【注目選手】「渡辺2世」のコンバートから5年。埼玉西武・木村文選手

パ・リーグ インサイト 成田康史

2017.11.15(水) 00:00

150キロの速球を投げ込んでいた埼玉栄のエースが、マウンドに別れを告げて5年。外野手にコンバートした埼玉西武の木村文選手は、今年3月29日に一軍登録されてから、一度も抹消されることなく2017年シーズンを完走した。

2006年の高校生ドラフトにおいて、埼玉西武から1位指名を受けた木村文選手。渡辺久信氏の背番号「41」を与えられ、将来を嘱望されていた。1年目に早速一軍登板を果たすと、5年目の2011年には自己最多となる21試合に登板、初勝利も記録する。しかし翌年のオープン戦期間中に腰を患い、投手として充分なパフォーマンスができなくなったことを理由に、同年9月11日付で外野手へのコンバートが発表される。

高校通算で33本塁打を放つなど、かねてから打者としての能力も高く評価されていた木村文選手は、「野手に転向ということをチャンスにとらえて一生懸命がんばります。やるしかありません」と語り、転向直後の秋季キャンプで徹底した素振りを敢行。並々ならぬ決意で新たな挑戦に臨んだ。

するとその成果は、翌年の2013年に早くも表れる。春季キャンプの一軍(A班)メンバーに抜擢され、5月16日、ファームでの北海道日本ハム戦でも潜在能力の高さを発揮。相手投手はルーキーの大谷選手だったが、初回にその直球をバックスクリーン左方向の場外にかっ飛ばすと、5回にもスライダーを捉えて二発目の場外弾。ドラ1投手としては後輩にあたる黄金ルーキーに、「打」でプロの洗礼を浴びせた。

さらに、5月20日に野手として初めて一軍登録を果たすと、同23日の広島戦でプロ初打席初安打。28日の横浜DeNA戦では代打で登場すると、6年のブランクを感じさせないスイングで決勝弾となるプロ初本塁打を放ち、鮮烈な野手デビューを飾った。続く2014年も、開幕から主に左翼手として試合出場を重ね、自身初の100試合出場を達成。2桁本塁打を放って持ち前の長打力を見せ付ける一方、俊足を活かして16盗塁も記録した。

その後2年間は、森選手や金子侑選手といった若手選手が外野手へ挑戦した影響で、出場機会が減少するものの、今季は再び一軍で活躍の場をつかむ。開幕スタメンを勝ち取ると、シーズン序盤は田代選手や外崎選手と外野の一角を争いながら順調に試合出場を重ねた。

5月は月間打率.265、2本塁打を記録すると、下旬に金子侑選手が怪我から復帰してからは、試合終盤の守備固めや代走、貴重な右の代打として、チームの躍進を支えた。結果として2014年以来の100試合出場(105試合)を達成。2年ぶりの本塁打も記録し、一軍で確かな爪痕を残すシーズンとなった。

シーズン中盤からは途中出場が多かった木村文選手だが、福岡ソフトバンクに対しては5月20日の逆転弾を含め、30打数9安打、打率.300。チームが大きく負け越した相手に対して相性の良さを見せている。さらにシーズン打率は.201にとどまったものの、左投手相手には.294と強みを発揮。俊足好守といったセールスポイントに加え、打撃面でさらに存在感を残すことができれば、その地位は揺るがないものになるだろう。

首位打者・最多安打の二冠に輝いた秋山選手を筆頭に、昨年の盗塁王・金子侑選手や、今季レギュラーをつかんだ外崎選手、ベテランの栗山選手など、充実の布陣となっている外野陣。来季は、3年目の愛斗選手や2年目の鈴木選手といった新進気鋭の選手たちも、ポジション争いに加わることが予想され、一軍の枠を巡る競争はさらに激しくなる。

30歳の節目を迎える来年は、ついにキャリアの半分を野手として過ごすことになる木村文選手。アピールポイントを存分に発揮し、生き残りをかけての激しい戦いを勝ち抜けるか。挑戦を続ける苦労人の勇姿に注目していきたい。

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パ・リーグ インサイト 成田康史

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