母国で豪速球を連発する元楽天ルーク・ファンミルの現在。オランダトップリーグ「フーフトクラッセ」に迫る【後編】

パ・リーグ インサイト 大森雄貴

2018.1.15(月) 00:00

オランダで野球を楽しむ少年に「フーフトクラッセって知ってる?」と質問すると、多くの回答は「NO!」と返されるほど、国内でも知る人ぞ知る野球リーグ。しかし、WBCでの代表メンバーには、このリーグ出身の選手が何名か選出されている。元楽天のルーク・ファンミル投手も所属するフーフトクラッセについて、現地にて調査を行った。

オランダで野球はマイナースポーツに位置付けられている。オランダの総人口が約1500万人と言われる中、サッカーの競技人口は約100万人とされ、対する野球は1万人にも満たないと言われている。オランダシリーズの開幕戦でも、観客はまばら。観客を収容できる球場も少なく、ヨーロッパ随一の球場を持つキュラソーネプチューンズでさえ、経営は難しい。フーフトクラッセでは、チケット代金を取ることはほとんどないため、基本は球場内の飲食収入及びアカデミー料金、スポンサーからの収入である。

フーフトクラッセにはオランダ王立野球・ソフトボール協会(KNBSB)が定める独自のルールが幾つか存在する。KNBSBとしても、国際大会優勝を目指し個々人のレベルアップを目的とするため、フーフトクラッセに所属しながら、AAA、マイナーリーグ、NPBに挑戦することを認めている。たとえシーズン途中で解雇されたとしても、フーフトクラッセの所属チームで即座にプレー再開ができる柔軟なシステムがある。この日のキュラソーネプチューンズの1番で出場していたスティン・ファンデルメール選手はWBC代表にも名を連ね、今年はメジャーリーグへ挑戦(FAはなく、挑戦したかったら挑戦できる)した。しかし、マイナー時点で契約を打ち切られてしまい、再びネプチューンズでプレーをしている。

このシステムのおかげで、ファンミル投手(2016、2017年オーストラリアベースボールリーグにてプレー)のようにシーズン終了後、他国のリーグにてプレーをすることも可能だ。

また、日本と違いクラブチーム特有の事象も存在する。オランダの野球は毎年ルールを変更する。アマチュアU18は東京五輪を見据え、各クラブチームのアカデミーに属する優秀な選手(カリブ海地域も含む)がアムステルダムの施設に宿泊しながら練習をしている。土日は各クラブのアカデミーに戻り、リーグ戦をこなす。そこで、好成績を残せば、何歳でも、属するクラブのトップチームでデビューすることが可能。オランダシリーズ初戦でも、ネプチューンズアカデミー所属のピテルネッラ選手(17歳)が代打でデビューを果たした。ここでは三振に倒れてしまったが、スタンドで見つめるアカデミーの希望、素晴らしい経験になることは間違いない。

この日の試合は両チームのベテラン投手、ディエゴ・マークウェル(キュラソーネプチューンズ:37歳)とロブ・コーデマンズ(L&Dアムステルダム:43歳)の2人による投手戦が繰り広げられた。そしてファンミル投手の登板は2点を追う展開で迎えた7回1死の場面。32歳のファンミル投手は試合の終盤を任されることが多かった。

国民の平均身長が185cmと言われるオランダ人でも一際目立つ216cm、マウンドに上がれば一段と高くなる。投球フォームは楽天時代と変わらず、長身を生かした真上から投げおろすオーバースロー投法。球種はストレート、スライダー、スプリット、チェンジアップの4種類である。ストレートの球速は平均148キロと健在であり、ファンミル投手の豪速球を捉えられる相手打者はおらず、2回2/3を投げ、被安打0、奪三振3の好成績であった。

試合後にオランダU18マネジャーであるエリック氏にファンミル投手についての感想を求めると、「当然優れた投手である。しかし、球が速いだけでは簡単に合わせることができるし、綺麗な真っ直ぐは打順が一回りもすれば捉えることができる。今後は緩い変化球を覚えるなど、投球スタイルを変えないと長く活躍することは厳しいかもしれない」とコメント。

“フーフトクラッセで一番の剛速球”を誇るファンミル投手。しかし、今後も活躍を続けるには新たな武器が必要となる。かつては楽天でプレーし、現在は母国に戦いの場を移したファンミル投手は試行錯誤を続けながら奮闘している。

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