打者の能力を表す指標とは言えないが…トップ10には強打者がズラリ
死球は、打者の能力を表す指標とは言えないが、特定の打者が多くの死球を記録する傾向がある。
2018年の1試合当たりの死球数はパが0.40個、セが0.33個だったが、1969年はパが0.30個、セが0.34個。大きな変動はなかった。
○NPBの歴代死球数 ()は実働期間 球団名があるのは現役選手
1 清原和博 196死球(1986-2008)
2 竹之内雅史 166死球(1968-1982)
3 衣笠祥雄 161死球(1965-1987)
4 村田修一 150死球(2003-2017)
5 阿部慎之助(巨) 148死球(2001-2018)
6 井口資仁 146死球(1997-2017)
7 稲葉篤紀 138死球(1995-2014)
8 井上弘昭 137死球(1968-1985)
9 中島宏之(巨) 133死球(2001-2018)
10 田淵幸一 128死球(1969-1984)
本塁打が多い強打者が並んでいる。また内角球を恐れず、踏み込んで打つタイプの打者が多いのが特色だ。10傑のうち左打者は阿部慎之助と稲葉篤紀の2人。この記録は、長らく、西鉄・太平洋・クラウン、阪神で活躍した竹之内雅史が持っていた。この打者はたびたび打撃フォームを変えたが、ホームベースに覆いかぶさるように構えた時期が多かった。ただ竹之内は死球は多かったが、大きなけがはしていない。
2003年に竹之内の記録を抜いたのが清原和博。平成以降では屈指の強打者だったが、向かっていく打撃だったこともあり、投手の厳しい内角攻めにさらされた。1999年には死球で左手を亀裂骨折して戦線離脱、2005年にも頭部の死球で試合を欠場している。清原は打撃3部門のタイトルには縁がなく「無冠の帝王」で終わったが、「死球禍」がなかったら、タイトルを手にしていたのではないかと言われている。
現役では阿部や中島が死球禍に苦しむ
8位の井上弘昭は中日時代の1975年、広島の山本浩二と激しい首位打者争いをしていたが、シーズン最終打席で死球を受けて涙を呑んでいる。10位の田淵幸一は、入団2年目に頭部に死球を受けて昏倒。入院する事態となったが、この時の死球がその後の選手生活に大きな影響を与えたと言われる。
○現役選手 通算死球数10傑
1 阿部慎之助(巨) 148死球(2001-2018)
2 中島宏之(巨) 133死球(2001-2018)
3 糸井嘉男(神) 98死球(2004-2018)
4 渡辺直人(楽) 98死球(2007-2018)
5 福浦和也(ロ) 95死球(1994-2018)
6 青木宣親(ヤ) 90死球(2004-2018)
7 今江年晶(楽) 80死球(2002-2018)
8 中村剛也(西) 78死球(2002-2018)
9 栗山巧(西) 71死球(2002-2018)
10 T-岡田(オ) 67死球(2006-2018)
巨人の阿部は昨年8月29日の広島戦で死球を受けて負傷退場したのが記憶に新しい。中島宏之もたびたび死球禍に悩まされた。
死球は踏み込んで打つ打者の「勲章」ともいえる。投手は、そういう打者をのけぞらせるために内角のきわどいところを狙う。その駆け引きは、野球の魅力の一つではあるが、MLBでは死球による死者が出たケースもあった。NPBでは1994年から、審判が「危険球」で退場を命ずることができるというルールを設けた。死球は根絶することはできないが、打者は「うまくよける」ことで、深刻な事故につながらないように「防衛」することも必要だろう。
NPBでは100死球に達すると達成記録として発表している。阪神の糸井、東北楽天の渡辺、千葉ロッテの福浦などが達成の可能性があるが、これは喜ばしいとは言えない。死球によるけがのリスクを最大限回避してほしいものだ。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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