「自分も決して負けていない」― “甲斐キャノン”に挑む鷹5年目捕手の思い

Full-Count 沢井史

2019.2.8(金) 12:23

春季キャンプに参加中の福岡ソフトバンク・栗原陵矢※写真提供:Full-Count(写真:福谷佑介)
春季キャンプに参加中の福岡ソフトバンク・栗原陵矢※写真提供:Full-Count(写真:福谷佑介)

昨年の春季キャンプでは左肩の脱臼で離脱した栗原

 ちょうど1年前の“悪夢”を振り払うような笑顔で、キャンプA班での走塁練習に励んでいた福岡ソフトバンクの栗原陵矢捕手の心中には並々ならぬ“覚悟”がある。

 将来の正捕手候補として期待されながら迎えた昨年の春季キャンプ。A班で着実にアピールを続けていたが、キャンプ終盤の2月下旬にノックの球に飛び込んだ際に左肩を強打し、関節前方脱臼と診断された。3月上旬に手術を行い、約3週間の入院を余儀なくされた。球団からは全治6か月と発表されシーズンも絶望視されていたが、懸命なリハビリとトレーニングで7月上旬には復帰を果たした。

 トレーナーやチームスタッフなど多くの人に支えられ、驚異的なスピードで復帰ができたことに感謝しつつも、だからこそ今年はやらないといけないという自負もある。

「今年はとにかく結果を求めないといけない年。昨年のケガで悔しい思いをしましたし、5年目って、もう若いとは言えない年代じゃないですか。今年はすべてにこだわりを持ってやっていきたいと思っています」。

 オフはチームの先輩・和田毅投手が主催する自主トレに参加。1月に約3週間、長崎にいるトレーナーの施設を借りて、他球団の選手を含む6人でみっちり体作りを敢行した。長距離を走り、トレーニング施設にこもってトレーニングに没頭。近くにあるビックNスタジアムで体も動かす。じっくりと自分に向き合い、鍛錬に鍛錬を重ねた。

日本シリーズで大活躍の甲斐に「自分も決して負けていない」

「ランニングはかなりやりました。トレーナーさんの指示のメニューで筋力トレーニングもやって、3週間くらいかなり追い込みました。チームに戻ってから色んな人に体が大きくなったと言われます」と手応えを感じている。自主トレ時は体が疲れてもウエイトトレーニングを増やしていたが、このキャンプでも継続。走るのは苦手ではないため、ランニングが増えた今季のキャンプメニューも「自分は走れるだけ走ります」と意欲的だ。

 昨年は日本シリーズでライバルの甲斐拓也捕手が大活躍。シリーズ新記録となる6連続盗塁阻止と強肩がクローズアップされ「甲斐キャノン」という言葉があちこちに飛び交った。チームの日本一は喜ばしいことだったが、自身の貢献度から見ると心底から喜べなかった。ライバルの台頭は栗原にとって刺激になっているのは間違いないが、それ以上にメラメラと燃えるものもある。

「自分も決して負けていないと思います。肩で勝とうと思えば難しいとは思いますが、他の部分では勝負できると。このキャンプはまずバッティング向上がテーマなので、今はかなり振り込んでいます。1日で計700スイングは(振っている)」

 今年は1年間1軍でプレーすることが最低条件。その上で最高のパフォーマンスをするための土台を作っているところだ。「30~50試合は出たいです。今年は何としてもやってやろうという気持ちが強いです」。強い眼差してそう決意を述べ、全体練習を終えた栗原は室内練習場のバッティング練習場へ消えていった。

(沢井史 / Fumi Sawai)

記事提供:Full-Count

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