オフの豪州自主トレを踏まえ「カンガルーパンチ炸裂って書いてください」
■北海道日本ハム 6-5 楽天(25日・札幌ドーム)
北海道日本ハムの杉谷拳士内野手が25日、本拠地での楽天戦で劇的なサヨナラ打を放った。
延長12回2死満塁で打席に立つと、カウント1-0から楽天・青山の直球を強振。「越えてくれという一心で無我夢中で走りました」という願いが叶い、打球は左翼を守る橋本の頭上を越えていく。一塁ベースを回って高々と右手を突き上げると、チームメートからの祝福シャワーを気持ちよさそうに浴びた。
この打席に入る前に伏線があった。ネクストバッターズボックスで待機している時、金子誠打撃チーフ兼作戦コーチが近づいてきた。その話の内容について杉谷は「『たぶん回ってくるから死ぬ気で行け。インコースのストレートは当たりに行け』と言われました」と明かして爆笑を誘った。
熱い気持ちを持ちながらも打席では冷静だった。石本スコアラーと近藤健介外野手から受けた狙い球の助言を頭の中で整理して立った。「初球の低め変化球を見送ったら、次は真っすぐ1本で仕留める」というシナリオ通り、初球のスライダーを見送り、144キロ直球を弾き返した。
延長11回無死一塁の場面では、送りバントを決められず、一走の王柏融外野手が二塁封殺されていた。「前の打席のバント失敗を取り返すチャンスがあればと思っていました。いつでも前向きにやっているので神様がチャンスをくれたのかな。結果も良かったし」と笑った杉谷。自らのミスを帳消しするどころか、お釣りが来るほど価値ある一打だった。
試合後はしゃべりも絶好調。「監督の誕生日だから気合いが入りました。えっ、今日じゃなくて明日? じゃあ監督の57歳サヨナラ記念日ですね」と26日に58歳の誕生日を迎える栗山英樹監督と自らのサヨナラ打を強引に結びつけて笑いを誘う。さらに昨オフに行った豪州自主トレを踏まえて「カンガルーパンチ炸裂って書いてください」と報道陣に見出しのアイディアまで売り込んだ。
4時間27分の激闘に決着をつけ、首位相手にカード勝ち越しを決めた。これで貯金1。チーム一の元気印が、大きな大きな1勝をもたらした。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)
記事提供: