名門・報徳学園高校時代、「スーパー1年生」として注目を集めた田村伊知郎投手。昨年のドラフトで埼玉西武に6位指名されてプロの世界へ足を踏み入れ、強気のストレート攻めを武器に、日本プロ野球界最高峰の舞台で腕を磨いている。
2010年夏の甲子園。報徳学園の1年生だった田村投手は、エース・大西一成投手とともに快投を披露し、「スーパー1年生」として話題をさらった。準決勝では、この年春夏連覇を果たす興南高校に惜敗するものの、2番手として2回2/3を投げて無失点。母校のベスト4進出に大きく貢献し、早くも2年後のプロ入りへ大きな期待を抱かせた。
ところがその後の田村投手は、長く怪我に悩まされることになる。2年時の春の選抜以降は、甲子園出場ならず。3年時には右肩を痛め、「1年生のときの自分」「周囲が期待する自分」と現実のギャップにもがき苦しんだ。立教大学に進学したのちも腰痛に苦しめられ、リーグ戦における初勝利は、3年生の春まで待つことに。
しかし、4年生になり、副主将として迎えた昨年、田村投手は大きな飛躍を遂げる。六大学春季リーグにおいて、7試合4勝3敗(2完投)、防御率1.52の好成績。明治大学との激しい優勝争いには敗れたものの、主将の澤田投手(現・オリックス)とともにチームをけん引した。また、連投に耐えるタフネスさとチームへの献身的な姿勢を評価され、日米大学野球に臨む大学日本代表にも選出されると、守護神を務めて日本代表の優勝に大きく貢献する。
「スーパー1年生」として甲子園を沸かせた日からおよそ6年。一時はプロ入りも危ぶまれながら、苦難を乗り越え、一気にドラフト指名候補に返り咲いた田村投手。同年のドラフトで埼玉西武から6位指名を受けると、満を持してプロの世界へと飛び込んだ。
ルーキーイヤーの今季は、一軍(A班)キャンプメンバー入りを果たす。オープン戦で崩れたことで開幕一軍とはいかなかったものの、ファームで結果を残すと、5月7日に一軍昇格。同9日のプロ初登板から3試合連続で無失点リリーフを披露する。最終的に12試合に登板し、0勝0敗、防御率6.91という成績で、1年目のシーズンを終えた。
田村投手は、頭脳明晰で生真面目。練習熱心でチームに献身的であり、打者に向かっていく強気な投球が持ち味だ。「スーパー1年生」と現実の自分の差に苦しんでいた時期、美点であるべきそんな性質が悩みを深めてしまうこともあったが、現在は良い意味での「適当さ」を身に付けて、プロ向きの性格と評される。
西口文也投手コーチからチェンジアップとスライダーを、故・森慎二コーチからフォークを伝授された。まだ1年目、まだ23歳だが、その才能ゆえに勝負の世界の厳しさと恐ろしさを知っている田村投手。来季ははたして、どのような形でその勇姿を見せてくれるだろうか。
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