現在の両リーグ首位に君臨している福岡ソフトバンクと広島の防御率はともに3点前後。この数字はいずれもリーグ1位の数字であるように、今や優勝争いをする上で投手陣の充実は必要な条件であると言っていいだろう。実際に近年(過去10年、計20チーム)の両リーグの優勝チームの傾向をみても、昨年の東京ヤクルトを除く19チームの防御率がリーグ1位もしくは2位であった。
もちろんその時代によって試合数や球場の広さなど諸々の条件が異なるが、単純に防御率という数字で比較してみたところ、2リーグ制以降の66年間での優勝チーム平均防御率はパ・リーグが3.25、セ・リーグが3.07という結果となった。数字としては悪くないと言える。
しかし、当然これまでの歴代優勝チームが全てこれに当てはまるというわけではない。中にはアッと驚くような防御率で優勝したチームも存在している。
まずは「史上最高」の優勝チーム防御率。パ・リーグで最も低い防御率で優勝したのは今からちょうど60年前、1956年の西鉄である。そのシーズンの防御率は驚異の1.87。この年の西鉄の投手陣を見てみると、新人王と最優秀防御率を獲得した稲尾和久氏が262.1イニングを投げて防御率1.06。それ以外にも島原幸雄氏が1.35、西村貞朗氏が1.71で防御率10傑に名を連ねた。当時のチーム打率は.254でリーグトップ。リーグ全体として「打低」ではあったものの、チーム内では豊田泰光氏(打率.325)や、中西太氏(打率.324)が打線を引っ張るなど、投打のバランスが取れたチームであった。
【1956年 西鉄投手陣(勝利数トップ5)】
島原幸雄 25勝 防御率1.35
西村貞朗 21勝 防御率1.71
稲尾和久 21勝 防御率1.06
河村久文 18勝 防御率2.54
畑隆幸 7勝 防御率1.68
※敬称略
では逆に、パ・リーグで最も高い防御率で優勝したチームはどこか。それは2001年の大阪近鉄で、防御率は4.98。ほぼ5点台だ。しかしこれで優勝したということが示す通り、毎試合約5点を取られても、ローズ選手や中村紀洋選手ら、強力な打者をそろえる「いてまえ打線」で跳ね返すのがお家芸であった。ちなみにチーム打率は.280で、こちらはリーグトップ。中軸のローズ選手(打率.327、55本塁打、131打点)、中村選手(打率.320、46本塁打、132打点)を中心に、1番から切れ目のない攻撃で勝利を積み重ねる、とにかく打って打って打ちまくる、打で圧倒するチームであった。
優勝決定戦にしても、その戦いぶりを象徴する試合だった。相手に5点を奪われ、3点を追う土壇場の9回裏。無死満塁の好機を生み出し、代打・北川博敏選手の劇的な優勝決定サヨナラ満塁本塁打が飛び出した。
【2001年 大阪近鉄投手陣(勝利数トップ5)】
前川勝彦 12勝 防御率5.89
バーグマン 10勝 防御率4.18
門倉健 8勝 防御率6.49
山村宏樹 7勝 防御率5.83
三澤興一 7勝 防御率4.01
※敬称略
防御率1点台、4点台での優勝は非常に稀ではあるが、実際過去には達成したチームが存在した。4点台後半で優勝なんて無理だろうと思ってしまいがちだが、それをチーム力で覆してしまうのだから野球は面白い。
今年両リーグで首位を走るチームは、いずれも打線はもちろん、投手陣の良さも光る。パでは北海道日本ハムが防御率3.11でリーグ2位につけ、千葉ロッテも防御率3.56で上位争いを演じている。まだまだ優勝の行方は分からないが、今年の優勝チームの防御率はいったいいくつとなるのであろうか。シーズン終了後の数字を楽しみにしておきたい。
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