「打撃が課題」と言われ続けた男が見せた打力は、チームやファンにとってうれしい誤算となったことだろう。埼玉西武の炭谷選手が、今季自己最高となる打率.251を記録。プロ12年目にして、打撃面で確かな成長の跡を示した。
炭谷選手は、平安(現・龍谷大平安)高校時代、通算48本塁打の強打の捕手として鳴らし、満塁の場面で敬遠されるなど恐れられた。2005年の高校生ドラフト1位で西武に入団すると、1年目のプロ初本塁打を満塁弾で飾り、早くも存在感を発揮する。以降は細川選手(現・楽天)と出場機会を分け合いながら一軍の戦力となり、2008年の日本シリーズでは負傷した細川選手の穴を埋め、チームの日本一に貢献。若くしてその潜在能力の高さを示してきた。
プロ入り4年目となる2009年には112試合に出場して、ついに正捕手の座をつかんだかに見えたが、翌年のオープン戦で大怪我を負って公式戦は最終戦のみの出場となる。しかし、細川選手が福岡ソフトバンクへ移籍したことで再び定位置を勝ち取ると、2011年から7年連続で100試合以上に出場し、埼玉西武の扇の要として確固たる地位を築いた。
投手陣からも全幅の信頼を寄せられ、日本代表クラスの捕手に成長した炭谷選手。しかし打撃においては、入団時の高い期待に応えられているとは言い難かった。打率は2009年に記録した.220が最高で、故障で1試合しか出場できなかった2010年を除いても打率1割に終わったシーズンが3度と、「守備型捕手」というイメージが定着しつつあった。高校時代は強打者としてその名を轟かせながら、本塁打も2014年の7本が最多。昨季まで通算26本と、打者として明確な課題を抱え続けていた。
チームは2013年のドラフトで、炭谷選手と同じく強打の捕手として活躍した森選手を指名。炭谷選手は正捕手の座こそ譲らなかったが、森選手は指名打者や外野手として打力を発揮。2016年終盤には捕手への再転向が決まったため、先発マスクを譲る機会も増加した。
しかし今季の炭谷選手は、ついに打撃覚醒の兆しを見せる。出場試合数は104試合にとどまったものの、打率はこれまでの自己ベストを大きく上回る.251を記録し、本塁打は自己最多に次ぐ5本をマーク。クライマックスシリーズファーストステージ第1戦でも4打数3安打2打点の活躍で勝利に貢献した。チームにとって重要な大舞台で勝負強い打撃を見せ、「守備型捕手」からの脱却を印象付けている。
あとは打撃だけ、と表現されることも多かった炭谷選手にとって、今季は確かな手応えをつかむ1年となったことだろう。守備だけでなく、打撃でもチームを救う捕手になりつつある炭谷選手のバットに、今後も要注目だ。
記事提供: