秀岳館と聞けば、高校野球ファンなら誰もが反応するだろう。昨夏に2回戦で敗れるまで、3季連続で甲子園ベスト4に入り、熊本から全国にその名をとどろかせた強豪高校だ。
その躍進を攻守・投打にわたって支えた2人が、プロでも再びチームメイトとなった。ともに福岡ソフトバンクに所属する九鬼隆平捕手と田浦文丸投手の「秀岳館バッテリー」は、プロの舞台においても、高校時代のような一大旋風を巻き起こせるだろうか。
日本球界待望の「打てる捕手」として期待がかかる九鬼先輩
1学年先輩にあたる九鬼選手は、戦国時代に九鬼水軍を率いた武将・九鬼嘉隆の末裔であり、父も選抜優勝経験を持つサラブレッドだ。秀岳館高校で主将を務め、自身最後の夏だった2016年の準決勝敗退後、泣き崩れる仲間を抱き、気丈に振る舞う姿が印象的だった。
高校日本代表でも主将と4番を任され、「打てる捕手」として2016年ドラフト3位で福岡ソフトバンクに入団。プロ1年目の昨季は三軍で64試合7本塁打、打率.257、ファームで21試合3本塁打、打率.256という成績を残した。
一軍での出場機会こそ得られなかったが、選手層の厚いチームの厳しい競争の中でも、将来の正捕手として一目置かれる存在であることは間違いない。現在行われているキャンプでもA組に抜擢されており、首脳陣からの期待も高いことがうかがえる。
魔球・チェンジアップで、「信頼される投手」を目指す田浦投手
そんな九鬼選手の1学年後輩にあたる田浦投手は、地元・福岡出身の左腕。高校時代は卓越した身体能力を武器に外野手も務めた。昨夏の甲子園では中村奨成選手(現・広島)を擁する広陵高校に敗れたが、投打にわたる活躍で母校の躍進に大きく貢献している。
秋の第28回「WBSC U-18ワールドカップ」では13回2/3を投げて29三振を奪い、救援部門でベストナインに選出された。小柄ながら決め球のチェンジアップは魔球と呼ばれ、2017年のドラフトで、先輩と同じ福岡ソフトバンクから5位指名を受ける。
「皆さんに信頼される投手になりたい。大事な試合では、田浦しかいないと言われるような投手になれるよう努力していきたいです」と抱負を語っていた田浦投手。まだあどけない18歳だが、はたしてどのような投手に成長するのか、注目が集まる。
熊本から福岡。プロでも恐れられる秀岳館バッテリーへ
秀岳館高校の鍛治舍巧監督が、昨夏の甲子園を最後に退任し、同校にとってひとつの時代が終わりを告げた。しかし輝かしい時代のメンバーのうちの2人、それも捕手と投手がプロで同じチームに所属することが決まったのも、きっと何かの縁だろう。
高校時代に惜しくも届かなかった「優勝」という名の栄冠を、高校時代と同じバッテリーでつかむことができるか。熊本から福岡へ。同じ九州の地で、さらなる躍進を誓うふたりの若武者から、今から目が離せそうにない。
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