定位置に返り咲き、パ・リーグ連覇へのピースとなる。鷹の剛腕、ロベルト・スアレス

パ・リーグ インサイト 成田康史

2018.1.25(木) 00:00

昨年のパ・リーグ覇者・福岡ソフトバンク。このチームの恐ろしいところは、たとえ怪我や疲労によって主力が離脱しても、それに代わる選手が現れる層の厚さである。サファテ投手を筆頭とした救援陣はチームの優勝に大きく貢献したが、実は開幕から、ある大きな存在を欠いたまま戦っていた。160キロ超の剛速球を武器にセットアッパーを務め、2016年は58試合に登板したロベルト・スアレス投手のことである。

2014年にメキシカンリーグのチームに入団するまでプロ経験はなく、草野球に打ち込んでいたスアレス投手。荒削りながら魅力的な剛球が球界関係者の間で噂になり、メジャーからの注目を集めつつも最終的には福岡ソフトバンクを選んだ異色の経歴の持ち主である。2015年のオフ、24歳で来日すると、瞬く間に日本野球に適応。初年度の2016年シーズンに、早速輝かしい成績を残していく。

初登板は4月10日、オリックス戦の8回。2奪三振を含む無失点と好投し、上々のデビューを飾る。その後セットアッパーに定着。最終的に、サファテ投手に次ぐチーム2位の58試合登板、リーグ3位の26ホールドと、頼もしく勝ちパターンを担った。遅咲きの原石が初年度から輝きを放ち、想像をはるかに超える活躍。当然のように、来季のさらなる進化が期待された。

ところが、2017年の開幕前。母国・ベネズエラの代表として出場したWBCで右肘に異常を訴え、実戦復帰まで約1年を要する靱帯再建手術に踏み切ることに。シーズン中の復帰は絶望的となり、チームが熾烈な優勝争いを繰り広げているさなか、そしてそれに勝ち抜き現在に至るまでを、スアレス投手はファーム施設や母国でのリハビリに費やした。

前述の通り、50試合以上に登板した右腕を失いながら、チームはその穴を埋めて日本一に輝いている。ただ、その鉄壁の救援陣は、長いシーズンで大きな負担を引き受け続けていた。まだ26歳と若く、才能に溢れたスアレス投手の存在は、チームが連覇を目指すうえで重要なピースだ。まもなく始まる春季キャンプには参加できないものの、早ければ2018年シーズンの前半には実戦復帰できる見込みだという。

しかし、昨年頭角を現した嘉弥真新也投手、モイネロ投手、実績のある森唯斗投手、今年の飛躍に懸ける若手など、ブルペン陣は充実の陣容を誇っている。その中で「勝利の方程式」に入れるのはほんの一握りだ。僅差のリードの場面で後ろを任されるのは、最も信頼される中継ぎの証であり、彼らは誰しもそのわずかな枠をめぐってアピールに励む。

選手ひとりひとりにとっては厳しい環境であるが、球界屈指の救援陣によるハイレベルな競争は、チーム力の底上げにつながっていくだろう。スアレス投手は、確かな実力を秘めたその右腕で、もう一度自身の立場を確立できるか。妥協を許さない「王者」の戦いに、今年も大いに期待している。

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パ・リーグ インサイト 成田康史

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