昨季の日本一から一転、今季は苦しい戦いが続き、リーグ5位に沈んだ北海道日本ハム。その中でプロ3年目の石川直投手は、数多くの実戦経験を積み、飛躍のきっかけをつかむシーズンを送った。先発・中継ぎの両方をこなし、自己最多の37試合に登板。プロ初勝利を挙げることはできなかったが、長身を生かした角度のある直球とフォークを武器として、来季は投手陣をけん引する1人になることが期待されている。
石川直投手は地元の公立・山形中央高校出身。「みちのくのダルビッシュ」と称され、2014年のドラフトで北海道日本ハムから4位指名を受けた。1年目はファームで12試合に登板し、1勝1敗1セーブという成績を残すと、2年目の昨季は主に中継ぎとしてチーム最多の40試合に登板。9月30日の千葉ロッテ戦で一軍初マウンドを経験した。この試合では5番手として登板すると、見事無失点に抑えてプロ初ホールドも記録している。
ルーキーイヤーから少しずつステップアップを果たし、迎えた3年目の今季。石川直投手は春季キャンプから快投を続ける。オープン戦では7試合に登板して10回2/3を投げ1勝0敗、15奪三振、防御率3.38。3月15日の横浜DeNA戦では、4回を投げて無安打無得点、5奪三振という好投を披露し、高卒3年目にして開幕一軍の座を手にした。
今季のシーズン開幕から中継ぎとして34試合に登板。高い奪三振能力を見込まれ、一時は勝利の方程式も担った。シーズン終盤で先発に転向すると、9月3日の千葉ロッテ戦でプロ初先発。初勝利とはならなかったが、5回2失点と試合を作った。しかし同10日の埼玉西武戦では、強力打線相手に5回7失点3被弾と崩れる。「全部甘く入ってしまいました」と肩を落としたが、まだ若い右腕にとっては、1球の重さ、怖さを学ぶ有意義な1試合となったことだろう。
今季最後の登板となった同26日のオリックス戦では、相手打線を5回まで2安打無失点に抑える快投。「これくらい飛ばしていっていいんじゃないかな。先のことなんて考えずに、ガス欠までどんどん飛ばせばいい。頑張れ!」という吉井投手コーチの言葉通り、6回途中までを投げた。6回裏に2点を失い、プロ初白星は挙げられなかったものの、チームの勝利に確かに貢献。乗り越えるべき課題がより明らかになるとともに、チームが石川直投手の可能性に大きな期待をかけていることが窺える試合だった。
最終的な成績は37試合0勝1敗7ホールド、防御率4.35。昨季までの2年間で一軍登板が1試合だったことを考えれば、飛躍的な成長を遂げたシーズンだったと言うことができる。また、石川直投手はマウンド以外でも存在感を発揮。試合前練習でサンリオの人気キャラクター・マイメロディのリュックを背負って現れるため、「マイメロ王子」として一躍名前を知られるようになったのだ。
かわいらしいピンクのリュックの中には飲料水などが詰め込まれており、そのとき一軍に帯同している投手の中で最年少の選手が背負い、ロッカーからグラウンドに運ぶ決まり。高卒ルーキーの堀投手や大谷選手もその役目を務めた。来季もそのルールが適用されるかどうかは不明だが、190センチ超の大男がマイメロディのリュックを背負う光景はなかなか趣があり、主に女性ファンからの人気を博している。
「もともと、斉藤和巳さん(元・福岡ソフトバンク)が好きだった。斉藤さんを見てフォークを覚えようと思った」と語る石川直投手。来季は念願のプロ初勝利を挙げ、理想とする大エースのような「負けない投手」になれるか、注目だ。
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