最上位クラスと最下位、突出した順位は嘘をつかない?
「オープン戦の成績は当てにならない」という言葉は、野球好きなら古今東西さまざまな場所で耳にしたことがあるものだろう。この格言が本当のことかを調べるために、過去のオープン戦の順位とレギュラーシーズンの成績を調べてみると、その順位からくる印象とは真逆の相関性が示されているケースも浮かび上がってきた。
今回はその調査結果の一部を示すとともに、興味深い結果が出た順位についていくつか紹介していきたい。
まず、オープン戦で1位もしくは2位という好成績を残したチームが、その後どのようなシーズンを送ったのかについて見ていきたい。それぞれのレギュラーシーズンの順位は以下の通りだ。
オープン戦順位1位→リーグ最終順位
2009 福岡ソフトバンク→3位
2010 北海道日本ハム→4位
2011 阪神→4位
2012 東京ヤクルト→3位
2013 巨人→1位
2014 福岡ソフトバンク→1位(日本一)
2015 福岡ソフトバンク→1位(日本一)
2016 阪神→4位
2017 千葉ロッテ→6位
2018 巨人→3位
オープン戦順位2位→リーグ最終順位
2009 東京ヤクルト→3位
2010 福岡ソフトバンク→1位
2011 福岡ソフトバンク→1位(日本一)
2012 北海道日本ハム→1位
2013 広島→3位
2014 東北楽天→6位
2015 千葉ロッテ→3位
2016 千葉ロッテ→3位
2017 福岡ソフトバンク→1位(日本一)
2018 千葉ロッテ→5位
オープン戦1位のチームは過去10年で6度、同2位のチームは8度Aクラス入りを果たしており、それぞれ2度ずつ日本一のチームも輩出。直近10シーズンのうち4年間で、オープン戦上位2球団のうちのどちらかから日本一チームが生まれている計算だ。
ちなみに、11年前の2008年にオープン戦を首位で終えたのは埼玉西武だった。この年の獅子軍団もリーグ優勝と日本一を達成する好成績を収めており、上位2チームに入ったチームがクライマックスシリーズ進出を果たしたり、日本シリーズを制覇する可能性が高くなっているのは確かなようだ。
次に、残念ながらオープン戦で最下位となったチームのその後についても見ていきたい。
オープン戦順位最下位→リーグ最終順位
2009 阪神→4位
2010 横浜→6位
2011 横浜→6位
2012 阪神→5位
2013 中日→4位
2014 東京ヤクルト→6位
2015 広島→4位
2016 中日→6位
2017 巨人→4位
2018 阪神→6位
過去10年でオープン戦最下位だったチームはすべてBクラス、そのうち半数の5チームがレギュラーシーズンでも6位。ある意味、非常にわかりやすい結果となっている。2008年の巨人はオープン戦最下位ながらリーグ優勝を果たしているが、それ以降はAクラスに入るチームすら出ていない。オープン戦の結果は決して完全に鵜呑みにできるものではないが、上位2チームと最下位という双方に突出した成績の場合は、オープン戦とシーズン全体との間に一定の相関性が見られると結論できそうだ。
何故か悲しい結果に終わりがちな順位と、最下位近辺なのにシーズンでは躍進する順位
一方で、オープン戦では上位の成績ながら何故かシーズンに入ると振るわないチームが増える順位や、逆にオープン戦の下位に低迷しながらリーグに入ると好成績を収めるチームが多い順位といった不思議なスポットも存在する。ここから先は、そういった興味深い例について紹介していきたい。
まずは3位。オープン戦1位と2位がレギュラーシーズンでも好成績を収めているのは先述の通りで、ならばそれに次ぐ3位もそこに準ずる成績になると考えるのが自然だろう。ところが、その結果は以下のようになっている。
オープン戦順位3位→リーグ最終順位
2009 広島→5位
2010 東北楽天→6位
2011 北海道日本ハム→2位
2012 横浜DeNA→6位
2013 福岡ソフトバンク→4位
2014 巨人→1位
2015 横浜DeNA→6位
2016 福岡ソフトバンク→2位
2017 オリックス→4位
2018 東北楽天→6位
