昨季、北海道日本ハムに最大11.5ゲーム差からの逆転優勝を許し、悲願のリーグ3連覇を阻止された福岡ソフトバンク。V奪回を目指す今季は故障離脱する選手が相次いだが、持ち前の選手層の厚さでカバーし、史上最速でリーグ優勝を果たした。
日本シリーズでは、セ・リーグ3位からの下克上を狙う横浜DeNAとの激闘をも制する。福岡ソフトバンクの2017年は、毎年優勝候補に挙げられるだけの「巨大戦力」を、改めて見せ付けたシーズンだったと言えよう。ここでは、悲願の3連覇に王手をかけたい来季、さらなる活躍が期待される選手たちを紹介していく。
今季の福岡ソフトバンクのチーム成績を見ると、本塁打・防御率においてはリーグ1位。完封勝ちもぶっちぎり1位。投打ともに非常に優秀な成績である。しかし、先発の完投数「4」は、実は12球団最少タイの数字。福岡ソフトバンクの強さは、4番に本塁打王が座る打線と、最優秀中継ぎ・セーブ王を擁する中継ぎの奮闘なくしてはあり得なかった。今季の王者の課題をあえて挙げるのなら、「先発」だったということが言える。
ただその中で、5年目の東浜投手の活躍は目を見張るものがあった。和田投手、武田投手、一時は千賀投手までもが怪我で離脱する厳しい状況に見舞われながら、事実上のエースとして活躍。最終的に16勝5敗、防御率2.64の成績を残して自身初タイトルとなる最多勝に輝き、「投」でチームを優勝に導いた。来季も他のエース格の投手たちと、ハイレベルなチーム内競争を繰り広げてほしい。
そして来季の飛躍に期待する投手として、石川投手を挙げたい。育成出身の石川投手は、今季中継ぎ・先発どちらもこなして苦しい台所事情を救ってきた。成績は8勝3敗。そのうち6勝が先発として挙げたものである。投げたイニングは7回が最高と、スタミナには課題が残るものの、これまでのキャリアで鍛えられた反骨精神と今季の経験を糧として、育成出身選手史上初となる2年連続2桁勝利を達成した千賀投手に続いてほしい。
また、先発投手が長い回を投げられなかったということは、後ろを投げる中継ぎが大きな負担を引き受けてきたということだ。今季は途中加入のモイネロ投手、獅子奮迅の働きで最優秀中継ぎに輝いた岩嵜投手、「キング・オブ・クローザー」ことサファテ投手が鉄壁の勝ちパターンを担ったが、来季は蓄積疲労も心配される。中継ぎの登板数がかさみ、「先発は何か感じてほしい」とサファテ投手が苦言を呈したことも記憶に新しい。
盤石なブルペン陣をさらに充実の陣容とするため、「ポスト森福」嘉弥真投手に期待する。サイドスローへ転向したばかりだが、貴重な中継ぎ左腕として自己最多の58試合に登板。ワンポイント・回跨ぎ・連投全てをこなす器用さ、タフネスさを見せ付けた。
野手陣では22歳の上林選手がシーズンを完走してブレイクを果たした。今季開幕スタメンを勝ち取ると、13本塁打、打率.260と年間を通して安定した成績を残す。シーズン閉幕後に行われた「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ」でも日本代表のクリーンナップを任され、初日の韓国戦で値千金の同点弾を放った。柳田選手、中村晃選手などを筆頭に、熾烈を極める外野手のポジション争いにおいて、来季以降も存在感を出していきたい。
育成出身の甲斐選手は、日本球界最速の二塁送球タイムを誇る強肩と、小柄ながらパンチ力のある打撃で今季の正捕手に定着。チームの捕手では最多の103試合に出場し千賀投手と東浜投手のタイトル獲得、チームのリーグ制覇、日本一に大きく貢献した。育成出身の選手としては史上初のゴールデングラブ賞・ベストナインに選出されるなど、福岡ソフトバンクのスカウティング力・育成力の象徴にもなっている。
その他にも松本裕投手がプロ初勝利を挙げて一時先発ローテーションの一角に食い込み、これまた育成出身の飯田投手が安定感を発揮しながらも19試合のみの登板に終わり、来季の飛躍を期している。昨季以前にブレイクの兆しを見せながらも選手層の厚さに押された若手、本来の力を出し切れなかったベテランなどが再起を目指す来季、チーム内の競争はますます激しいものになるだろう。振り出しに戻ってしまった悲願の「3連覇」に向けて。常勝軍団はさらに進化を続ける。
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