歴代1位の王貞治は427敬遠で断トツ
一般に「敬遠」と呼ばれる「故意四球」は、四球の中でも特殊なものだ。投手が、意図的にストライクゾーンを大きく外れるボールを投げて、故意に四球を与えるというものだ。これは、守備側が打者と勝負をしたくないと判断した時に行う戦術だ。投手個人ではなく、チームの判断で行うことが多い。
「敬遠」のルールは球史の中で何度か変化している。敬遠を行う場合、捕手は投手がボールを指から話した瞬間に、キャッチャーズボックスから大きく飛び出して、打者のバットが届かない位置で捕球をする。投手がボールを持っている間にキャッチャーズボックスから出るとボークとなる。
かつては「敬遠」は、4球ともに敬遠投球をしないと記録されなかったが、今では、4ボール目の投球が敬遠投球であれば「敬遠」とみなされる。さらに、昨年からは時間短縮と、投手の球数削減のために、ベンチが審判に申告すれば、1球も投げることなく敬遠が宣せられることになった。ただし、旧来の「敬遠」もプレーとしては活きている。
昭和の敬遠と平成末期の敬遠ではプレーそのものが全く違うものになっているが、その目的、意図は変わらない。
○NPBの通算敬遠数10傑 ()は実働期間
1 王貞治 427敬遠(1959-1980)
2 張本勲 228敬遠(1959-1981)
3 長嶋茂雄 205敬遠(1958-1974)
4 野村克也 189敬遠(1954-1980)
5 門田博光 182敬遠(1970-1992)
6 落合博満 160敬遠(1979-1998)
7 谷繁元信 158敬遠(1989-2015)
8 田淵幸一 125敬遠(1969-1984)
9 江藤慎一 118敬遠(1959-1976)
10 中村武志 112敬遠(1987-2005)
やはりこの部門でも、王貞治が圧倒的だ。2位の張本勲の倍近い。王は、1974年には、NPB記録のシーズン45敬遠を記録している。ちなみにMLBではバリー・ボンズが688敬遠で1位。ボンズは2004年には120敬遠を記録している。ほとんど勝負されなかったのだ。
敬遠は、投手が打席に立つセ・リーグの捕手で多くなる傾向がある。8番に座ることが多い捕手は、強打者でなくても9番の投手との比較で、敬遠されることが多い。歴代7位の谷繁、10位の中村武志などがそれにあたる。
現役で通算100敬遠は0人、巨人阿部が76敬遠でトップ
○現役選手の敬遠数10傑
1 阿部慎之助(巨) 76敬遠(2001-2018)
2 石原慶幸(広) 50敬遠(2002-2018)
3 青木宣親(ヤ) 41敬遠(2004-2018)
4 福浦和也(ロ) 40敬遠(1997-2018)
5 福留孝介(神) 34敬遠(1999-2018)
6 糸井嘉男(神) 34敬遠(2007-2018)
7 坂本勇人(巨) 34敬遠(2007-2018)
8 バレンティン(ヤ) 31敬遠(2011-2018)
9 中島宏之(巨) 28敬遠(2002-2018)
10 内川聖一(ソ) 26敬遠(2001-2018)
NPB史上100敬遠以上は12人いるが、現役1位の巨人、阿部でもシーズン最多は2013年の「9」であり、大台到達は難しそうだ。2位には広島の石原がいる。セ・リーグの捕手だ。
1試合当たりの敬遠数は1969年のパが0.17、セが0.14。2018年のパが0.14、セが0.18と半世紀前とほとんど変わらない。しかし、昔の敬遠が特定の打者に集中したのに対して、近年は打者ではなく、状況で敬遠される傾向にあり、個々の打者の敬遠数はそれほど多くない。
申告敬遠の導入で、敬遠のスタイルは大きく変わり、以前より簡単に敬遠できるようになったが、敬遠数が増えることにはつながらないようだ。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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