過去10年間で7度のBクラスと、上位2チームとは対照的な結果に。ちなみにここからひとつ下、オープン戦4位のチームは10年間で5度のAクラス、1度の日本一と一定の成績を収めているだけに、この結果はなおのこと不可解である。
例外的に好成績を収めたチームに対しても不吉な影はつきまとい、2014年の巨人はレギュラーシーズンを制しながらもクライマックスシリーズ・ファイナルステージで4連敗を喫し、ライバルの阪神に屈して日本シリーズに進出できず。2016年の福岡ソフトバンクは2位という結果ではあるが、最大で11.5ゲーム差をつけていた北海道日本ハムにまさかの大逆転優勝を許し、目前に迫っていたはずの3連覇を逃すという悲劇のシーズンだった。
ちなみに、このリストには入らなかったが、2007年のオープン戦で3位だった東京ヤクルトと2008年に3位だった福岡ソフトバンクは、それぞれ前年のAクラスから転落してのリーグ最下位に。それぞれ古田敦也氏と王貞治会長の監督としてのラストシーズンだったが、その終わり方は悲しいものになってしまった。一口に「ジンクス」と言ってしまえば簡単だが、ここまで続くと単なる偶然とは考えにくいものもあるのではないだろうか。
一方、最下位に次ぐブービーであり、順当に考えればレギュラーシーズンでの苦戦が予想される11位のチームについても、意外な相関性が見えてくる。
オープン戦順位11位→リーグ最終順位
2009 中日→2位
2010 阪神→2位
2011 千葉ロッテ→6位
2012 広島→4位
2013 オリックス→5位
2014 阪神→2位(日本シリーズ進出)
2015 巨人→2位
2016 オリックス→6位
2017 広島→1位
2018 広島→1位
過去10年で6度の2位以上、そのうち2度はリーグ優勝という結果は、不振と呼んで差し支えないであろうオープン戦11位という数字とは対照的なものだ。2014年の阪神はレギュラーシーズンを2位で終えながらクライマックスシリーズで巨人を4連勝で破って日本シリーズ進出を果たしており、過去10年間で最も日本一に近づいたシーズンでもあった。
先述の通り、オープン戦最下位のチームはレギュラーシーズンでもそのまま苦戦を続ける傾向が強く、過去10年間はそのすべてがBクラスに沈んでいる。それだけに、それと大差ないはずのオープン戦11位のチームが見せている奮闘は、先述の3位とは真逆の意味で特異な結果と言えるだろう。
また、11位と同様に「縁起のいい」オープン戦の順位は他にもある。オープン戦を5位で終えたチームの、その後の成績を以下に示していきたい。
オープン戦順位5位→リーグ最終順位
2009 東北楽天→2位
2010 オリックス→5位
2011 巨人→3位
2012 中日→2位
2013 阪神→2位
2014 広島→3位
2015 阪神→3位
2016 埼玉西武→4位
2017 埼玉西武→2位
2018 オリックス→4位
以上のように、レギュラーシーズンでAクラス入りした回数が10年間で7度と、Aクラス入りの確率はオープン戦1位の球団を上回る。12球団中5位という成績はオープン戦の「Aクラス」と呼べるものではあるが、3位(3度)と4位(5度)に比べてもAクラス入りの確率が多いという数字は興味深いものである。
この中では2009年の東北楽天と2017年の埼玉西武は決して開幕前の前評判は高いとは言えない存在だったが、下馬評を覆して見事に2位へと躍進している。東北楽天にとっては記念すべき球団史上初のAクラス入りであり、埼玉西武は翌年の優勝につなげる礎を築くシーズンとなっただけに、そういった観点からも縁起の良さを感じるところだ。
上位2チームと最下位に関しては順当な結果となる確率が高い一方で、3位や11位のように意外な結果を生みがちな順位もまた存在している。「妥当」と「縁起」の両面で興味深い結果となったこの調査結果を、オープン戦が終わった段階で改めて確認して、過去の傾向からシーズンの行方を予想してみるのも面白いのではないだろうか。
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