「人生何があるか…」 無名の存在から埼玉西武へ、宮田和希さんが伝えたいこと

Full-Count 篠崎有理枝

2019.4.6(土) 21:25

2017年からライオンズアカデミーコーチを務める宮田和希さん※写真提供:Full-Count(写真:篠崎有理枝)
2017年からライオンズアカデミーコーチを務める宮田和希さん※写真提供:Full-Count(写真:篠崎有理枝)

埼玉西武のアカデミーコーチ3年目のシーズンをスタート

 プロ野球は3月29日に開幕したが、元プロ野球選手が講師を務めるライオンズアカデミーも新年度が始まり、元埼玉西武投手の宮田和希さんもアカデミーコーチ3年目のシーズンをスタートさせた。

 宮田さんが野球を始めたのは10歳の時。野球好きだった父親に少年野球チームに入ることを進められていたが、人見知りで知らないところに行くのが苦手だったため、ずっと断っていた。しかし、チームに入っている友達と喧嘩をし、その友達を見返してやろうと思ったことがきっかけで入部を決めた。

 高校は野球では無名の府立福泉高に進学。3年夏の府大会1回戦では、後に東京ヤクルトに入団する山田弘喜がエースの府立城東工と対戦し0-7の8回コールド負けを喫した。参考記録ながら山田に完全試合を達成され、試合に幕を下ろしてしまったのは宮田さんのボークだった。

「悔しかったですね。打たれて終わったのではなく、自分のボークで勝手に終わらせてチームメートに申し訳なかった。1回戦で負けたからまだ学校があったんですけど、チームメートに会うのが嫌で、学校に行きたくありませんでした」

 高校卒業後は大学に進学し、普通の大学生になろうと思っていた。しかし、山田を見に来ていた滋賀・甲賀健康医療専門学校の監督が、宮田さんに声をかけた。

「人と関わるのが好きじゃなかったので、地元を離れて知らない人ばかりの滋賀には行きたくないと思いました。でも、父親に『スカウトが来たよ』って言ったらすごい喜んでくれて。だったら行ってみようかな。と思って進学を決めました」

 甲賀健康医療専門学校では、都市対抗予選など社会人野球の大会に出場したが、学生と社会人では力の差があり、結果を残すことはできなかった。しかし、当時埼玉西武のスカウトを務めていた後藤光貴氏が、社会人野球在籍時の先輩だった甲賀健康医療専門学校の監督にあいさつに訪れたときに宮田さんを見たことがきっかけで、埼玉西武から2008年のドラフトで6位指名を受けた。

優しい表情で子供たちと接するライオンズアカデミーコーチの宮田和希さん※写真提供:Full-Count(写真:篠崎有理枝)
優しい表情で子供たちと接するライオンズアカデミーコーチの宮田和希さん※写真提供:Full-Count(写真:篠崎有理枝)

「野球が好きで、一生懸命やっていたら、いつかはいろんな道が開けてくる」

「本当に運がよかった。縁は大事なんだなと感じました。まさか自分がプロになれるとは思っていませんでしたし、周りの人もみんなびっくりしていました」

 7年目の15年に初勝利を挙げたが、翌年は左肘の手術もあり、1軍での登板機会はなくオフに戦力外通告を受けた。その後、トライアウトを受けたものの声はかからず、ライオンズアカデミーのコーチに就任した。

「ほかのコーチに比べて実績がないので、子供に何を言っても説得力がないなと思っていました。でも、周りから『プロを経験したんだから』と言われて、割り切ってやるようになりました。僕はエリートじゃないけど、自分の人生を振り返ると、誰かがどこかで見てくれていた。だから、頑張っていれば誰かが見てくれていると子供たちに伝えています。野球が好きで、一生懸命やっていたら、いつかはいろんな道が開けてくる。人生何があるかわからない。それを覚えていてほしいと思います」

 小学生の時、ポジションはファーストだった。中学生の時には「ピッチャーをやりたい人」と聞かれ、勇気を出して手をあげたことがきっかけで、ピッチャーになった。だから、子供たちには何事にも勇気を出して取り組んでほしいと願っている。

「その時も手をあげるか迷ったんです。あの時勇気を出して手をあげていなければ、ずっとファーストだったかもしれない。そうしたら、プロになっていなかったかもしれないですね」

 コーチになったばかりの時、子供たちに「高校はどこなんですか?」と聞かれても「誰も知らないようなところだよ」と、答えを濁していた。今は「どこそれ?」と言われても、自信を持って答えている。無名高からプロの舞台にたどり着いた自らの人生を手本に「頑張っていれば、必ず道は開ける」と子供たちに伝え続けている。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

記事提供:Full-Count

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Full-Count 篠崎有理枝

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