千葉ロッテの荻野貴司外野手は昨年、初めて大きなケガをすることなくシーズンを終えた。次なる目標は当然、ルーキーイヤーから期待され続けている自身初の栄冠となるだろう。
「ケガさえなければ」と言われ続けてきた男が、ついに課題を克服し、いよいよそのポテンシャルをフルに発揮しようとしている。
ルーキーイヤーから46試合で25盗塁。端正な顔に驚異の「脚」
郡山高校、関西学院大学、トヨタ自動車を経て2009年のドラフト1位で千葉ロッテに入団した荻野貴選手は、ルーキーイヤーから46試合で25盗塁を記録する驚異的な俊足を披露して、周囲の度肝を抜いた。
ケガでシーズン中盤以降を棒に振ってしまったものの、打率.326をマークする打棒も含め、翌年はさらなる活躍が期待されていた。
しかし、その後も相次ぐケガに悩まされ、100試合以上に出場したのは2016年までの7年間で1度だけ。全シーズンで2桁盗塁を記録する脚は、変わらず相手チームの脅威となり続けたが、シーズンを完走できないためにチーム内で確かな地位を築くことはできず。
「ケガさえなければ」。チームの顔になれるポテンシャルがあることは何度も証明してきただけに、本人と同様、歯がゆい思いをしていたファンも少なくはないはずだ。
ケガ「0」の決意を込めた背番号で臨んだ2017年
荻野貴選手はそんな状況を打破するべく、「ケガが0になればいい」と、背番号を「0」へと変更して2017年に臨む。すると、開幕当初こそ深刻な打撃不振に苦しんだが、二軍調整を経て8月に再登録されると調子を取り戻し、本来のバッティングを見せ付け始める。
8月には25試合で打率.299、7盗塁を記録すると、9月は22試合で打率.356、10盗塁の大活躍。10月は打率こそ.267にとどまったものの、5試合で5盗塁と走りまくり、最後の3カ月は52試合で22盗塁と、ルーキーイヤーを思い起こさせるような大暴れを見せた。
通算では103試合5本塁打24打点26盗塁、打率.264という成績で、出場試合数、安打、本塁打は自己最多。盗塁数も自己最多タイ。変更した背番号通り、プロ入り後初めてケガを「0」のまま終えることができたのは、荻野貴選手にとって大きな収穫となったことだろう。
新生・千葉ロッテの機動力野球の象徴として
荻野貴選手は通算528試合の出場で153盗塁を決めており、失敗はわずか21。通算成功率.879は特筆すべき数字だ。
現役時代に2度の盗塁王に輝いた実績を持ち、「機動力野球」を目標に掲げる井口資仁監督にとっても、荻野貴選手の存在は心強いことだろう。フルで一軍に帯同することができれば、自身初となる盗塁王の座をつかむ可能性も、おのずと高まってくるはずだ。
稀有な才能は誰もが認めながら、満足に試合に出場することすら叶わなかった。「ケガさえなければ」という声も、これまで幾度となく耳にしてきた。最大の課題を克服した今、もう「タラレバ」は言わせない。
新生・千葉ロッテの機動力野球をけん引する存在としてフィールドを駆けめぐり、再び日本中のファンに鮮烈な印象を残すため。荻野貴選手の全盛期は、まだまだこれからだ。
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