なかったら、大幅に変える必要はあると思う」と厳しいながらも愛を込めた言葉を送るのが、かつて日本ハムでエースだった西崎幸広氏だ。現在は北海道日本ハムでOB会長を務める元右腕は、ここ数年は注目されながらも結果を残せない斎藤に「ストレートをもう一度磨かないと」とアドバイスした。

「ピッチャーの基本はストレート。今、斎藤君のストレートは時速140キロ前後なので、僕は原点に戻って145キロくらいまで出るようにした方がいいと思います。そうすれば、もっと変化球が生きてくる。140キロ前後のストレートに、100キロくらいの変化球だったら、バッターは怖くないですよ」

 一般に、投手は30歳を迎える頃に体に変化が生まれ、投球スタイルを模索することになると言われている。1987年のデビューから37歳まで14年間現役を続けた西崎氏も「30歳ちょっとで壁にぶち当たった」1人だという。20代の頃よりもキレがなくなったストレートを捨て、変化球で勝負する技巧派に変身。だが、そもそも技巧派の斎藤の場合、「逆に変化球を生かすための投球をするしかない」と見ている。

「つまり、ストレートを見せ球にするということですよね。時にはストレートをズバッと決めてみせる。ストレートでもストライクが取れるんだというところを打者に見せておかないと、斎藤君の場合、変化球だけ待っていればいいことになりますから。同じことを繰り返せば、打者は研究してきます。何かを少しずつ変えていかないと。

 ベテラン投手が新球に挑戦するのも同じことですよ。実際に投げなくても『今年はツーシームを多投します』って言えば、メディアが取り上げる。そうすれば打者の頭にはツーシームが残りますから。一種の頭脳戦です。僕も投球練習で落ちないフォークを投げて、記者に聞かれたら『使えるようだったら使おうと思って』と言っていた時期があります(笑)。試合で点差が開いている時に1球投げれば、他球団のスコアラーはデータとして残す。そうなれば、投手の思うツボですよ」

かつて日本ハムでエースを務めた西崎幸広氏※写真提供:Full-Count
かつて日本ハムでエースを務めた西崎幸広氏※写真提供:Full-Count

「自分をしっかり持っているからこそ、変えられないのかもしれません」

 厳しい言葉を続けるが、その一方で斎藤が続ける努力も知っている。2月に訪問したアリゾナキャンプでは、投球フォームを動画に撮ってチェックする姿を見て「研究熱心ですよ」と評価する。

「自分で練習方法をいろいろ考えていると思います。アリゾナでは体重移動が上手くできているか、動画に撮りながら工夫していました。ただ、ブルペンでできることが、試合になるとできなくなってしまう。試合になるとどうしても力が入るので、変わってしまうんでしょうね。

 斎藤君は自分をしっかり持っている。でも、持っているからこそ、変えられないのかもしれません。良くも悪くも、高校でも大学でも実績があり、成功した体験がある。だから、プロで結果が出なくても、なかなか変えられないのはあるでしょう。自分のやってきたことを軸としながら、聞く耳を持って、自分なりに解釈して、柔軟に変えていけばいい。他人のアドバイスをそのまま実践するなんて、誰もできませんから。『こういうやり方もある』という選択肢=引き出しを増やしていけばいいと思うんですよね。今年は本当に結果を出さないと『何でアイツだけ打たれても使ってもらえるの?』ってなっちゃいますから」

 ドラフト1位で注目を浴びながら、その期待に応える難しさは西崎氏もよく知っている。だからこそ、敢えて送る“辛口のエール”。その裏には、誰よりも斎藤を応援したい熱い思いが込められている。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

記事提供:Full-Count

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