外国人選手は一般的に、即戦力としての働きを求められる。しかし近年は、有望な若手選手を見出し、育成に時間を費やす前提で獲得するケースも増えてきた。2017年シーズン途中に福岡ソフトバンクへ加入したオスカー・コラス選手も、その「原石」の1人だ。キューバ出身の19歳は、野手としても投手としても大いなる可能性を感じさせ、「キューバの大谷」として話題を呼んでいる。
コラス選手は186センチ95キロの大型野手であり、なおかつ速球派左腕でもある二刀流。2015年の「WBSC U-18ベースボールワールドカップ」にはU-18キューバ代表として出場し、投手登録ながら4番・指名打者を務めた。翌年の夏には、17歳で国内のトップリーグデビューを飾り、登板機会こそなかったものの、打者としては23試合4本塁打11打点、打率.278という好成績を残している。そして昨年5月、モイネロ投手とともに福岡ソフトバンクと育成契約を結ぶことが発表された。
入団会見では担当スカウトが「とにかく飛ばす力がすごい。フリー打撃では140メートル級の打球をばんばん飛ばします。投げても148キロをマークしました」と、その大いなる可能性をアピール。コラス選手自身も、「日本の野球はすごくスマートなイメージ。自分も一塁手としてのバッティング、そして質の高いピッチングをお見せしたい」と、二刀流への挑戦を宣言し、「大谷選手のことは知っている。彼のような選手になりたい」と意気込みを語った。
会見の翌日から、早速三軍へ合流したコラス選手。日本球界の変化球主体の配球に苦しみ、なかなか最初の一本が出なかったが、徐々に状態を上げていく。8月にはファームで公式戦初安打も放った。最終的な三軍打撃成績は、45試合108打数25安打4本塁打、打率.231。4本塁打はチーム3位の成績であり、持ち味のパワーの片鱗を見せ付けたと言えるだろう。
一方、投手としても三軍で9試合に登板している。6月14日に行われた楽天との練習試合、1点リードの4回に来日初登板を果たすと、1回無安打無失点の好投。この日の球速は最速145キロをマークした。さらに指名打者として先発出場し、試合途中にいわゆる「DH解除」で中継ぎ登板することも。投手としての三軍成績は9試合1勝0敗、防御率1.54だった。
もちろん、来日したばかりの若者であるため、まだまだ改善点が多いことは言うまでもない。走塁や守備においては基本的な動きを習得している段階でもある。ただ、入来祐作三軍投手コーチはその伸びしろと練習態度を高く評価する。そもそも、チームとしては時間をかけて育てていくことを前提とした獲得だ。同期のモイネロ投手は瞬く間に一軍で自身の立場を確立したが、これからこの原石は、12球団屈指の育成環境の中でどれだけ磨かれていくか。投手としても、野手としても、その行く先が非常に楽しみだ。
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