球界屈指の右腕・千賀も絶賛「技術が高い」 鷹のドラ4板東湧梧という男

Full-Count 沢井史

2019.2.9(土) 07:20

福岡ソフトバンク・板東湧梧※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・板東湧梧※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

社会人5年でプロ入りした右腕の次なる課題は…

 休日になると約2万人のファンが集まる福岡ソフトバンクの春季キャンプ。華やかな雰囲気にプロ初キャンプを迎えたJR東日本から入団したドラフト4位、23歳の板東湧梧投手は思わず笑顔を浮かべた。練習場からブルペンに移動するだけ、近距離から色紙を持ったファンから「板東さん!」と声をかけられる。

「プロってこんなにも多くの人が集まるんですね。最初はビックリしました」

 板東は鳴門高(徳島)時代、エースとして4度の甲子園を経験。3年時はエースとしてマウンドに立ち、夏はベスト8まで進出した。当時から140キロの速球が武器で、JR東日本に進んでからは、3年目の春に行われたスポニチ大会・大阪ガス戦で3安打1失点6奪三振の好投を見せるなど、この年から一気にドラフト候補に名を連ねるようになった。

「正直、社会人に入った当初は、自分がここで通用するのかなと思っていたんです。でも、身近にレベルの高い選手がたくさんいる中で自分(の実力)が引き上げられた、というのもあります。高校時代はプロの世界は夢でしたが、社会人に入ってそれが目標になり、ここまで来られたという感じです」

 板東はその年にプロ志望届を提出したが、日本選手権大会前に右ひじを痛めたこともあって、指名はなかった。以降も右ひじの状態が万全にはならず、苦しい日々が続いた。しかし、翌年の17年の秋に患部の状態が良くなり、昨夏の都市対抗野球は全4試合に登板。14イニングを投げ、15奪三振で防御率は0.64。チームはベスト4まで勝ち進んだ。

千賀が絶賛「あれだけの球を投げられるのだから技術は高い」

 しかし、まだ自分の力不足を感じている。プロで勝負できると言い切れる武器がないことだ。

「ただ、語弊があるかもしれませんが、力を出し切って、“はまった”時は戦える、という自信はつきました」

 伸びのあるストレートと四隅にきっちり投げ分けるコントロールは高校時代から定評があった。5年間、プロの選手を多く輩出する社会人野球の名門に身を置き、良さに磨きがかかったという印象がある。それでも、板東の中で課題は明確になっている。

「今の段階では自分はまだアマチュアの投手です。これからは、社会人よりさらにレベルの高いプロの中から飛び抜けて出てこないといけない。そのためにはまず、制球力を磨いていきたいです。むしろ、そこをウリにしていかないといけないと思いました。特に磨いていきたいのは低めの制球力。キャンプでも、今まで以上にそこを意識して投げています」

 新たな武器を模索するのではなく、今、自信の持っているものの精度を上げ、誰にも負けないものを手に入れることに力を注いでいく。

 キャンプ2度目のブルペン入りした際は、隣で投げていたエースの千賀滉大投手から「球が速いし、制球力もいい。あれだけの球を投げられるのだから技術は高いと思うので、いつかピッチングの話もしてみたい」と絶賛された。球界屈指の投手の賛辞に、板東は嬉しさを噛みしめながら、こう言った。

「今の最速は148キロなので、150キロまで上げたいです。自分はそんな(剛速球)タイプではないですけれど、そこまでは(数字を)出してみたいですね。これから、徐々に実戦練習が増えていくので、何かを得ていけたらと思います」

 7日はA班の打者を相手に初めて打撃投手を務めたが、緊張からか福田秀平外野手に死球を当て、自己採点を「20点」と評した板東。持ち前の制球力は影を潜めた。だが、磨き上げれば1軍で躍動する日も遠くはない。

(沢井史 / Fumi Sawai)

記事提供:Full-Count

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