「サファテ投手から一発」でブレイク。オリックスの熾烈な外野手争いに名乗りを上げる武田健吾選手

パ・リーグ インサイト

2017.12.7(木) 00:00

オリックスで今年台頭した若手と言えば誰を思い浮かべるだろう。投手では山岡投手、黒木投手など新戦力の活躍が目立った。一方野手では、3年目の大城選手とともにブレイクした選手がいる。5年目の23歳、武田健吾外野手だ。

183センチの恵まれた体格を持つ右のスラッガーであり、俊足を生かした華麗な守備が魅力の武田選手。中学時代は陸上の県大会に出場したほど高い身体能力を誇り、自由ヶ丘高校時代から走・攻・守揃った選手として注目を浴びた。同じ福岡県出身の新庄剛志氏にあやかって「新庄2世」とも呼ばれ、2012年にオリックスから4位指名を受ける。

高卒ということもあってルーキーイヤーはファームで経験を積んだが、いきなり安打、二塁打、打点などでチームトップの成績を収め、一軍でもプロ初安打を放つなど、その将来性に大きな期待を抱かせた。しかしその後は、ファームと一軍を隔てる高い壁に突き返されて、なかなか一軍定着が叶わない。昨季までの通算成績は26試合6安打0本塁打。ファームや守備ではポテンシャルを発揮していただけに、もどかしい4年間を過ごしていた。

ただ、2016年オフにメキシコで開催された「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」に、侍ジャパンのメンバーとして出場すると、打率.455の大暴れ。日本の優勝に大きく貢献して、外野手部門のベストナインに選ばれた。この経験が自信になったのか、契約更改後の記者会見では「糸井さんが(FA移籍で)抜けたので、その穴は自分が埋めて、糸井さんよりも打ってやろうという気持ちが強いです」と、頼もしい発言も飛び出している。

そして実際に、5年目となる今季は、これまでとは一味違うシーズンとなった。まずは4月18日の北海道日本ハム戦。わずか1点リードで迎えた9回表、追加点が欲しい場面。1死2塁で打席が回ってきた武田選手は、3球目をはじき返して右中間を抜く。チームの勝利に貢献するとともに、自らの23歳の誕生日に花を添えた。4月20日には値千金の同点アーチとなるプロ初本塁打。先発出場は少なかったが、限られた打席で確実に結果を残し、4月の月間打率は.400をマークした。

武田選手の名前が大きく取り上げられたのは、何といっても5月17日、京セラドーム大阪で行われた福岡ソフトバンク戦だろう。4点ビハインドで迎えた9回裏2死。マウンドには「キング・オブ・クローザー」ことサファテ投手。オリックスベンチとファンに否応なく暗いムードが漂う中、武田選手はこの絶対的守護神の151キロを完璧に捉え、大きなアーチを描く。これはサファテ投手に今季初失点を付けるとともに、武田選手にとっては本拠地初本塁打となった。

結局、その後の反撃は叶わずチームは敗れてしまったが、この4年間不完全燃焼に終わっていた若武者の一発は、チームにとっても武田選手自身にとっても、価値あるものとなったことだろう。

勢いに乗った武田選手は交流戦でも打ちまくり、期間中はチームトップの打率.382を叩き出す。これは12球団でも丸選手(広島)、松本選手(北海道日本ハム)に続く好成績だ。最終的には97試合61安打2本塁打14打点、打率.295という成績でシーズンを終えた。登録を抹消された期間もあったが、10試合出場に終わった昨季と比べると、飛躍的な成長を遂げたシーズンだったと言うことができる。

当面の目標は「1年間一軍帯同」。来季もT-岡田選手、吉田正選手、ロメロ選手、マレーロ選手、駿太選手などによる熾烈な外野手争いが繰り広げられることが予想される。まだ若い武田選手は、経験や実績の代わりに無限の可能性という武器を備えているが、ステップアップに成功した今季、オフシーズンの過ごし方が今後のキャリアを左右するかもしれない。来季はレギュラーの座をつかみ、1つでも多くチームの勝利に貢献してくれることを期待している。

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