オコエ瑠偉、1軍で輝くために…東北楽天の2軍スタッフが語る“成長”と“課題”

Full-Count 山岡則夫

2019.4.26(金) 07:10

東北楽天・オコエ瑠偉※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
東北楽天・オコエ瑠偉※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

しっかり考えて野球をするようになった(三木肇二軍監督)

 高校時代から騒がれた逸材も4年目を迎えた。身体能力はプロの世界でも飛び抜けている。仙台の地でNPBを代表する選手への足がかりをつかめるか。楽天・オコエ瑠偉の現在位置とは。

 MLBには“4A”という言葉がある。マイナーリーグでは結果を残すが、メジャーリーグでは存在感を発揮しきれない存在。つまり3Aとメジャーの間に位置する選手のことである。オコエは現状ではまだNPBにおける4A選手であろうか。

 鳴り物入りで楽天入りしたのは記憶に新しいが、レギュラー奪取にまでは至っていない。2019年はキャンプ、オープン戦から結果を残してきた。16年の新人年以来となる開幕1軍入り。「9番・ライト」でスタメン出場してきたが、ここまで打率は1割台に落ち込んでいる。ところが、2軍戦ではいきなり本塁打を放つなど存在感を示している。

「4A選手か、うまいこと言うね。現状ではその通りだね。2軍ではレベルが1つ抜けていると思う」

 三木肇2軍監督は語ってくれた。

「魅力は身体能力だし伸びシロは無限大にある。まだまだ成長過程なんだけど、2軍で結果を残すあたりは可能性の大きさを改めて感じさせる」

「1軍に帯同して変わってきたと思うのは、今まで以上にしっかりと考えるようになっている。自分の技術的なこともそうだし、状況判断もそう。もともと能力がある選手が考えながらやり始めたら、すごい選手になると思う。3拍子揃ったバランスの良い選手。しかもそのスケールが異次元のね」

栗原打撃コーチが見るオコエの成長「最短距離で打つことでミスショットが減った」

 昨年まで横浜DeNAで現役としてプレーしていた後藤武敏2軍打撃コーチは、昨年までの対戦時から注目していたという。

「身体も大きいし全身バネのような感じ。まだまだ荒削りだったけど、それでもスゴイと思って見ていた。今はプロ選手として成長している真っ最中。今年はずっと1軍にもいて、さらに上の段階に登り始めている感じかな」

 また三木監督同様、身体能力頼りでなく、しっかりと考えてプレーしていると感じるという。

「いろいろ試行錯誤しながら考えてやっている。打ち取られたりした時などは、しっかり反省して次に臨んでいる。動作解析なども積極的に行っている。貪欲さもある。長打も打てて走って守れる、スーパーな選手になってほしい」

 現役時代は広島の4番としてチームを引っ張ってきた栗原健太2軍打撃コーチはどう見ているのか。

「僕は打撃中心の選手だった。そういった意味でもオコエの身体能力は本当にスゴイと感じる。誰もが言うけど、やはり1番の魅力はスピード。それが走塁はもちろん打撃、守備などすべてのレベルを上げている」

 室内練習場で打ち込みに付き合い、さまざまな角度からチェックしている。

「今年は1軍にいたのであまり接していないけど、成長している。打撃ではこれまでスイング時、どうしても力が入ってミスショットが多かった。技術的に言うと、ミートポイントへ最短距離でバットが出るようになった。ウエイトで身体もできてきたので、最短距離でも強い打球が打ち返せる」

 今後、オコエがさらなる高みへ行き、1軍で活躍するには何が必要となってくるのだろうか。

「身体能力の高さは誰もが認めている、その上で練習をしっかり行って経験を積む」

「1軍のオープン戦で多少、結果も出た。だから2軍にいる時には余裕というかゆとりのようなものを感じる。打席でもドシッとして、相手投手を待つことができている」

「2軍でいきなり二塁打を打った。次打者の時に捕手が少し前にこぼしたらすぐに三塁を奪った。ああいう積極性は素晴らしいと思う。その上で繊細さも出てくれば、いろいろな結果につながると思う」

 栗原コーチは精神的の安定感を挙げた。

「目指すところはかなり高いところにある。ただヒットが出る、足が速いというだけではない。すべてを備えている、手がつけられない選手になれる。本人が言ったようにトリプルスリーだね」

「まだ1軍では新人選手のようなもの。すべてがが初めてだと思ってそれに1つずつ対応していけば良い。アジャストすることが今後の課題だと思う」

 後藤コーチは1軍レベルへの対応力を語った。

「状況判断を磨くことが大事。そのためにも実戦にたくさん出る。プロの世界はやはりレベルが高いから、そこでさまざまな状況に出会うことで判断力も早くなる」

「実戦に出るということは経験を積むこと。身体能力の高さは誰もが認めている。その上で練習をしっかり行って経験を積む。これから継続できれば間違いなく素晴らしい選手になれるはず」

 三木監督は経験の重要性、それにともなった状況判断力を口にした。

 いつも明るく振る舞っているオコエ瑠偉。周囲には柔らかい空気が満ちている。

「僕、やっぱ、屋根がない球場が好きなんですよ。気持ちいいっすから」

 20度をこえる快晴の空の下、気持ち良さそうに試合前練習を終了した。

「たまに寒いっすけど、楽天生命パーク、大好きなんですよ」

 無邪気な笑顔から想像できない、刺激的なプレーが見られるのは、そう遠くなさそうだ。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。

記事提供:Full-Count

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