加藤武治2軍投手コーチは「状態を戻して、プロの打者がどう反応するか」
沖縄・国頭村で行われている北海道日本ハムの2軍キャンプ。ここで大きな注目を集めながら、プロ初のキャンプを送っているのがドラフト1位の吉田輝星投手だ。昨夏の甲子園で一世を風靡し、プロの門を叩いた右腕は2日にキャンプで初のブルペンでの投球練習を行い、変化球を交えて38球を投げ込んだ。
普段から北海道日本ハムを見ているわけではないが、この日だけでも“育成上手”とされる北海道日本ハムの育成方針が垣間見えた。それが、荒木大輔2軍監督や加藤武治2軍投手コーチの言葉だった。
2日に行われた初ブルペンはカーブ、スライダーも交えながら、38球を投げた吉田輝。ただ、そのボールの多くは高めに抜け、中には捕手が捕れない暴投になった球もあった。まだまだしっくり来ていないのは明らかだったが、これを見た荒木2軍監督は「修正する気はないですね。好きなようにやってもらっていいです。期待? 期待はそんなにしていないので」とサラリと言ってのけた。
荒木監督は続けて「早く野球選手になれれば、ね。吉田だったら吉田の輝いていたようなものを出せる状態にしてくれればいいので、いま体をそういう風にしてもらいたい。とも。このキャンプの段階では、まだまだその選手にとって本来の力を出せる状態にはない。その段階でアレコレと教えるのでなく、しばらくは“放任”し、例えば、吉田輝ならば昨夏のコンディションになることが第1段階なのだという。
加藤武治2軍投手コーチはこう語る。「2月中は何もいじるつもりはない。今年1年は高校、大学のころの状態に戻してもらって、それでプロの打者がどう反応するか、実力の中で感じて欲しいんです。吉田ならまずは夏から甲子園くらいに戻してもらって、1年間打者と勝負をしてもらって、それでオフや来年以降はどうしようか、となる。まずは打者相手にどういうピッチングをするか」。100%のコンディションで、プロの打者相手にどれだけ投げられるか。そこを経験することが、ルーキーにとって大切なのだという。
「好きなように投げてもらって、僕らはそういう場を与えて、卒業させて栗山監督に渡すというのは私たちの仕事なので。(選手たちには)必要以上のことをする必要はない。高校、大学、社会人でそれぞれやってきたことを出してくれればいい。変にプロ仕様になる必要はない。プロは2年後、5年後、10年後に成功すれば、成功だから。焦る必要はないからねと伝えました」と語った荒木2軍監督。育成に長けると言われる北海道日本ハム。その考え方に少しばかり触れた気がした。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)
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