高谷は右肘関節炎、栗原が左肩脱臼で相次いで離脱
2年連続の日本一を目指す昨季のパ・リーグ王者。順調に消化してきた宮崎での春季キャンプだが、ここにきて、何やら雲行きが怪しい。キャンプ終盤に怪我人が増え始めてきているのだ。
キャンプも第5クールが始まった20日、想定外の事態が起きた。まず、高谷裕亮捕手が19日に右肘の関節炎と診断され、離脱した。近く右肘関節内の遊離軟骨を除去する手術を受けるという。通常、復帰まで2、3カ月を要するため、開幕にはほぼ間に合わない。さらに、キャンプをA組で送ってきた今季の第3捕手最有力候補だった栗原陵矢捕手は特守中に左肩を脱臼し、こちらも離脱することになった。
第6クールが始まった24日には不動の遊撃手である今宮健太内野手が右肘の違和感を訴えた。検査の結果「右肘関節滑膜炎」と診断された。症状は重くないようだが、シーズンに向けて一抹の不安を残すのは事実。明石健志内野手も軽い腰痛でこの日の紅白戦を欠場している。キャンプの疲労が、ピークにきている時期だけに、コンディションには十分、気をつけてもらいたいものだ。
今宮選手と明石選手は軽症のため、しばらく様子を見ることになりそう。それ以上に心配なのは、やはり高谷選手、栗原選手が離脱した捕手だろう。何事もなければ、今季は高谷選手と甲斐拓也選手が併用でマスクを被り、栗原選手が第3捕手として控えることになっていたはず。それが一度に2人が離脱したのだ。
A組スタートの九鬼に加え、B組から谷川原&堀内の2人が紅白戦に参加
2人の故障離脱に伴って、1軍が確定しているのは甲斐拓也選手1人だけ。残る1枠ないし、2枠には誰が入るのか。その候補にあがるのは、キャンプインからA組で過ごしていた2年目の九鬼隆平選手に加え、3年目の谷川原健太選手、育成選手の堀内汰門選手の2人だろう。2人はA組に加わり、紅白戦にも参加。それぞれが一線級のA組の投手から安打を放つなど、懸命にアピールしている。チームの危機を、個人のビッグチャンスに変えられるのは誰か。現在、A組でアピール合戦を繰り広げている候補を見てみよう。
○九鬼隆平(2年目、右投右打)
2016年のドラフト3位で秀岳館高から入団した「強打の捕手」。1位田中正義投手、2位古谷優人投手と期待の星が並ぶが、この九鬼選手も侍ジャパンU-18で4番を担った大器だ。ルーキーイヤーは3軍戦で7本の本塁打を放ち、ウエスタン・リーグでも2本のアーチをかけている。キャッチングなどにはまだ課題はあるものの、最も期待値は大きい。24日の紅白戦では開幕投手に決まっている千賀投手から右前適時打、同期の古谷投手から中前安打と2安打を放っている。「九鬼水軍」を率いた戦国武将の九鬼嘉隆の末裔。
○谷川原健太(3年目、右投左打)
九鬼選手の1歳上にあたり、2015年のドラフト3位で豊橋中央高から入団。身長174センチと小柄ながら、卓越したバットコントロールによる打力を評価されている捕手。2年目の昨季は、右肘の手術の影響でリハビリの期間が長かったが、終盤から出場したウエスタン・リーグでは13試合で打率.400をマークした。高校通算41本塁打、遠投110メートルの強肩も武器としている。22日の紅白戦で左キラーの嘉弥真投手から左前安打、24日の紅白戦では長谷川宙投手から左前安打と2試合連続安打に成功した。
○堀内汰門(4年目、右投右打)
2014年の育成ドラフト4位で山村国際高から入団した育成選手。1年目に右鎖骨骨折を負い、長期のリハビリ生活を余儀なくされた。昨季は2軍戦1試合のみの出場だったが、3軍戦で63試合に出場している。22日の紅白戦では、ルーキーの渡邉雄大投手から中前安打を放っている。
故障者2人を除くと、福岡ソフトバンクの捕手は支配下4人、育成を含めても計6人だけだ。B組には、5年目の張本優大選手、そして育成の3年目・樋越優一選手がいる。現状では九鬼選手が第2捕手の筆頭候補か。チームのピンチでできたチャンスをつかみ取る若い力は、一体誰になるだろうか。
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